人工呼吸と胸骨圧迫を同じタイミングで行なってしまうと、蘇生の上でよくないことが起きます。
イメージしてみてください。
胸を押せば肺から空気が押し出されます。そのとき、同時に人工呼吸をしてしまうと、口・鼻から肺に向かって入ってくる空気とぶつかります。
肺から押し出される空気と、人工呼吸で口から入る空気がぶつかったら、どこに逃げるか?
そう、食道。つまり人工呼吸と胸骨圧迫を行うと、食道に空気が流入し、胃に溜まっていくのです。
胃膨満となり、なにかのタイミングで胃の内容物と合わせて逆流、嘔吐してしまいます。すると以後のCPRの継続が困難となり、助かる可能性が低くなります。
これが、30:2 や 15:2(小児の二人法)といった「同期式」でCPRを行なう理由です。
しかし、高度な気道確保、つまり気管挿管がされれば、胃に空気が流入するリスクはなくなりますし、仮に嘔吐しても人工呼吸にはまったく影響されません。
つまり、胸骨圧迫の手を止める必要はなくなるのです。これが非同期式CPR。
胸骨圧迫の大事なポイントのひとつ、「絶え間ない胸骨圧迫」を文字通り実現できるのです。