うつ伏せで倒れていたら、どうする?

本日は保育士向けの救命講習を4回開催しました。4回のうち2回で尋ねられたのがこの質問。

「うつ伏せで倒れていたら、すぐにひっくり返した方がいいですか?」

今日はこの疑問について解説します。

うつ伏せ(腹臥位)で倒れていた場合のBLS心肺蘇生法対応

優先順位の高い判断と原則

判断のポイントは2つです。

・心停止の可能性
・頚椎損傷の可能性

そして、応急手当の原則は「不必要な余計なことはしない」です。

うつ伏せでもBLS手順の基本は変わらない

上記を踏まえた上で考えていきますが、うつ伏せで倒れていても、やることは普通の心肺蘇生法講習の手順と同じです。

1.周囲の安全確認・確保
2.反応確認
3.呼吸確認

うつ伏せ状態のまま、分かる範囲で上記の確認をしていきます。

反応の確認

反応確認は、傷病者顔が見えないと判断しにくいかもしれません。なるべく顔を覗き込みながら呼びかけに対する反応(reaction)があるか確認します。

意識がなくても、顔をしかめるとか、目を開こうとするなどの「反応」があれば生きている証拠と考えます。

呼吸の確認

呼吸確認は、うつ伏せ状態でもできます。胸から腹にかけての呼吸の動きを目で見て確認すればいいわけですから、うつ伏せでも背中やウェストの動きを見れば、呼吸の有無はある程度判断できます。

ここで呼吸の動きがあると見て判断できれば、生きていることはほぼ確定です。

であれば、胸骨圧迫などの心肺蘇生法は必要ないわけですから、うつ伏せから仰向けに体の向きを変える必然性は低くなります。

CPRはともかく、ファーストエイドにはリスク判断が必要

うつ伏せ状態の傷病者がいても、余計なことはしない、という原則からして、動かさないというのが基本となります。

動かすという判断をするためには、メリットとデメリットを勘案して判断をする必要があります。

・動かすデメリットの最たるものは脊髄損傷

・動かさないことのデメリットは、心停止に対してCPRができない

脊髄損傷も重篤な状態ですが、心停止状態であれば、まさに生きるか死ぬかの状態ですから、脊髄の問題は二の次になります。

ここまで考えてみると見えてきたでしょうか?

うつ伏せ状態で倒れている人を仰向けにするかどうかの判断は、心停止の可能性判断のいかんにかかっています。

簡単に言えば、心停止の可能性があればCPRのために仰向けにするべき、逆にあきらかに生きていることがわかれば、そのままの姿勢から動かさない、ということです。

医療用語で侵襲という言葉がありますが、医療処置の実施を検討する上では、効果と副反応を考える必要があります。

心停止では、すでに最悪の状態なのでデメリットについては度外視されますが、生きている状態へのファーストエイドではメリットとデメリットの天秤という判断が欠かせません。

まとめ:うつ伏せで倒れていたら、動かす? 動かさない?

うつ伏せの傷病者を発見したら、首や背骨など、脊椎損傷の可能性があるかどうかを考えながら近づきます。

うつ伏せのまま、傷病者の顔を見ながら呼びかけて、意識・反応を確認します。

次にうつ伏せのまま呼吸を確認します。見るべき部位は腰のあたり。明らかに動きがあって呼吸をしていれば、原則として動かさない、という判断をします。

うつ伏せ状態で呼吸をしているかわからない、となれば、心停止の可能性が否定できないため、仰向けにして改めて呼吸確認を行う決断をします。

呼吸をしていても、うつ伏せゆえに呼吸がしづらそうだと判断した場合は、頚椎損傷の可能性を勘案して、動かすか、そのまま応援が来るまで待つかを判断します。

例えば階段の下で倒れていたのであれば、頚椎損傷の可能性が否定できないので極力動かさない、机に突っ伏して意識消失していたのであれば、頚椎損傷の可能性は低いので、ある程度姿勢を整える、など。

このあたりは、プレホスピタルでは119番している事案でしょうから、119番の指令員に状況を説明して判断を仰ぐというのが正解です。

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