蘇生科学一覧

AEDが「ショックは不要です」というとき

心停止は大きく分けて2種類あります。
 
AEDの電気ショックが必要な心停止と、電気ショックが不要(有効でない)な心停止です。
 
これを判断してくれるのがAEDですから、心停止と認識したら、可能であればすべての症例でAEDは装着するべきです。
 
つまり、市民向けプロトコルでは、「反応なし+10秒以内に正常な呼吸であると確信できない場合」ですし、医療者向けで言ったら、「反応なし+呼吸なしor死戦期呼吸+脈なし」であれば、CPRを開始しつつ、AEDがあれば直ちに装着します。
 
 
AEDの電気ショックのことを専門用語では「除細動」といいます。文字通り、心臓の細かい動き(震え)を取り除くのがAEDです。
 
心臓が細かく震えている心室細動や(無脈性)心室頻拍を検出した場合に限り、「ショックが必要です。充電します」と言って、電気ショックが実行されるようになっています。
 
もう一方のタイプの心停止、つまり心停止の中でも心静止(心電図がピーッと一直線の場合)や、なんらかの原因で血圧が低すぎて有効な血流がない状態などの無脈性電気活動(PEA)と呼ばれるタイプの場合は、心停止の原因が心臓の震えではありませんから、当然、AEDは「ショック不要」と判断します。しかしこれも心停止なのです。
 
ショック不要=心停止じゃない(生きている)というわけではない点、注意して下さい。
 
AEDは心電図の解析しかできませんから、生きているか心停止かの判断は人間が行わなければならない「仕様」になっています。
 
そのためAEDを装着する条件が規定されているわけです。
 
 
※市民向け: 「反応なし+呼吸なし」
※医療者向け: 「反応なし+呼吸なし+脈なし」
 
 
この点は、AEDの取扱説明書(添付文書)で規定されていますし、救命講習でもきちんと教える必要がある部分です。
 

 
 
 
「反応なし+呼吸なし」ということで、心停止と判断して、AEDを装着して解析させた結果、「ショックは不要です」と言われたのであれば、それは電気ショックが有効ではないタイプの心停止だということです。
 
この場合、除細動(AED)では救えないということですから、できることと言えば、救急車が到着するまでの間、できるだけ「質の高い」心肺蘇生法を継続することです。
 
目の前で卒倒した突然の心停止(心原性心停止疑い)の場合以外は、体の中の酸素が枯渇している状態ですから、もし人工呼吸をまだ開始していないのであれば、なんとか感染防護具を手に入れる努力をして、人工呼吸を始めるべき、といえるでしょう。
 
 
 


溺水の救命のポイントは人工呼吸

「プールで男児溺れる 監視員が救出、搬送 千葉公園」(千葉日報2017年7月21日付)
 
 

プールで男児溺れる 監視員が救出、搬送 千葉公園by千葉日報2017年
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/424745

 
プールの底から引き上げたら、意識なし、呼吸なし。人工呼吸をしたら自発呼吸が戻ったというニュース。
 
アメリカ心臓協会の小児の救命の連鎖が示しているように、子どもの救命のための最大の武器はCPR(人工呼吸+胸骨圧迫)です。

プールの底から引き上げた人が、胸骨圧迫をしたものの呼吸は戻らず。監視員が到着して、人工呼吸を開始したところ自発呼吸が戻ったという本事案。
 
喉頭痙攣による呼吸停止だったのか、低酸素による徐脈性PEA(無脈性電気活動)だったのかはわかりませんが、いずれにしても、胸骨圧迫だけでは救えなかった事例と思います。

喉頭痙攣の解除にしても呼気吹き込みが必要ですし、低酸素によるPEAなら血中酸素がほぼゼロですから、人工呼吸で血液に酸素を送り込まなければ、胸骨圧迫しても細胞の酸素化は望めません。

 
BLSの原則からすれば、AEDがあればただちに装着すべきですが、それと同じかそれ以上に、子どもや水辺の救命では人工呼吸が重要です。
 
心室細動に代表されるような心原性心停止であれば、AEDがなければ救命はほぼ絶望的です。しかし、呼吸原性心停止であれば人工呼吸+胸骨圧迫だけでも救える可能性があります。
 
AEDが「ショックは不要です」と判断したら、呼吸原性心停止の可能性が考えられますから、今どきの Hands only CPR の概念から切り替えて、人工呼吸の実施も積極的に考えていきたいものです。
 
 
 


喉に物が詰まったときのファーストエイド【反応なしの場合】のメカニズム

ガイドライン2015のAHA-BLS講習で変わったところといえば、蘇生科学の解説が丁寧で詳細になったというところです。
 
旧G2010版ではハートセイバーコースにしか入っていなかった死戦期呼吸や心室細動の動画も盛り込まれましたし、古典的手技とも言える窒息解除についても、初めてそのメカニズムの説明が載りました。
 
ハイムリック法(腹部突き上げ法)で気道異物が解除できずに意識を失った場合は、「胸骨圧迫からCPRを行う」のが正解ですが、その理由が明かされています。
 

airway-obstraction.jpg

 
意識を失うと気道も含めて筋弛緩するため、隙間ができる可能性がある。そこに胸骨圧迫で間欠的に陽圧をかけることで異物が口腔内に押し出させる可能性がある。だから30回の圧迫を先に行い、そのあと口腔内を確認してから人工呼吸を行う。
 
このあたりはインストラクターでも知らない人が多かった印象がありますが、G2015ではプロバイダーレベルでの常識になりますね。
 
 


心停止認識の評価-意識ではなく反応の確認

昨日、Twitter の上ですこし書いた点ですが、こちらにもシェアしておきます。
 
BLS手順において、「大丈夫ですか?」と尋ねながら確認するのはなんでしょうか?
 
それは「反応」の有無です。「意識」ではありません。
 
英語でいうなら、Responsive であって、consciousness ではありません。
 
英語では、昔から、この単語が明確に使い分けられていますが、日本語になったときには、Responsive(反応)が意識と訳されてしまったり、成書では、反応と書かれているのに、指導員レベルで意識と言い換えられてしまうケースが散見します。
 
 
医療者レベルの理解でいけば、それほど大きな問題はないのかもしれませんが、市民向けのBLS指導ではこの違いをしっかり区別をした方がいいと思います。
 
医療の素養がない一般の人に、意識がないとはどういう状況か、と尋ねてみたら、どんな返事が返ってくるかを考えてみるとわかりやすいかもしれません。
 
例えば、「大丈夫ですか?」と呼びかけた時に、「うーん、、、」とかすかなうめき声をあげただけで、目を開かず、動かなかった、という場合、どうでしょうか? 意識なし、と判断する人が多いのではないでしょうか?

しかし、この状況はBLS手順で言った場合、「反応あり」であって、CPRは適応ではありません。
 
これが、反応でとらえた場合と、意識でとらえた場合の違いです。
 
医療者的に言ったら、JCS300以外はCPR適応外と判断できるかもしれませんが、そういうレベルの話ではなく、救命講習で教わった一般の方たちがどのように理解して、何をどうみて判断して、どう行動するか? という実質的な中身で考えるべきです。
 
ということで、絶対的な間違いとはいいませんが、CPR手順の中で「意識の確認」という言葉を使うのは不適切と考えます。
 
そこで、どのように指導すればよいのかという話になると、私たち指導員が「反応確認」という言葉を正しく使うことと、最初に、「反応」という言葉の概念を定義することが重要です。
 
先日、4月26日にリリースされた最新版の Heartsaver CPR AED Student Workbook の中では、その冒頭の3ページで下記のように定義されています。
 
You should know that during an emergency, it’s possible that someone might become unresponsive. Here is how to decide if someone is responsive or unresponsive.
 
Responsive : Someone who is responsive will move, speak, blink, or otherwise react to you when you tap him and ask if he’s OK.
 
Unresponsive : Someone who does not move, speak, blink, or otherwise react is unresponsive.
 
傷病者を軽く叩きつつ、大丈夫ですか? と声をかけたことに対する「反応」に着目します。その刺激に呼応して、動きや、発語、瞬きなどの目元の動き、その他の反応が見られた場合、「反応あり」つまり、心停止の兆候ではない、と考えます。
 
これを簡略化して「動きの有無」としてしまうと、正しくはありません。あくまでもこちらからの刺激に対する反応として動きがあるかどうか、です。
 
反応とは関係のない痙攣や死戦期呼吸のような「目的のない動き」を除外するためです。
 
疑わしければ胸を押せ、という原則からすれば、先ほど上げたようなケースで胸を押すということは間違いではありませんが、指導指針の中で、きちんと意識と反応を区別して、弁別の閾値が設定されているわけですから、少なくとも指導員レベルでは、この点はきちんと認識したいところですね。


心肺蘇生法のしくみ

心肺蘇生法(CPR)は、自発呼吸が停止し、心臓の拍出機能が停止もしくは著しく停止した人に対して行う救命処置です。
 
人が生きるためには酸素が必要です。大気中の酸素を体の細胞に届ける機能を代行するがCPR、と考えてみてください。
 
酸素の流れで考えます。
 
自発呼吸が止まっているから、強制的に肺に空気(酸素)を送り込むのが人工呼吸です。その名の通りですね。
 
肺に達した酸素は、肺胞から血液中に血液ガスとして溶け込みます。
 
血液に酸素が溶けこんでも、それが循環しなければ、体の各細胞には届きません。
そこで胸骨圧迫です。
 
血液のポンプ機能が停止した心臓に代わって、胸骨の上から強く速くおして、血液の流れを生み出します。
 
こうして、はじめて大気中の酸素が体の各細胞へ届けられるのです。
 
なので、基本的には、
 
 
人工呼吸 → 胸骨圧迫
 
 
という流れが自然です。
 
しかし、最近は、
 
 
胸骨圧迫 → (人工呼吸)
 
 
という図式が定着してきています。
 
逆ですよね? しかも、人工呼吸は( )付き。省略してもよいという論調。
 
なぜでしょうか?
 
ヒントですが、「人工呼吸をしなくても、血液中に酸素が溶け込んでいる状況なら」、と考えれば、納得いきませんか?
 
心肺停止状態が発生する”なりゆき”を考えてみます。
 
もし、突然に心臓の機能と呼吸機能が同時に停まったとしたら、、、、
 
直前まで普通に呼吸をしていたわけですから、血液中には酸素が溶け込んでいますよね?
 
問題は、心臓の血液ポンプ機能が停まったから、血液中の酸素が細胞に届けられない。
 
そんな状況だったら、人工呼吸で手間取るより、すぐに胸を押して、血液循環を生み出すほうが大切。
 
これが最近、よく言われる胸骨圧迫のみのハンズオンリーCPR(Hands only CPR)の基本原理です。
 
 
 
 
しかし、もう一歩踏み込んで考えてみてください。
 
血液中に酸素が溶け込んでいる状態だからこそ、胸骨圧迫だけでいい。
 
しかしもし、血液中の酸素が使い果たされた状況で起きた心停止だったらどうでしょう?
 
たとえば、水に溺れて息ができなくて心肺停止になった状況とか、呼吸困難で意識を失って心肺停止になったとか。
 
この場合、体の中の酸素を使い果たしてしまったから、心臓まで止まってしまったと考えられます。
 
人が生きるしくみは、大気中の酸素を体の中の細胞に送り届けること。
 
胸骨圧迫だけで血液循環を促しても、送り届けたい酸素が血液中になければ、あまり効果的でないのはわかりますよね?
 
つまり、心肺蘇生法のしくみを考えた時に、Hands only CPRよりは、人工呼吸もきちんと行った蘇生法のほうが好ましい状況もあるのです。
 
世の中の一般的な統計では、心臓突然死、つまりが心臓と呼吸機能が同時にとまるケースが最も多いと言われ、社会的に問題になっています。
 
そこに着目すれば、Hands only CPRという誰でもできる簡便な蘇生法の普及が劇的に効果が期待できます。
 
しかし、子どもに多い呼吸のトラブルに起因した呼吸原性心停止や、プールや水辺の事故に対応する可能性が高い職業人にとっては、胸骨圧迫だけの心肺蘇生法では不十分かもしれない、とも言えます。
 
人工呼吸は技術的に難易度がやや高く、体液からの病気が感染するリスクや、心理的抵抗など、ややハードルが高いのは事実です。
 
しかし、呼吸のトラブルが想定される専門職であれば、素人レベルで言う「難しさ」は物ともせず、目の前で起きたことには適切に対応するという気概でしっかりと訓練をしてほしいと思います。
 
 

 

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喉にモノが詰まったときの対応【気道異物による窒息の解除法】

喉にモノが詰まったときの解除法の基本は、咳をするように促すこと。
 
自分で咳ができない完全閉塞なら、下の方を向かせて背中を強く叩いてあげましょう。
 
ダメだったら、詰まった人の後ろに回って、両手で拳を作ってヘソの少し上あたりを強く圧迫する腹部突き上げ法を。ハイムリック法とも言います。
 
背中を叩いても、お腹を圧迫しても詰まったものが取れなくて、意識を失ってしまったら、次にやるのは「胸部突き上げ法」です。床に寝かせて、胸骨圧迫(心臓マッサージ)とまったく同じことをやります。肺を勢いよく圧縮することで、空気を押し出して詰まったものを飛ばそうとする解除法です。
 
反応(意識)がなくなってからの窒息解除法は「CPRをしましょう」と表現されることもありますが、「大丈夫ですか?」から始める必要はありません。いきなり胸骨圧迫をはじめてください。(もちろん他に人がいれば通報の依頼を!)
 
ヘルスケアプロバイダーレベルでBLSを学んでいる人は、反応がない窒息者への解除では、決して脈拍を取らないように!、というのが注意点。
 
BLSのアルゴリズムに従って行動した場合、「反応なし+呼吸なし+脈あり」となりますので、《補助呼吸》に行き着いてしまうからです。窒息解除に必要なのは、CPRの中でも人工呼吸ではなく、胸骨圧迫(胸部突き上げ法)です。
 
 
窒息解除における胸骨圧迫は、血流を生み出すのではなく、詰まった異物を押し出すのが目的だという点を理解しておいてください。
 
 
 


心肺蘇生法における年齢区分の違い

※以下、AHAガイドライン2010での市民向け/医療者向け心肺蘇生法、またはJRCガイドライン2010の医療者向け勧告の内容なのでご注意ください。
 
 
●大人と子どもの蘇生法は違いますが、その区分は思春期
 
●AEDの小児用パッド(システム)の適応は8歳未満 (JRCガイドラインでは就学年齢未満)

 
 
心肺蘇生法を勉強すると、このふたつの年齢区分が出てきます。
 
そこでたまに質問されるのは、
 
「すごく小さな子どもみたいな体型の大人がいた場合、どうしたらいいですか?」
「大人みたいな大柄な6歳の子、どうしたらいいですか?」
 
インストラクターの皆さん、こんな質問を受けたらどう答えますか?
 
年齢区分の意味合いの違いを理解していないと、正しく答えることができないかもしれません。
 
CPR開始が優先か、通報(AED手配)優先か、という蘇生手順の違いは、思春期を迎えたかどうかで区別しますが、これは体の発達、特に呼吸器系の完成の有無を意味しています。つまり、子ども特有の呼吸原性心停止リスクが残っているかどうか、という点が問題となります。
 
ですから、いくら体格が小さくても、年齢が思春期を越えていれば、一般に大人向け蘇生法が適応されます。
 
一方、AEDの小児用パッドの適応は、体重で計算されます。小児用パッドはショックのエネルギーが1/3の50Jに減衰されるようになっています(フィリップス社のFR2の場合)。G2005の時代には、体重25キロ未満は小児用パッドという言い方をすることもありました。小児の場合、手動式除細動器を使う場合は体重1キロあたり2Jで計算されます。ですから、医学的に判断すれば、大型な子どもの場合は成人用パッドを使った方がいい場合も考えられます。
 
ただ、AEDの場合は医学的な判断のほかに、法的な根拠も加味しなければなりません。薬事承認を得た医療器具ですから、その添付文書に従った操作が求められます。そこで基準として就学年齢未満とされているのであれば、医師以外はそれに従うべきです。
 
日本版JRCガイドラインと米国版AHAガイドラインで、小児用パッドの適応基準が異なっていますが、薬事承認も含めた政治的理由によるもので、医学的に言えば、8歳であっても就学年齢であっても、絶対的な意味はありません。そういう「お約束」という理解が妥当でしょう。
 
具体的に、どう答えるかは質問してきた相手の立場にもよりますので、一概には言えませんが、このような根拠を知っていると、応用が聞くのではないでしょうか?
 
 
追記:消防や日本赤十字など、日本版JRCガイドライン2010で学ばれる方は、基本的に子どもを区別する概念が廃止されていますので、ご注意下さい。”ユニバーサル化”ということで、日本標準の市民向けの教え方では、すべて大人向けのやり方に統合されています。
 
 


30:2-人工呼吸時に胸骨圧迫を止める理由

心肺蘇生法の理屈を理解するワークショップ・スライド4
 
人工呼吸と胸骨圧迫を同じタイミングで行なうと、よくないことが起きます。
 
イメージしてみてください。胸を押せば肺から空気が押し出されます。そのとき、同時に人工呼吸をしてしまうと、口から肺に向かって入る空気とぶつかります。
 
肺から出る空気と口から入る空気がぶつかったら、どこに逃げるか?
 
食道、つまり胃です。
 
胃膨満となり、なにかのタイミングで胃の内容物と合わせて逆流、嘔吐してしまいます。すると以後のCPRの継続が困難となり、助かる可能性が低くなります。
 
これが、30:2とか15:2といった「同期式」でCPRを行なう理由です。
 
 
しかし、高度な気道確保、つまり気管挿管がされれば、胃に空気が入るリスクはなくなりますし、嘔吐しても人工呼吸にはまったく影響されないので、胸骨圧迫の手を止める必要はなくなります。つまり、非同期式。
 
胸骨圧迫の大事なポイントのひとつ、「絶え間なく」を文字通り実現できるのです。
 
 
 


心肺蘇生法-「心停止を目撃」したか否かの違いって何?

横浜本郷台でBLSヘルスケアプロバイダーコース進行中です。
 
コース開始前に受講者さんから質問がありましたが、やはり小児の部分がわかりづらいようです。
 
テキスト29ページの「救急対応システムに出動を要請するタイミング」の部分ですが、「心停止を目撃」したか否かによって対応を変えなさいと書かれていますが、この意味がイメージしづらい模様。
 
これは、人が目の前で突然卒倒したのか、それともすでに倒れているのを発見したのか、という違いを意味しています。
 
胸を押さえていきなり倒れた。これは突然の心停止を疑います。もっと言うなら心室細動(VF)という致死性不整脈。この不整脈を止めるには除細動(AEDによる電気ショック)が必須ですので、CPRを開始するよりAEDを手配することが優先されます。
 
一方発見時にすでに倒れていた場合、原因がわかりません。その場合、思春期前、すなわち体が完成する前の子どもだったら”呼吸原性心停止”を疑います。子どもの心臓突然死は珍しく、逆に多いのは呼吸停止に起因する心停止や”ショック”から心停止に至ることが多いことわかっているからです。
 
もし呼吸停止を経て徐脈になって心静止(いわゆるフラットライン)になった場合、心停止として発見した時点で、体の中に酸素は残っているでしょうか?
 
いうまでもなく、すでに重篤な酸欠状態。
 
ですからAEDを手配するより、なにはさておき人工呼吸を含めたCPRで体の細胞、特に心筋細胞と脳細胞を酸素化してあげることが必要なのです。だから5サイクル(2分間)のCPRを優先して、もしその場に自分一人しかいなかったら、そのあとで119番通報とか近くにあるのがわかっていればAEDを取りに行きます。
 
このように、心停止の原因によって、対応の優先順位が変わってくる、そしてその判断のポイントは、目の前で卒倒したか、それともすでに倒れていたか、ということです。
 
 
 
 

 
 
 

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「心肺蘇生法の仕組みを理解する」ワークショップ開催報告

先日開催した「心肺蘇生法の仕組みを理解する」ワークショップには、全国からたくさんの人にお集まりいただきました。
 
もともと定員16名の予定でいましたが、あまりにキャンセル待ちが多かったので、会場が手狭になるのを覚悟で枠を拡大。26名の方にご参加いただきました。(締め切りのため今回、参加いただけなかった皆様、申し訳ありません!)
 
皆様からはたいへん好評いただけたようなので、次回3月31日(日)、同じかながわ県民センターで同じ内容の無料セミナーを開催するつもりでいます。
 
前回、ご参加いただけなかった方は、どうぞ次回の日程のマークをお願いします。
 
 
さて、「心肺蘇生法の仕組みを理解する」ワークショップの内容を、次回のためにネタバレしない程度にご紹介しようと思います。
 
4名ずつのスモール・グループディスカッション形式で進めていきました。
 
テーマを提示して、5分〜10分程度でフリーディスカッション。その後、解説をしていくというスタイルです。
 
最初のテーマはこんな感じ。
 
心肺蘇生法の理屈を理解するワークショップ・スライド1  心肺蘇生法の仕組みを理解するワークショップ・スライド2
 
ガイドライン2005時代に、こんな場面に遭遇したら、皆さんは何ができましたか?
 
机上の空論ではなく、皆さんが現実にできることを考えてみてください。
 
今だったら、きっと心停止を認識してさっさと胸骨圧迫が始められると思うんです。
 
でもたった3年前ですが、G2005時代にはそこまで辿りつけなかったかもしれない。
 
これがガイドライン改訂の最大のポイントだと私は思っています。ABCからCABとか、そんな枝葉の話ではなく、蘇生ガイドラインはimplementation(実施・実行)という新たなキーコンセプトにもとづいて、すべてがチューンナップされているのです。
 
それにしても、参加者の半数以上が、日頃から感染防護手袋を携帯しているという事実は、さすが意識が高い方たち! でした。
 
 
ガイドライン2010の本質を再確認したあとは、質の高いCPRのキーポイントを復習。その背後にあるエビデンスを理解していただきました。
 
それを踏まえた上でのまとめのディスカッションのテーマはこちら。
 
心肺蘇生法の理屈を理解するワークショップ・スライド3
 
ガイドライン2010になって、胸骨圧迫の強さは「少なくとも5センチの深さ」、速さは「少なくとも1分間に100回のテンポ」で、ということになりました。
 
しかし、この定義の本質的な意味はなんでしょうか?
 
この深さと速さを文字通り覚えることに意味があるでしょうか?
 
とすれば、私たちは受講者にどう指導していけばいいのか?
 
きっとここにG2010時代のCPR講習の本質があるはず。
 
 
 
また、こんなやや難しいテーマを入口にして、胸骨圧迫によって血流を生み出す仕組みと、自己心拍再開の仕組みを考えてもらいました。
 
絶え間なくというわりには30:2なのはなぜ? 人工呼吸の時、胸骨圧迫を止めるのはなぜ?
 
人工呼吸の時、なぜ胸骨圧迫の手を止める必要があるのか?
 
これは、胸骨圧迫によって身体の中で何が起きているのかをイメージできていないと答えられないと思います。その模式化された心肺蘇生のメカニズムの理解が質の高いCPRの実施につながるのでは? という仮説。
 
 
 
最後は、「心停止」の意味を考えてもらいました。
 
ショックが有効な心リズム:心室細動、無脈性心室頻拍、無効な心電図:無脈性電気活動、心静止
 
一言で心停止といっても、電気ショック(除細動)が有効な場合と無効な場合がある点を理解しておくことは重要です。AEDは心臓を止める道具である点、AEDだけでは人は助からない理由などを理解していただきました。
 
 
結論だけを言えば、すでにこのブログやFacebookページで何度も書いてきたことばかりですが、自分の頭で考え、みんなでディスカッションすることで理解を深めて、自分のものにしていく。
 
そんなワークショップでした。
 
参加後のご意見として、他の人たちと意見交換ができたのが良かったという声は複数いただきました。
 
「学ぶ」とは何なのか?
 
そんな点にも思いを馳せて頂く機会となれば幸いです。
 
 
次回、3月31日(日)の参加申し込みは1月15日に開始させていただく予定です。
 
次回は定員をやや多めに設定するつもりですが、参加ご希望の方は早めのお申し込みをお勧めします。
 
 
 

 
 
 

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