日本の医療従事者はBLSの半分しか知らない

最近では、看護大学など医療従事者の養成校でBLS教育がきちんと行われるようになり、病院に就職時の新人研修でもBLS練習があたりまえになって、「BLS、知ってます。できます」という人が増えてきました。

お蔭で BLSプロバイダーコース の指導も、皆さんの技術を補強する程度で済み、1からしっかり教えるということは少なくなってきました。

しかし、それでもやはり感じるのは、「日本の医療従事者はBLSの半分しか知らない」という点です。

医療者が基礎教育で教わっているBLSは、BLSではない

医療従事者が、その教育課程で教わっているBLSは、Basic Life Support(一次救命処置)というよりは、実は「AED講習」ではないでしょうか?

  • 胸骨圧迫
  • AED
  • (人工呼吸)

AEDの心リズム解析結果は常に「ショックが必要です」であり、除細動をすれば助かるという前提の研修ではありませんでしたか?

また人工呼吸の練習はきちんと行われていたでしょうか?

医療現場での業務対応ですから、口対口人工呼吸やフェイスシールド人工呼吸は論外です。ポケットマスクも医療従事者の通常業務では考えにくいので、バッグバルブマスク換気のトレーニングが必要です。

こう考えたときに、医療従事者が基礎教育や新人研修で習得する「BLS」なるものは、心臓突然死(心室細動)に焦点化した「AED講習」であって、心停止全般を見据えた Basic Life Support とはいい難いのが現状です。

看護師はBLSの半分しか知らない。教わっていない。

心停止には4種類ある

ご存知のとおり、心停止には4種類あって、AED(除細動)が有効な心停止と、除細動が無効な心停止の2種類に大別されます。

この両方の概念を内包して「心停止対応」といえるわけですが、AEDありきの対応しか知らないとなると、BLSの半分しか知らないのでは? というのが記事タイトルの意味です。

心臓突然死(突発性の心室細動)は、発生頻度が高く、適切な処置により救い得る可能性が高い病態なので、優先的に習得するべきものであるのは事実です。

ですから、市民向けの救命講習が、実質的にAED講習であることに異論を唱えるつもりはありません。

しかし医療従事者が習得すべき BLS としては、アンダースペックであると考えます。

電気ショック(除細動)不適応の心停止が多い

というのは、医療に従事している方はご存知の通り、病院内でも病院外でも、AEDが「ショックが必要です」というケースはあまり多くはありません。「ショックは不要です」と言われるケースが大半です。

つまり、4種類の心停止のうち、心静止/無脈性電気活動(PEA)が現実的に多いわけですから、AEDでは救命できない場合の理解と対応を含めた【フルサイズの一次救命処置】を学ぶ必要があります。

PEA/心静止の対応というと、二次救命処置ACLSの範疇になってしまいますが、BLSであっても小児のBLSをきちんと学んでいれば、それが除細動が無効なタイプの心停止として、心停止の総合理解に繋がります。

AHAの小児の救命の連鎖には、AEDが含まれません。

また、成人の救命の連鎖とは違って、通報よりもCPRが優先されます。

実は、これは小児に限った話ではありません。小児に多いAEDでは救えない心停止、すなわちPEA/心静止の理解そのものなのです。大人であっても病院内で多いとされる呼吸のトラブルやショックからの心停止の場合は、これに当てはまります。

BLSプロバイダーコースの内容は、あくまでも Basic なので、心静止や無脈性電気活動(PEA)というキーワードは出てきませんが、AEDではなく「人工呼吸を含めたCPRを優先する」べき場合があることを明示しているのは非常に大きいと言えます。

BLS総合理解のセルフチェック

BLSについて、正しく理解しているかどうかのセルフチェックとして、下記のクイズを考えてみてください。

  1. 人工呼吸を省略できるのはどのような場合ですか? 生理学的観点から説明してください。
  2. 呼吸不全から心停止に陥った人にAEDを装着したら、どんな判定になるでしょうか? それはなぜ?
  3. 除細動の後の2分後のパルスチェックで、AEDがショック不要と言ったとき、傷病者の生命状態としてどんな可能性が考えられますか? 2つないしは3つ挙げてください。

日本の医療者の大半は小児BLSを知らない ≒ BLSの半分しか知らない

医療従事者教育の中で、小児のBLSを学ぶ機会は十分とは言えません。医師や救急救命士教育の中では小児領域の学習も含まれますが、その他の医療専門職教育では、ほぼ皆無でしょう。

医療従事者の中で最大人口を誇る看護師の教育カリキュラムにも小児BLSは入っていません。ましてや二次救命処置レベルで、PEAや心静止について学ぶ機会もありません。

そう考えると、医療者の大半はBLSの半分しか知らないと言わざるを得ないのが、いまの日本の教育現状です。

BLSは知っている。

そう自認している医療者であっても、心停止の概念を正しく理解している人は極めて少ないのが現状ですし、医療者であっても人工呼吸はしなくても良いと誤って理解している人も少なくありません。

そう考えると、心停止初期対応の全体像を学べる機会は、残念ながら AHA-BLSプロバイダーコース しかないというのが、今の日本の現実と言わざるを得ないのが残念です。

医療従事者レベルのBLSとしては、下記の項目もぜひ知っておきたいところです。

  • 呼吸停止時の対応(補助呼吸+2分毎の再評価)
  • バッグバルブマスク換気
  • ポケットマスク(町中のAEDに付属している場合があるため)
  • 小児・乳児へのCPR
  • 呼吸原生心停止の機序と人工呼吸の意義の理解
  • 気道異物による窒息解除のメカニズム(特に反応がなくなった場合)
  • 2人法BLSの意義とチーム蘇生

まとめ

小児のBLSをきちんと学びましょう。成人にも使えるフルサイズの一次救命処置BLSの理解につながります。

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