ファーストエイド一覧

服が燃えたとき(全身熱傷)のファーストエイド

福知山市の花火大会会場で起きた爆発事故の報道では、目撃者のコメントとして、「人が燃えていた」というものがありました。
 
飛び散ったガソリンが体や服に付着して燃えていたものと思いますが、服に引火するという事故は焚き火などのアウトドア・レジャーでも起こりえます。
 
特に最近の衣類は化学繊維が多いため、一度火が着くとあっという間に燃え広がる恐れもあります。
 
もし、服や体に炎が引火している人がいたら、どのように救助ができるでしょうか?
 
AHAハートセイバー・ファーストエイドコースで言われているのは、「地面に倒れて! 転がって、転がって!」と声をかけること。
 
服に火が着いた人は気が動転して、炎をから逃げようとして走り回る傾向があります。
 
走ると風を受けますから、炎はかえって大きく燃え広がります。そこで先ほどのような掛け声になるわけです。
 
転がって地面に燃焼部分を押し付けて火勢を落とします。可能であれば厚手の衣類などをあてがって火を消します。ただ、薄手のナイロンジャケットなどだと逆に引火の可能性もあるので注意。
 
炎をが落ち着くまで転がってもらうというのが、現実できることかもしれません。
 
いずれにしても、救助者の安全が第一。ガソリンがあちこちに飛び散った場所であれば、遠くから声をかけること、しかるべき救助要請をすぐに行うことだけでも十分な援助です。
 
火が消えた後は、通常のやけど処置と違って「冷やす」のではなく、乾いた毛布等や、理想的にはエマージェンシーブランケット(薄いアルミのシート)のような皮膚に張り付かない素材のもので覆い、保温をします。皮膚が破綻すると体温調整が利かなくなって低体温になりやすいのと、全身やけどを負った人が命を落とす主な原因は、感染だからです。
 
体を覆うまえに、指輪などの装飾具をはずす、というのも大事なポイントです。この後、間違いなく腫れてくるからです。皮膚に張り付いておらず無理なくできるのであれば衣服も取り除くことが勧められています。
 
 
 

 
 
 

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「助ける?助けない?何をする?」― 応急救護の選択

応急救護に関して、「助けない」という選択肢があると公言することに関してご意見をいただきました。
 
手当を必要とする人が、手当を受ける機会を失することが無いような指導をお願いしたいという趣旨で、あえて、「助けない」という選択肢の存在を強調することを危惧するご意見でした。
 
確かにTwitterという140字という文字制限がある中での発言としては、部分的に切り取られると、真意が伝わりにくく、不用意であったと反省しております。
 
そこで改めて、「助けない」という選択肢の意味について説明させていただきたいと思います。
 
なお、ご指摘を受けた文章の全文はFacebookページのこちらに掲載されています。Twitterではこの文章を5分割して投稿しました。当該ツイート部分だけ、一人歩きを避けるという点で、削除しています。
 
 
まず、根本として理解していただきたいのが、BLS横浜は蘇生ガイドライン2010のコンセプトを受け継いで、心肺蘇生法講習をゼロから見なおした、という点です。
 
ガイドライン2010はこれまでにない画期的な内容です。これまで、こうすべきという蘇生科学上の理想に重きが置かれがちだった心肺蘇生法に「実行性」という、現実主義が持ち込まれたからです。
 
このことは心肺蘇生法の国際コンセンサスCoSTRに、EIT(education, implementation and teams)という新しい章が作られたことからもわかります。日本版蘇生ガイドラインでも「第七章:普及・教育のための方策」として採用されています。
 
例えば、誰もが心配する「胸を押したら骨が折れるんじゃないか?」という懸念。

それに対する答えを科学的に導き出して、迷ったら胸を押せという方向性を支持しています。

一方で、これまでとかく市民向け講習では、難しいとか、生々しすぎるという理由で言及が避けられがちだった死戦期呼吸に関しても、指導の必要性が強調され、映像教材の使用についても推奨されています。
 
あとは、「楽しく学びましょう!」とガイドライン2005以降の風潮に相対するかのように、CPRは肉体的にもハードな運動である点を講習の段階で伝える必要性が言及されています。

その結果、例えばAHAのBLSヘルスケアプロバイダーコースでは、胸骨圧迫練習はすべて5サイクルさせて、”ハードさ”をあえて体感させるような教材設計に変更されました。(結果、手の皮がむける人が続出していて、講習には絆創膏が欠かせません)
 
このように、これまでは、一般市民にとっては絵空ごとに近い観念的な学習体験であった救命講習にも、現実さが求められているのがガイドライン2010時代の蘇生法講習の在り方です。
 
そこで、BLS横浜では抜本的に講習を見直しました。変更点をあげたらキリがないのですが、例えば、、
 
・マネキン相手では呼吸確認練習はできない → 生身の人間で「呼吸あり」状態を認識する訓練
・「あなた119番!」では通報してくれない → 119番通報練習
・「周囲の安全ヨシ!」では、安全確保ができない → 具体例を示し、安全確認と安全確保の違いを理解してもらう
・一人では救助活動はできない → 周囲の人との協同、役割分担を体験、練習
 
といった工夫をしています。これらはできるかぎり、シミュレーションの中で、受講者自ら気づいてもらえるように務めています。
 
このように「現実」にフォーカスすると、さまざまな問題が浮上してきて、複雑な感情が沸き上がってきます。
 
現実問題、路上で膝をついてCPRをすれば、ズボンは汚れますし、女性でストッキングだったらボロボロになります。(女性研修医の救命事例の報道でそうものがありました)。また、とある有志の実験として1時間路上でCPRを続けたら膝から流血したという報告もありました。
 
ましてや、とかくありがちな交通事故の対応の場合、救助者に駆け寄る前にしなくてはいけない点がたくさんあります。傷病者の安全よりは、周りの人たちの安全ですし、なにより自分自身の安全。
 
救命講習を受けていて、救命スキルが心得がある方は、とかく要救助者に目が向きがちですが、要救助者の優先戦順位は最下位です。多くの状況では、安全確保だけで手一杯、さらには周りの人の安全配慮だけで終わってしまう場合が多いです。救命講習の場面のように、要救助者に取り付ける場面は現実、あまり多くありません。
 
高速道路の事故などを想像してもらえば、理解しやすいと思います。この場合、車外に出て救助に向かうのはNGです。バイスタンダーとして出来ることは、道路公団や警察に通報すること。これが最大のファーストエイドです。さらにできることと言ったら、それが適正かはわかりませんが、安全な路肩から発煙筒を投げて、後続車への注意喚起をするくらいでしょうか。
 
このように、安全確保には明らかな優先順位があるのです。
 
自分 → 仲間 → 周りの人 → 傷病者
 
こうした現実問題に触れると、何がなんでも助けるべき、という考え方には自然となりません。
 
新聞や雑誌の見出しで、「レスキュー隊、決死の救助活動!」みたいな見出しが踊ることがありますが、決してそんなことはありません。危機管理のプロは勝算がある管理された行動しかしません。なにが危険かを判断し、それを回避しつつ助ける準備と公算があるから、救助に向かうのです。もちろんリスクはありますが、少なくとも命がけではありません。
 
ですから、当然、準備が整うまでは救助には向かいません。
 
海で沖に流された人がいて、先に救急車が到着しても、救急隊員が海に飛び込んで助けるということはあり得ません。ボートなり、水難救助の訓練を受けた人が来るまでは、残念ながらなにもできないのです。
 
これはまさに、「助けない」という選択です。
 
 
こうした現実を救命講習の中で考えてもらうことは、「手当を必要とする人が、手当を受ける機会を失する」問題ありな指導なのでしょうか?
 
安全にできることだけをする、それが私たちが伝えたい最大のことです。
 
CPRは現実、それなりのリスクがあります。精神的なインパクトは大きく、ほぼすべての人が多かれ少なかれ、心的外傷を受けます。
 
自信がない人は、あえて手出しはせず、119番通報し、人を集めるだけでも、それは立派な救助活動です。
 
そこで、自分の手ですぐにCPRを開始しなかった、ということが返って自責の念として後遺症となる可能性もあります。そういった方は、自信がつくまで訓練してほしいと思います。
 
ですから、プロのための講習(BLSプロバイダーコースハートセイバーCPR AEDコース)では、一人一体のマネキンを準備して練習量を多く取っていますし、その後、無料の復習参加の機会を提供しています。躊躇することがないように、後悔することがないように、いつでも感染防護手袋を持ち歩くことの大切さも強調し、ファーストエイド講習ではニトリル手袋を配布しています。
 
どこまで介入するかは、救助者ひとりひとりの訓練と準備の程度によってまったく違うのです。
 
これをしなくちゃいけない、という決まりは、対応義務のある人(医療者、学校教職員、警備員、スポーツインストラクター等)以外はありません。対応義務があり、準備をしていても、現実100%のことは難しいでしょう。
 
無理なくできる範囲でやればいいし、そもそも自分の心と体、さらには付随して自分の家族を守る上で必要があれば、あえて見て見ぬふりをするのも選択肢のひとつです。(できれば119番だけでもしてくれると嬉しいですが、それですら難しい精神状態も理解できます)
 
そうしたあらゆる選択肢を持った上で、できれば、すべての人に適正な訓練と準備をしてもらい、いつでも積極的に行動ができるようであってほしいと願っています。
 
東日本大震災のときに、世界的にも稀有といわれる日本人の善良さがクローズアップされました。日本人は助けたいという思いを潜在的に持っている。だからこそ、安全認識を正しく持ち、救助者と救助者の家族が不幸な目にあってほしくないのです。
 
少なくとも私たちは闇雲に、受講者の恐怖心を煽るような講習はしていませんし、無関心を増長するような講習展開もしていません。
 
もし救急法指導にあたる立場の方で、疑問に感じる方がいましたら、見学参加ウェルカムです。
 
見てもらった上で、直接ご意見いただけるとうれしいです。
 
 


エピペン注射の仕方は日米で違う!

BLS横浜では American Heart Association公式のファーストエイド講習 の中で、2008年頃よりエピペン注射の指導を行ってきました。
 
日本でエピペン(アドレナリン自己注射器)が薬事承認を得たのが2003年、当初はハチ刺されによるアナフィラキシーのみが適応でしたが、2006年から食物アレルギーにも適応範囲が広がり、今に至っています。去年あたりから事故が相次ぎ、今ではよく知られるようになりました。
 
エピペンってなに? という時代から、その指導を行なってきたので、日本の中では古参に入るかと思いますが、私たちはずっと米国の法定講習の中で教えてきたため、気づきませんでした。
 
どうやら、日本と米国ではエピペン注射の指導の仕方が若干違うようなのです。
 
この写真は、練習用エピペンの英語版と日本語版を並べて撮ったものです。
 

エピペン・トレーナー日米の違い

 
お気づきでしょうか? 注射の打ち方と、注射後に押し付けておく秒数が明らかに表現が違っています。
 
(米国)
・振りかぶって強く押し付ける(Swing and firmly push)
・10秒間保持(Hold on thigh 10 seconds)
 
(日本)
・強く押し付ける
・数秒間待つ
 
振りかぶって注射をするのは、前から危険だなと思っていて、当時、ガイドライン2005版のファーストエイド講習ビデオのデモンストレーション映像は、監修ミスかな、米国ゆえの大雑把さかな程度に考えていたのですが、新しくリリースされたガイドライン2010版ハートセイバー・ファーストエイドDVDでもみごとに振りかぶって注射をしています。
 
でも、このエピペン練習器の表記に気づいて、それは米国では正しいやり方だったのだと悟りました。(当時は旧タイプのトレーナーを使ってました)
 
また注射器を大腿に押し付けておく時間も、私たちはAHAのテキスト通り、10秒で教えていましたが、最近、保育園や小児科クリニックで指導させていただく中で、痛がる子どもを制しつつの10秒は長すぎるよね、ということで、AHA講習以外では数秒間保持という言い方に変えるようにしていましたが、実はこれも日本では公式なメーカー推奨のやり方だったことに後から気づいた次第です。
 
 
日本国内で他人に対してエピペン注射をできるとされているのは救急救命士を除けば、学校教職員と保育所職員。つまり注射を打つ相手は子どもに限定されています。
 
子ども故に怖がって暴れたり、太さ22G(ゲージ)、長さ1.5cmの針が刺さって痛いことを考えると、振りかぶると打ち損じたり、針が曲がったり、最悪折れる危険があります。また痛みを訴える中、10秒押し続けるのは困難。
 
そんなことはシミュレーション・トレーニングの中でも浮き彫りになってきます。
 
そういった意味では日本流の指導法は妥当と思います。
 
AHA公認講習(ハートセイバー・ファーストエイド)は、米国労働安全衛生局OSHAの労働ライセンスを発行する以上、米国流の注射の仕方で教える必要があり、そこは変更できません。特に注射時間の10秒というのは実技試験で問われている項目でもあるからです。
 
この点を注意しつつ、私たちは受講対象や講習の種類に合わせて、適正に指導を行なっていきたいと思っています。
 
 
 

 
 
 

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米軍基地内、憲兵隊(警察)のファーストエイド訓練

米軍基地内で行なわれた憲兵隊のCPR/First Aidトレーニングにお邪魔してきました。
 

米軍憲兵隊のファーストエイド訓練   米軍MPのFirst Aidトレーニング

 
在日米軍基地の中は米国です。
 
軍人はもちろん、基地内で働く従業員は米国内の法律や基準が適応されます。
 
それは心肺蘇生法教育などの職場安全対策も、、、
 
空軍、海軍、陸軍によっても多少の違いはあるようですが、軍人にはヘルスケアプロバイダーレベルの心肺蘇生法スキルが求められています。
 
また基地内のカスタマーサービスや技術系職員には、対応義務のある市民救助者としてHeatsaver CPR AEDライセンスの取得と2年ごとの更新が義務付けられています。
 
半年ほど前には米空軍横田基地で行なわれた電気技士さん向けのHeartsaver CPR AEDコースの手伝いに行かせてもらいましたが、横田基地ではカード自体は2年間有効でも、実務を考えて1年毎の更新にしているそうです。
 

AHA military Training NetworkのハートセイバーCPR AEDコース修了カード
▲AHA MTNの修了カードは独自デザイン。通常のAHAカードと互換性は保障されてます

 
日本国内と違って、教える方も教わる方もどちらも正式な業務のひとつとしてAHA講習が開催されています。
 
意識の高い人が自費で外部講習を受けに行くのではなく、職業義務なのです。米軍基地内では病院や、消防、憲兵隊など、セクションごとに職員にAHAインストラクター資格を取らせて、部署内のCPR教育をしています。
 
 
さて、今回は基地内で働く憲兵隊の定期訓練として行なわれたHeartsaver First Aid CPR AEDコースでした。憲兵隊というのは軍の中の警察官。基地のゲートで警備に当たっている人たちはたいてい憲兵隊員です。
 
ユニフォームが一般兵士と同じなので、パット見ではわかりませんが、胸元の徽章をみると、Policeという文字が。
 
憲兵隊は元々は軍人と同じヘルスケアプロバイダーコースを受講させていたそうですが、パトカーにはバッグマスクを積んでいないことや、病院外での安全的に不安定な場所での活動が中心ということで、ハートセイバーコースに切り替えたという経緯があったそうです。
 
 
 
ハートセイバー・ファーストエイドコースは、G2010版から公式日本語化されて、日本国内でもチラホラと開催されるようになっていますが、コースの中身は米国職業安全衛生局OSHAの法定講習。
 
日本の救急法とは基本概念も基準も違います。それゆえに日本国内で開催する上では、法律の問題とか注意が必要なのですが、米軍基地内はまさにアメリカ。
 
注釈なしにビデオを流すだけで済むのかと思いきや、、、
 
実際のところ、米軍基地内での講習の方が複雑で、さまざまな追加説明を加えないといけないことが判明。意外な驚きでした。
 
どういうことかというと、基地内で米国人に対して救護をするときは、講習内容どおりでいいのですが、基地内にはかなりの数の日本人従業員が働いています。傷病者が日本人の場合は扱いが違ってくるようなのです。
 
例えば救急車を呼ぶ場合でも、米国人なら基地内の病院へ救急要請を行います。しかし日本人の場合は、基地の外から日本の救急車を呼ぶことになるとのこと。しかし日本人であっても軍人の配偶者の場合は、119番ではなく、基地内の病院へ。
 
さらにゲートを一歩出ればそこは日本。プライベートで基地の外にいるときに、どこまでやってよくて、どれはしたらいけないのか、などふたつの基準を学ばなくてはいけない。そんな複雑さがあるようでした。
 
受講者からの質問もそんなところに集中していました。
 
「自分たちは基地の中ではエピペンを使えるけど、ゲートを出たらダメなのか?」とか。
 
日米の細かい法律の違いや、エピペンの扱い方などを含めて説明するには、インストラクターにも普通以上の勉強が求められる、そんなことを感じました。
 

米軍パトカー内に配備された個人用感染防護具PPEキット  日本ではあまり見ないCPR練習マネキン

 
 
ハートセイバーコースは、職業上、蘇生や応急救護を行なう必要がある人向けのプログラム。
 
憲兵隊、つまり警察官はもちろんそれに該当します。
 
講習の最初に、救助者の責任や血液感染への理解や、安全確保についての単元があるのですが、このあたりは日本の講習ではあまり見られない真剣で現実的なやり取りが見られました。
 
「制服を着た憲兵隊である皆さんには、手を出さないという選択肢はありません。そして一定の責任が生じるのです」
 
そんな前置きに大きくうなづく隊員たち。
 
本来のハートセイバーコースはこういうものなんだよなという点に感動でした。
 
 
話は飛びますが、数ヶ月前に、日本の警察官が不適切な応急手当をした結果、低酸素脳症で命を落としたという事件の判決がでました。1億2千万円の賠償金の支払を求める最高裁判決でした。
 
日本の警察官も救急法を勉強していないわけではありません。少なくとも就職直後の警察学校時代にはなんかしらの教育は受けているはずです。
 
しかし、心肺蘇生法は運動スキルですから、使わなければ、もしくは練習をしなければ半年もしたら完全に忘れてしまいます。また救急法の知識もしかり。しかも心肺蘇生法もファーストエイドも5年ごとに見直しが行なわれて、変わっていきます。特にファーストエイドはもともと医学的根拠が少ない分野ですから、5年ごとにころころと変わります。
 
つまり、救急法訓練は定期的にアップデートしなければ使えないのです。
 
もしかしたら、昔の救急法では、けいれん発作を起こした人には口に何かを入れて舌を噛まないようにと教えていたかもしれません。しかし、いま、それは完全に否定されています。
 
昔の知識、今となっては間違った情報を信じて、その通り行なって招いた不慮の事態。加害者にとっても被害者にとっても残念な事態としかいえません。
 
だから、救急法訓練は常に最新のものを受講し、更新し続けなければいけないのです。
 
今回、米国の警察官(憲兵隊)の訓練に立ち会わせてもらって、日本に足りない救命意識、特に職業上の責務としての救護の法制化の意義を改めて考えさせられました。
 
 


災害支援活動のためのファーストエイド・シミュレーション

やや時間が空いてしまいましたが、静岡へのファーストエイドの出張講習に行ってきました。
 
医療系学生サークルの皆さんからの依頼で、災害支援に必要な知識・技術を学びたいということで、傷病者対応コースforバイスタンダーズ、ならびにAHAハートセイバー・ファーストエイドコースを主軸に据え、そこに災害支援の視点を盛り込みつつの独自アレンジ講習を組み立ててみました。
 
静岡も昔から大地震の可能性が叫ばれている地域。
 
いざというときに医療系学生として出来ることはないか? というのがサークルの始まりだそうです。
 
AHAハートセイバーファーストエイドコース自体は、米国の法律に基づいたプログラムなので勝手な改変はできないのですが、コース中に手指衛生を強調する場面がありますので、水資源が限られる被災地での感染対策の具体的な話や、低体温症のセクションでは、帰宅難民になったときの寒さのしのぎ方など、各所で災害をイメージした話題を散りばめました。
 
余談ではありますが、災害支援ではキャンプや登山などのアウトドアの智恵が役立ちます。サークルの皆さん、活動に必要な技術、知識はなにか? という点に渇望されている様子でしたが、最終的には野宿体験をおすすめしました。
 
コース終了後に、こままでの知識を統合しての総合シミュレーション訓練を行いました。
 
場面を「避難所になっている体育館です」と設定するだけで、学生の皆さん、これまでの被災地支援の実体験からイメージを膨らませて、傷病者役の人への情報収集でも気を使っている様子がとても印象的でした。家族歴を取ろうと思ったけど、津波被害のあとで家族のことを尋ねるのがはばかられたとか、入浴などの衛生状態をどこまで聞いていいか、など。
 
医師や看護師のタマゴとして、被災地でできること。
 
私自身、被災地に発災3週間くらいで入って、そこでの活動の難しさを感じました。
 
ましてや、まだ医療資格を持っていない立場で、でも医療を学んでいる身としてなにができるか?
 
それを求める学生の皆さんに対して、私たちは明確なアドバイスやサジェスチョンはできませんでした。
 
しかし、被災地の避難所という場所を設定して、市民としてできるレベルの傷病者対応を模擬的に行う機会を作ることで、そこから自分たちで気付けた部分があったようです。
 
ファーストエイドは、ある意味、地球市民としてのたしなみ。
 
その背後にあるのは人への気遣いです。
 
それをベースとして、医療を学ぶ人としてプラスαの何かができれば、、、
 
私たちもこのような講習展開を組み立てさせていただいて、思いもよらぬ気づき、学びがありました。
 
既成講習の枠に留まらない柔軟さがBLS横浜の取り柄。今後も様々なリクエストに答えていきたいという思いを強めての1泊2日の帰路となりました。
 
 
 

 
 

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保育園に出向いて職員にエピペンを教えるということ

前回、保育園でエピペンの取り扱いを含むアナフィラキシー対応研修をさせていただいた話を書きましたが、その続きです。
 

新タイプのエピペン(成人用、小児用)

 
講習後、園長先生と専属の看護師の方と、今後の保育園としての体制や職員(保育士)への継続教育・訓練について、あれこれお話させていただきました。
 
エピペンの取り扱いを巡っては、マスコミでも話題に上っていますし、こうするべき! というスタンダードなやり方もあまり浸透していない過渡期にある微妙な問題です。
 
園に赴いて研修を行なう以上、エピペンの使い方やファーストエイド対応だけではなく、危機管理体制というシステム作りまで含めてアドバイスをするのが、インストラクターの責務かと思っています。
 
もしかすると、保育園としては、エピペンの使い方を職員に教えてもらう、という以上に、こうしたコンサルティングを望んでいるのでは? というくらいに質問や意見が行きかう濃密な時間でした。
 
保育園でも、ある程度の規模のところには看護師が常駐している場合があります。
 
私が訪問した園もそうでしたが、保育園ナースの方が中心となってアレルギー対策を考え、保育士向け教育を行なっているのが現状ですが、たいてい看護師は一人。
 
相談するところもなく、手探りで苦労されている様子がよくわかりました。
 
保育士に対しては、厚生労働省が出している資料にあるアナフィラキシー症状の「グレード」をベースにした教育体制を考えていたようですが、たぶん、難しすぎます。そこは保育園ナースの方も悩んでいたようでした。
 
そこで、緊急度の判断ということで、AHAのPEARSやPALSの迅速評価の考え方をベースにすることを提案してみたら、手ごたえを感じてくれたようで、次回(3回に分けて全職員に研修をすることになってます)はもう少し詳しくお話させてもらおうと思いました。
 
そこで思ったのは、私も含め、エピペンも含めたファーストエイド講習展開をしているインストラクターのもとにはそれなりに情報が集まってきます。
 
公募講習に参加される養護教諭や同じく保育園ナース、保育士からの相談や現状。親御さんからの意見など。
 
私は保育の現場にいる人間ではありませんが、そうした中にいると見えてくることがあります。
 
知らず知らずのうちに貯まった、そんなノウハウや情報をお話させていただくことで、園としての対策が具体的に見えてきたようです。
 
このようにエピペン講習とその後のコンサルティングなどを含めて、エピペンという器具としては単純な道具について教えることの周辺事情と奥深さを実感した次第です。
 
そしてなにより、こうした相談への対応は私どもインストラクターにとっても、大きな勉強となり、またそれがノウハウの蓄積となり、次につながっていきます。
 
私たちも日々、学ばせてもらっています。
 
 
 

 
 

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エピペン講習のあり方、現場に必要なこと

とある公立保育園からの依頼で、エピペン使用法を含むアナフィラキシー対応研修を行なってきました。
 

エピペン(アドレナリン自己注射器)

 
エピペンの使用法自体はとても簡単です。使い方を教えるだけなら10分もあれば十分です。
 
通常はそこにアレルギーの仕組みや、症状の「グレード」の説明などを加えるのだと思いますが、現場で求めているのは、難しい理屈ではなく、使うにあたっての実際。
 
そこで、インストラクターが模擬患者となって、苦しがっているところに、どのような対応をするか、シミュレーションをしてもらいました。
 
床に倒れている状態で、大腿外側に90度に注射をするのはなかなか難しいです。エピペンは握り方が大事なポイントですが、安全キャップをはずした後についつい持ち替えたくなってしまいます。そこが危険な落とし穴。
 
注射後、数秒、針を押し付けたまま保持しますが、痛がって苦しがって動いている子どもに針を刺し続けるのは難しいです。そこで誰か足を押える人が必要になってきます。
 
注射をしたらおしまいではありません。注射時間の記録、記憶に頼るといかに忘れてしまうか、また症状の観察。救急隊への引継ぎも行なってもらいました。そこで実際なにを観察したらいいのかという問題に直面します。さらには看護という視点で、苦しがっている子どもにどう声を掛けるか? 家族への連絡、119番通報。
 
さらには周りの不安がっている子どもたちをどうするのか? 救急隊がすぐに入ってこられるように門を開ける係など、現場でやるならではのいろんな問題点が見えてきます。
 
いわゆるエピペン講習の目的は何か?
 
講習会場内でエピペン注射ができるようになることが目的ではないはずです。
 
保育や学校現場で、アナフィラキシーショックへのファーストエイドが行なえること。エピペンはその手段のひとつに過ぎず、テクニカル・スキルとしてエピペンが使えればいいという話ではないのです。
 
1時間という講習時間は決して十分な時間とはいえません。しかし、今後、職員がアナフィラキシーという緊急事態に適切な行動ができるようになるためには、どんな要素に対してどんな訓練を続けていけばいいのか、そんな示唆を感じ取ってもらえるような講習展開を心がけました。
 
その保育園では、職員全員に受講させたいということで、あと2回、お邪魔する予定になっています。
 
その後は、保育園の看護師さんが中心となって、定期的に実践的なシミュレーション訓練を続けてくれるのではないかと期待しています。ある意味、インストラクターは救命教育コンサルタント的な役割も意識すべきと思います。
 
エピペン講習の開催希望は、今後、AHAファーストエイド・インストラクターを中心に依頼が増えるのではないかと思います。
 
そんなとき、現場で求められていることは何か? また一回の講習で終わらせるのではなく、今後につなげていく提案が必要な点、ぜひこの機会に伝えたいと思い、記載させていただきました。
 
 


ファーストエイド、救急対応の哲学

先日もFacebookページで書きましたが、医学生や看護学生、さらには現職医療者にファーストエイドを伝える場合、その位置づけというか、基本姿勢をどのように伝えるかが重要だと思っています。
 
PALSやJPTECのような高度な医学的な知識をすでに持っている人がファーストエイドを受けたときに、「こんなもんか」とがっかりする場合があるかもしれません。
 
ファーストエイドはそもそも「医療」ではない「人間としての基礎知識」であるという原点、そして、場所や時代に縛られず、世界中どこでも実践できる身一つでできる価値ある技術・知識であるという点。
 
その原点を知らずに、医術という限定された場でしか使えない高度なことを知るのは、土台がない脆弱なビルのような印象を私は持っています。
 
BLS横浜では、そんな根源的な「生きる力」としてのファーストエイドの魅力を伝えていきたいと思っています。
 
単なる技術、知識伝達ではなく、哲学としてのファーストエイド、です。
 

 

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救命技術は、「積み上げ式」に学ぶもの

救命技術は、「積み上げ式」に学ぶものなのかと思います。
 
特にファーストエイドは、掘り下げるとそのまま医学的判断、医学処置につながっていきます。ですから難しくしようと思えばどこまでも難しくなります。
 
ですから、まずは、命を灯火を消さないために必要な最小限のことをきちんと把握して、そこをベースラインに考えるという思考が重要です。
 
最低限守りたいラインはここで、それ以上のことはおまけに過ぎないという発想です。
 
BLS横浜での教育理念からすると、最低限はCPRです。そして次に上乗せするとしたら、呼吸をしていれば大丈夫、というファーストエイドの基本理解と簡単な気道管理です。さらには、脊椎損傷の可能性とその後の扱いについて。もう一点付け加えるならどんな場面でも使える「看護」という視点。
 
このあたりまでがベースであり、それ以上の細かい話や深い話は、余裕がある人が無理しない範囲で行なえばいいオプションと考えています。
 
医療者向けの外傷コースやPALSのような高度で医学に偏った内容を最初に知ってしまうと、最小限のベースラインが見えずに返って迷走してしまうことがないかな、と少し考えました。
 
医師・看護師など医療のプロでも、現場で出来ることは、基本的に一般市民と一緒です。そんなベースを知った上で、条件が合えば高度な医療も行なえる。それがほんとうの強みなのではないかと思います。
 
 

 

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心停止になってからじゃ遅い! 院内急変対応に本当に必要なスキルとは?

病院内で急変対応研修と思われているBLSやACLSですが、実はこれらは「急変対応」というよりは、むしろ限定的な「心停止対応」です。

患者の様態が変化して命に関わる事態が起きたときの介入が「急変対応」ですが、数ある急変の中でBLS/ACLSは心臓が停まってからの10分間の対応がテーマ。

逆に言うと、心臓が停まってからしか使えない「奥の手」ともいうべき最終手段です。

成人に多い心臓突然死の原因となる心室細動(VF)は、前触れもなくいきなり発生することもあります。そのようなときには絶大な力を発揮するBLS/ACLSですが、必ずしも突然に心停止になるケースばかりではありません。

たとえば、AHA-ACLSプロバイダーマニュアルには次のように書かれています。

「一般に院内心停止には生理的変化の前兆がある。ある研究によると、入院患者の心肺停止では全体の80%近くで実際の心停止8時間前までに異常なバイタルサインが記録された。これらの変化の多くはバイタルサインをルーチンにモニタリングすることで見つけることができる。臨床状態の悪化や素因停止が起こる前に対処できるかもしれない」(ACLSプロバイダーマニュアルG2005版、p.17)

8割は、心臓が停まってしまう前に気づけるはず、予防できるはず!

ご存知のように一度心臓が停まってしまうと、予後はよくありません。

であるなら、心停止以前に介入するべきなのは、自然な流れです。

これまでは、基本中の基本であるはずのBLS/ACLS自体が医療現場に浸透していなかったため、まずはこの標準化から始まりました。

日本に本格的なBLS/ACLSが公式に始まって約十年。

ACLSという言葉を聞いたことがない医療者は、もうさすがにいなくなりました。。

そろそろ次のステップへ、という時代に入ってきています。

心停止の対応は、ある意味簡単です。アルゴリズムにしたがって機械的に行動すればいいレベルまで精錬されています。

しかしそれ以前の急変対応というと、幅が広く、どこまでをどんな視点で含めるか、が、一本化されていないところはありますが、まず抑えておきたいのは次のような図式です。

心停止にいたる原因:呼吸・循環・不整脈

いちばん右の心原性心停止。これはいわゆるBLS→ACLSの流れです。突然起こる不整脈による心停止。

これに加えて、新たに考えたい心停止にいたる要因は、呼吸不全と循環不全(ショック)。

このふたつは予兆があり、悪化の段階があります。

それを早期に気づけば、心停止になるまえに食い止めることができる。

そのために必要なのは、循環不全であるショックと、呼吸不全の兆候と分類、重傷度の鑑別・評価を知っていることと、それぞれの段階での適切な介入=安定化を知っていること。

これは、本来は医療者すべてが知っているべきこと、特にベッドサイドで患者の近くにいる看護師は抑えておくべき基礎的な項目ともいえます。

ここを学ぶのが、患者急変対応コース for Nursesなのです。

実はこのブログエントリーは2011年に書いたものの焼き直し。記憶に残っている方もいたかもしれません。

当時のブログ記事では、非心停止のアセスメントを学べるコースとしてAHAのPEARSプロバイダーコースとPALSプロバイダーコースを紹介しました。特にこの領域で全国的に学べるコースといえばAHA PALSしかなかったということもありまして。

今回、BLS横浜では成人の心停止予防を学ぶ患者急変対応コース for Nursesを開催する運びとなり、今回この記事にとまとめ直しているところです。

患者急変対応コース for Nursesは、実はAHA PEARSを参考にして、大人の急変アセスメントにリメイクしたもの。いわゆる急変状態にある患者の映像を見てもらい、そこから、「なにかおかしい!」という気付きをピックアップ、それを、呼吸、循環、意識レベルに分類して考えていくことで、「なにかヘン!」という直感の中身を分類して、明文化された問題意識につなげる訓練を行います。

患者急変対応コース for Nursesは、病院内を想定したナースのためのファーストエイドコースといっても良いかもしれません。受講条件は基本的なBLSを習得していること。市民向けファーストエイドでもそうですが、いつでも奥の手はCPRができること。これがなくして救急対応はできません。

また逆の言い方をすれば、いくらBLSを習得しても、それだけでは使えないということに気づいたナース向けの実践急変対応講習といってもいいかもしれません。

患者急変対応コース for Nursesで学ぶ内容は、病院の避難訓練のような万が一の備えではなく、日々の看護業務で使える実践技術です。急変のときのみならず、患者の状態を把握する視点を養うプログラムだからです。また、異常事態に気づき、ドクターコースを含め、周りのスタッフに適切に緊急度を伝える能力も養います。

そういった意味で、ベナーの看護論でいうところの、ベテランナースに近づくための能力開発プログラムといっていいかもしれません。

3月30日(土)、BLS横浜としては初めての患者急変対応コース for Nurses公募コースを開催します。

http://bls.yokohama/for_nurese.html

このモニターコースでの結果をもって、今後、BLS横浜のレギュラーコースに加えていくか検討したいと思っています。

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