救命法普及と実行の方略一覧

G2015正式版BLSプロバイダーコースのインパクト

今日は4回目のG2015英語版DVDを使った BLS Providerコース でした。
 
ガラリとコースデザインが変わった新BLSプロバイダーコース。それは受講者さんにもはっきりわかるようで、コース終了後に躍動的な感想をたくさんいただきました。
 
「今までのBLSコースと違って、リアルで現場医療者の食いつきが違うと思う」
「こうしなさい、ではなく、自分で考えて判断することが明確に示されて、すごく納得できるようになった」
「マニュアル化社会の米国人にとってはすごく大胆な方針転換な気がする」
 
など。
 
これまでの「わからなくても体が動けばいい!」という体育会系のノリから、原則を理解して判断して行動することを求める方向へのシフトのインパクトは大きいです。(筆記試験もテキスト持ち込み可になりましたし…。つまり問われているのは暗記ではないということです。)
 
 

G2015英語版BLSプロバイダーコースDVDの映像
▲蘇生科学の「なぜ?」がガッツリ盛り込まれた新BLSコースDVD

 
10分間のチーム蘇生とその後のデブリーフィング。
リアルなシナリオ動画と、あまりにシンプルすぎる実技試験。
 
受講して満足して終わるのではなく、間違いなく、その先の実臨床に視野を持っていく教材設計どおりに進行できると、この影響力は半端ありません。
 
Life is why から始まり、カークパトリックのレベル3(臨床現場での実践)への視座で終わるG2015のBLSプロバイダーコース。
 
つい先日、ようやくBLSプロバイダーマニュアルG2015日本語版が発売されましたが、日本語DVDの発売が未定なので、日本国内でまだ公式にはG2015講習は開けません。
 
このビックインパクトが広がるのはもう少し先になりそうですが、期待大です。
 
 
 
BLS横浜では、受講後2年間は同じコースになんどでも無料で参加できる制度を設けています。
 
今日の受講者さんたちには、日本語版DVDが出たら、必ず復習参加に来てくださいね、と話して終わりました。
そしてカードの有効期限が切れるギリギリ前あたりには必ず来てくださいとも。
 
この新コースの感動をいち早くお伝えし、そしてまた2年間に渡って技術をキープしていただき、より理解を深めていく。
 
そんな連鎖の手応えを感じた1日でした。
 
 

BLSプロバイダーマニュアルG2015日本語版

 
年明け後のG2015正式版BLSプロバイダーコースの開催は、BLS横浜ホームページ をご覧ください。
 
 
 


満足と自信につなげるBLS指導のポイント

G2015における「質の高いCPR」とは、下記のとおりです。
 
・強く押す(成人:少なくとも5cm、小児・乳児:少なくとも胸郭の1/3)
・速く押す(100~120回/分)
・リコイル(もたれない)
・圧迫中断は最小限に(10秒以内)
・胸の上がりが見える人工呼吸を行う(1回1秒)
・過換気を避ける
 
これを技術として身につけさせるのがBLS講習の目標です。そして、コース中のどの場面で、どのポイントを指導するか、という教材設計がしっかりなされているのがAHA BLSコースです。
 
日頃インストラクターコースでお話している内容をすこしご紹介します。
 
 
 
AHA-BLSヘルスケアプロバイダーコース(G2010ならびにG2015暫定版)では、練習場面は下記のように進んでいきます。
 
1.胸骨圧迫(30回の圧迫を5サイクル)
2.気道確保+人工呼吸(ポケットマスクを使った換気2回を5セット)
3.胸骨圧迫+人工呼吸(30:2を5セット)
4.評価(反応確認・呼吸確認・脈拍確認を映像に合わせて練習)
 
それぞれの練習の前には、上記の質の高いCPRのポイントがすべてテロップで映しだされます。
 
しかし、まず最初の胸骨圧迫の練習で強調すべきは、3点だけです。
 
「強く、速く、しっかり戻す」
 
これだけに的を絞って指導を行います。
 
余計なことは言わないで、ポイントにフォーカスさせます、
 
 
 
次いで、人工呼吸の練習。ゴールとしてのポイントは3つありますが、順番が重要です。
 
1.胸が挙がる
2.入れ過ぎない(過換気を避ける)
3.1回1秒で、速すぎず遅すぎず
 
最初から過換気を避けることを強調してしまうと、手技に問題があって胸が上がらないのか、吹き込みの量が足りないのか、わからなくなってしまいます。
 
だから最初は、まずは胸が目で見て挙がることに重きをおいた指導を行います。

明らかに吹き込み過ぎであっても、まずは胸が上がったことを認めて、褒めるべきです。そうして安定してできるようになってから、次のステップとして、過換気を避けることや1回1秒ということを追加指導していくとうまくいきます。
 
 
 
胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた30:2の練習の時に強調すべきポイントはなんだと思いますか?
 
もちろん、強く、速く、を引き続き強調してもいいのですが、それはすでに前の練習で習得済みです。この胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせで初めて出てくるのが、「圧迫の中断を最小限に」という項目。
 
ここに着目させてから練習を行うべきです。
 
AHAコースの場合は、ビデオに合わせて練習しますので、ビデオのデモンストレーターが人工呼吸が終わって胸骨圧迫に戻ったら、あなたも途中でも圧迫に戻ってください、という点を伝えます。最初はうまく行かなくても5サイクルもやっていれば、自然と10秒以内で2回の人工呼吸ができるようになります。
 
もちろん、複合練習になっていますから、流れの中できちんと人工呼吸ができるのか、とか、質の高い胸骨圧迫ができているか、というところもポイントですが、そこに拘泥してしまうと、肝心の中断時間を10秒以内に留める練習ができなくなってしまいます。
 
 
 
このように、AHAの講習は、簡単な手技から段階的に習得していって、その組み合わせで自然とできるようになる、ということを狙って作られています。ですから、各ステップの学習目標を理解して、きちんとゴールに到達させてから先に進むことが肝要です。
 
AHAのBLSインストラクターは、その教材の意図を理解して、仕様のとおりに使うことによって最大のパフォーマンスが発揮できるようになっているのです。
 
 
成人学習の動機付けでARCSモデルというのがあります。受講者の注意を引き、関連性や学ぶことの妥当性を提示して、それから満足と自信を得られるように支援するというのがポイントです。
 
いきなりCPRの全体の流れをやらせても、あちこちで引っかかってうまくいくわけはありません。そこを一歩ずつ階段を登るように段階的に指導して、自信を持たせて、最後には、「できた!」という達成感に到達させるような指導方法。
 
それを私たちはAHA教材、特にコースDVDから学ぶことができます。
 
 


心停止認識の評価-意識ではなく反応の確認

昨日、Twitter の上ですこし書いた点ですが、こちらにもシェアしておきます。
 
BLS手順において、「大丈夫ですか?」と尋ねながら確認するのはなんでしょうか?
 
それは「反応」の有無です。「意識」ではありません。
 
英語でいうなら、Responsive であって、consciousness ではありません。
 
英語では、昔から、この単語が明確に使い分けられていますが、日本語になったときには、Responsive(反応)が意識と訳されてしまったり、成書では、反応と書かれているのに、指導員レベルで意識と言い換えられてしまうケースが散見します。
 
 
医療者レベルの理解でいけば、それほど大きな問題はないのかもしれませんが、市民向けのBLS指導ではこの違いをしっかり区別をした方がいいと思います。
 
医療の素養がない一般の人に、意識がないとはどういう状況か、と尋ねてみたら、どんな返事が返ってくるかを考えてみるとわかりやすいかもしれません。
 
例えば、「大丈夫ですか?」と呼びかけた時に、「うーん、、、」とかすかなうめき声をあげただけで、目を開かず、動かなかった、という場合、どうでしょうか? 意識なし、と判断する人が多いのではないでしょうか?

しかし、この状況はBLS手順で言った場合、「反応あり」であって、CPRは適応ではありません。
 
これが、反応でとらえた場合と、意識でとらえた場合の違いです。
 
医療者的に言ったら、JCS300以外はCPR適応外と判断できるかもしれませんが、そういうレベルの話ではなく、救命講習で教わった一般の方たちがどのように理解して、何をどうみて判断して、どう行動するか? という実質的な中身で考えるべきです。
 
ということで、絶対的な間違いとはいいませんが、CPR手順の中で「意識の確認」という言葉を使うのは不適切と考えます。
 
そこで、どのように指導すればよいのかという話になると、私たち指導員が「反応確認」という言葉を正しく使うことと、最初に、「反応」という言葉の概念を定義することが重要です。
 
先日、4月26日にリリースされた最新版の Heartsaver CPR AED Student Workbook の中では、その冒頭の3ページで下記のように定義されています。
 
You should know that during an emergency, it’s possible that someone might become unresponsive. Here is how to decide if someone is responsive or unresponsive.
 
Responsive : Someone who is responsive will move, speak, blink, or otherwise react to you when you tap him and ask if he’s OK.
 
Unresponsive : Someone who does not move, speak, blink, or otherwise react is unresponsive.
 
傷病者を軽く叩きつつ、大丈夫ですか? と声をかけたことに対する「反応」に着目します。その刺激に呼応して、動きや、発語、瞬きなどの目元の動き、その他の反応が見られた場合、「反応あり」つまり、心停止の兆候ではない、と考えます。
 
これを簡略化して「動きの有無」としてしまうと、正しくはありません。あくまでもこちらからの刺激に対する反応として動きがあるかどうか、です。
 
反応とは関係のない痙攣や死戦期呼吸のような「目的のない動き」を除外するためです。
 
疑わしければ胸を押せ、という原則からすれば、先ほど上げたようなケースで胸を押すということは間違いではありませんが、指導指針の中で、きちんと意識と反応を区別して、弁別の閾値が設定されているわけですから、少なくとも指導員レベルでは、この点はきちんと認識したいところですね。


BLSコースにおける真正性の課題

ガイドライン2015版のBLSプロバイダーコースDVDを見て感じる点ですが、現場での判断力を養うためには、講習の中でも「
真正性」を追求していくことが重要と思います。
 
例えば、BLSマネキンや模擬患者相手に練習をしているときに、「大丈夫ですか?」と受講者が反応確認をした際に、インストラクターは「意識はありません」と言ってしまう場合があります。

この場面で教育すべきは、反応があるかないかを弁別して、それぞれのときにどう行動するかを決定する能力を養うことです。
 
「意識がありません」とインストラクターが言ってしまうと、受講者から、自分で反応の有無を判断するのだという思考回路を閉じてしまうことになります。
 
BLSマネキンは、単純な人形ですから、反応がないに決まっています。だから、単純なマネキン相手に反応確認を練習させるのは、基本的に無理です。1千万円近くするような、反応を示すというパターンを再現できる高規格のマネキンを使う必要が出てきます。
 
こう考えると、BLS講習のハードルは上がりますが、そこまでしなくてもイマジネーションに働きかけるような講習展開である程度はカバーできるかもしれません。それが今回のG2015版BLSプロバイダーコースDVDに出てくる数々のリアルなシチュエーションのデモ映像なのでしょう。
 
さらに言えば、そういった映像に頼らなくても、受講者が自身の経験の中から想起できるようなストーリーを語り、イメージをもってもらってから練習を行うというやり方もあります。
 
または、もっとシンプルにはインストラクターが模擬患者として演技をすればいいのです。顔色や心拍のコントロールはできませんが、反応の有無や呼吸の有無に関して言えば、パーシャルタスクにはなってしまいますが、マネキンよりはマシなトレーニングができるのではないでしょうか?
 
BLSマネキンには限界がありますが、それをどう認識して、別の方法でカバーしていくか?
 
それがG2015時代のインストラクターに求められる工夫ではないかと思います。
 
 


普通救命講習III 子どもの救命講習を依頼するときのポイント

ガイドライン2010で、日本の蘇生ガイドラインでは、”ユニバーサル化”されて、子どもの特性を踏まえた蘇生法は、大人の蘇生法に吸収されてしまいました。

これにより、旧来あった子どもの蘇生法は一般市民には教えないことになったのが現実です。

しかし、子どもの救命法を必要としている人達、例えば保育士、小学校教諭、児童施設の職員、思春期未満の子どもを持つ親御さんたちはどうしたらいいのか? ということで、日本版JRC蘇生ガイドライン2010では次のように勧告しています。

「市民のうち小児にかかわることが多い人、すなわち保護者、保育士、幼稚園・小学校・中学校教職員、ライフセーバー、スポーツ指導者などは、小児BLS(Pediatric Basic LifeSupport:PBLS)ガイドラインを学ぶことを奨励する。医療従事者が小児を救助する場合はPBLSに従う」

わかりにくい表現ですが、簡単にいえば、子どもの救命法を必要としている人は、医療従事者と同じ「子どもに特化した蘇生法」を学ぶことが勧められている、ということです。

そのPBLSを学ぶ機会として提供されたのが、総務省消防庁のプログラム「普通救命講習III」です。(ちなみに消防の講習で、一般に開催されているのが普通救命講習Iです)

全国的に、小学校や保育園が地元の消防本部にお願いして、職員向け救命講習を開催しているところは多いと思いますが、その場合、必ず「普通救命講習IIIをお願いします」と伝えることが大切です。

ここをはっきりさせておかないと、普通救命講習Iを開催されてしまいます。

蘇生ガイドラインに書かれている通り、学校教職員・保育士向けとしては適切ではありません。本当はこのあたりは依頼を受ける側(消防側)が、きちんと判断してコンサルとしてほしいところですが、現実、そういう動きはあまりないようなので、発注する側がきちんと確認をしましょう。

普通救命講習IIIは、消防職員(応急手当指導員)も教え慣れていないことが多いため、内容をきちんと把握していないこともあるようです。

そこで、依頼段階で下記の点を確認しておくことといいかもしれません。

・成人マネキンではなく、小児マネキンで練習がしたい
・乳児マネキンを使って乳児の蘇生法も学びたい(保育園の場合)
・大人の蘇生法との違い(人工呼吸の大切さ)を強調してほしい

依頼する際には、学校、園側としても、JRC蘇生ガイドラインの勧告を一読して、内容をある程度把握しておくことをおすすめします。

JRC(日本版) ガイドライン2010(確定版)のダウンロード
http://www.qqzaidan.jp/jrc2010_kakutei.html

上記ページからPDFでダウンロードできる「小児の蘇生(PBLS、PALS)」の6ページです。

場合によってはこの部分をプリントアウトして、打ち合わせの時に提示してもいいかもしれません。


救命法普及のためのPR戦略 その2 ネット編

前回に引き続き、今日は、救命技術の普及啓蒙の手段としての、インターネットの活用に関する話です。
 
昔は、なにかイベントを開こうと思ったら、その告知はタイヘンでした。チラシを作って、公共施設に置いてもらったり、各家庭に配ったり、はたまた新聞や雑誌に載せるには莫大な費用がかかったり、、、
 
その点、今はインターネットを使えば、ほとんど費用をかけずに告知・宣伝活動ができるので本当に便利な時代になりました。特に、今はソーシャルネットワークサービス(SNS)と呼ばれるシステムが充実していますので、その気になれば、一流企業に負けないくらいの”宣伝”ができます。
 
これを利用しない手はありません。
 
SNSもたくさんありますが、BLS横浜が活用しているのは、FacebookとTwitterが中心です。
 
その他、ホームページとブログ・サイトがあり、このふたつが母艦となり、FacebookとTwitterは拡散ツールというか、補助的な使い方です。
 
BLS横浜は、ファーストエイドやCPRの講習を開催しています。この”イベント”の企画と告知、募集はホームページで行なっています。その告知ツールとして、FacebookとTwitterが大きな役割を果たしています。
 
ある日、ホームページを更新して新しいイベントを発表しても、そんなに毎日ホームページをチェックする人はいませんから、あまり目立ちません。しかし、FacebookやTwitterは毎日チェックする方が多いので、そこでホームページへのリンクを含めた告知を流すことで、最新情報が一気に広まります。
 
この役割に置いて、FacebookとTwitterは優劣は特にありませんが、特徴がすこし違うのは把握しておいたほうがいいかもしれません。
 
「Twitterの情報はすぐに埋もれていく」
 
Twiiterは140字という字数制限がある分、気軽に書けます。故に全体的に投稿数が多いです。人によっては数千人の人をフォローしている人もいますので、たまたま見ているときに投稿がないと、わざわざ半日も前の文章を追いかけて読んでくれる人はいません。
 
ですから、Twitterを使う場合は、ひと目につく時間帯を意識して情報発信することが大切です。
 
Facebookに関しては、見ている人のタイムラインに情報が流れるタイミングは一定ではないようです。またトラフィック数もTwiiter程ではないので、比較的時間は気にせず、投稿して大丈夫な印象です。
 
 
このように、本家のホームページで一次告知媒体として、そこへの入り口としてSNSを活用する。
 
これがインターネットを使ったPR方法の基本です。
 
 
次に考えたいのは、フォロワーの数。
 
告知を幅広く見てもらい、周知の範囲を広げるのは、Twitterであれば、「フォロー」してくれるフォロワーの数、そしてFacebookでは「いいね!」を押してくれて、投稿を定期購読してくれる人の人数が重要です。
 
購読者数を上げるために必要なことは、ずばり「良質な情報の提供」、それを継続的に続けることです。
 
救命講習の開催情報の告知、それ自体、ある意味、社会活動なのですが、営利企業に置き換えると、それは宣伝戦略です。売り込みばかりしている企業は嫌われます。
 
つまり、講習情報以外でも、そのアカウントからの情報発信を受け取ることで、メリットがあるかどうかが大切なポイントとなります。
 
その点、BLS横浜は、なにも救命講習の参加者を増やすことが目的ではありません。救命に関する知識・技術の普及が目的。そのひとつとしてFace to faceの講習会があるというだけです。
 
質を大切にしていますので、大規模講習はあまり開催しません。1回の参加者はせいぜい10名以下。
 
となると、私たちが直接、技術を伝えられる人は非常に限られます。
 
だからこそ、知識や情報の拡散という点では、講習会に人を呼びこむことより、インターネットでの情報発信を最重要ツールとして活用しているのです。
 
もしBLS横浜が、講習会に人を誘導するためだけにインターネットを活用しているとしたら、ここまで積極的な情報発信はしません。正直、こまめな更新には労力も時間もかかるからです。
 
情報発信自体が、講習会を開催するのと同様、重要な価値がある行為と考えているからこそ、ブログ、Facebook、Twitterと、それぞれの特性に合わせた情報発信に力を入れています。
 
もしかすると、こうしたスタンスが、しばしば類似他団体と違うと皆様に感じてもらっている部分なのかもしれません。
 
 
最後にまとめです。
 
1.インターネットやSNSを活用しない手はない
2.情報は惜しみなく出す
3.売り込もうとしない
4.すぐに結果はでない。継続が大切
 
 
 


救命法普及のためのPR戦略 その1

最近、救命法普及のためのPR戦略について、よくお問い合わせをいただきます。
 
なかなか一言で説明できるものではないのですが、参考までBLS横浜の活動方針とやり方を中心に書いてみようと思います。
 
BLS横浜の啓蒙活動や、講習会の告知、申し込みはほぼ完全にインターネットで行っています。
 
これはスタッフがすべて本業の傍らで活動しており、電話対応ができないためです。専任の事務員はいません。
 
そこで、ホームページ、ブログ、facebook、Twitterを使って情報発信し、メールを中心にやり取りをし、ホームページで申し込み受付をしています。
 
この方法は、初期投資もほとんどなく、誰でも始められて、やり方しだいでは効果が大きいのが最大のメリットですが、最大の欠点は、インターネットを利用していない人には、まったくアプローチできないという点です。
 
地元、横浜では、消防の外郭団体が普通救命講習を積極的に開催していて、市の広報などで告知、電話で申し込みを受けていますが、そちらとはきっと受講者層がまったく違っているはずです。
 
BLS横浜の講習では就労年齢以上の方の参加はほとんどありません。
 
また、インターネットのみでの告知の問題点は、「関心がある人の目にしか触れない」、ということです。
 
市や県の広報に載ったり、チラシを配る、など、不特定多数へのPRを行わない限りは、この点、限界があるでしょう。
 
この点をある程度カバーする方法として、誰でもすぐにできるのは、公民館やボランティアセンターなどにチラシをおいてもらったり、掲示を行うという方法です。
 
このように、活動をPRしたい対象群に合わせて、宣伝戦略を考え、最適化していくことは必要です。
 
次回、BLS横浜が力を入れているインターネットを活用したPR法について、もう少し詳しく説明しようと思います。
 
 
 


「助ける?助けない?何をする?」― 応急救護の選択

応急救護に関して、「助けない」という選択肢があると公言することに関してご意見をいただきました。
 
手当を必要とする人が、手当を受ける機会を失することが無いような指導をお願いしたいという趣旨で、あえて、「助けない」という選択肢の存在を強調することを危惧するご意見でした。
 
確かにTwitterという140字という文字制限がある中での発言としては、部分的に切り取られると、真意が伝わりにくく、不用意であったと反省しております。
 
そこで改めて、「助けない」という選択肢の意味について説明させていただきたいと思います。
 
なお、ご指摘を受けた文章の全文はFacebookページのこちらに掲載されています。Twitterではこの文章を5分割して投稿しました。当該ツイート部分だけ、一人歩きを避けるという点で、削除しています。
 
 
まず、根本として理解していただきたいのが、BLS横浜は蘇生ガイドライン2010のコンセプトを受け継いで、心肺蘇生法講習をゼロから見なおした、という点です。
 
ガイドライン2010はこれまでにない画期的な内容です。これまで、こうすべきという蘇生科学上の理想に重きが置かれがちだった心肺蘇生法に「実行性」という、現実主義が持ち込まれたからです。
 
このことは心肺蘇生法の国際コンセンサスCoSTRに、EIT(education, implementation and teams)という新しい章が作られたことからもわかります。日本版蘇生ガイドラインでも「第七章:普及・教育のための方策」として採用されています。
 
例えば、誰もが心配する「胸を押したら骨が折れるんじゃないか?」という懸念。

それに対する答えを科学的に導き出して、迷ったら胸を押せという方向性を支持しています。

一方で、これまでとかく市民向け講習では、難しいとか、生々しすぎるという理由で言及が避けられがちだった死戦期呼吸に関しても、指導の必要性が強調され、映像教材の使用についても推奨されています。
 
あとは、「楽しく学びましょう!」とガイドライン2005以降の風潮に相対するかのように、CPRは肉体的にもハードな運動である点を講習の段階で伝える必要性が言及されています。

その結果、例えばAHAのBLSヘルスケアプロバイダーコースでは、胸骨圧迫練習はすべて5サイクルさせて、”ハードさ”をあえて体感させるような教材設計に変更されました。(結果、手の皮がむける人が続出していて、講習には絆創膏が欠かせません)
 
このように、これまでは、一般市民にとっては絵空ごとに近い観念的な学習体験であった救命講習にも、現実さが求められているのがガイドライン2010時代の蘇生法講習の在り方です。
 
そこで、BLS横浜では抜本的に講習を見直しました。変更点をあげたらキリがないのですが、例えば、、
 
・マネキン相手では呼吸確認練習はできない → 生身の人間で「呼吸あり」状態を認識する訓練
・「あなた119番!」では通報してくれない → 119番通報練習
・「周囲の安全ヨシ!」では、安全確保ができない → 具体例を示し、安全確認と安全確保の違いを理解してもらう
・一人では救助活動はできない → 周囲の人との協同、役割分担を体験、練習
 
といった工夫をしています。これらはできるかぎり、シミュレーションの中で、受講者自ら気づいてもらえるように務めています。
 
このように「現実」にフォーカスすると、さまざまな問題が浮上してきて、複雑な感情が沸き上がってきます。
 
現実問題、路上で膝をついてCPRをすれば、ズボンは汚れますし、女性でストッキングだったらボロボロになります。(女性研修医の救命事例の報道でそうものがありました)。また、とある有志の実験として1時間路上でCPRを続けたら膝から流血したという報告もありました。
 
ましてや、とかくありがちな交通事故の対応の場合、救助者に駆け寄る前にしなくてはいけない点がたくさんあります。傷病者の安全よりは、周りの人たちの安全ですし、なにより自分自身の安全。
 
救命講習を受けていて、救命スキルが心得がある方は、とかく要救助者に目が向きがちですが、要救助者の優先戦順位は最下位です。多くの状況では、安全確保だけで手一杯、さらには周りの人の安全配慮だけで終わってしまう場合が多いです。救命講習の場面のように、要救助者に取り付ける場面は現実、あまり多くありません。
 
高速道路の事故などを想像してもらえば、理解しやすいと思います。この場合、車外に出て救助に向かうのはNGです。バイスタンダーとして出来ることは、道路公団や警察に通報すること。これが最大のファーストエイドです。さらにできることと言ったら、それが適正かはわかりませんが、安全な路肩から発煙筒を投げて、後続車への注意喚起をするくらいでしょうか。
 
このように、安全確保には明らかな優先順位があるのです。
 
自分 → 仲間 → 周りの人 → 傷病者
 
こうした現実問題に触れると、何がなんでも助けるべき、という考え方には自然となりません。
 
新聞や雑誌の見出しで、「レスキュー隊、決死の救助活動!」みたいな見出しが踊ることがありますが、決してそんなことはありません。危機管理のプロは勝算がある管理された行動しかしません。なにが危険かを判断し、それを回避しつつ助ける準備と公算があるから、救助に向かうのです。もちろんリスクはありますが、少なくとも命がけではありません。
 
ですから、当然、準備が整うまでは救助には向かいません。
 
海で沖に流された人がいて、先に救急車が到着しても、救急隊員が海に飛び込んで助けるということはあり得ません。ボートなり、水難救助の訓練を受けた人が来るまでは、残念ながらなにもできないのです。
 
これはまさに、「助けない」という選択です。
 
 
こうした現実を救命講習の中で考えてもらうことは、「手当を必要とする人が、手当を受ける機会を失する」問題ありな指導なのでしょうか?
 
安全にできることだけをする、それが私たちが伝えたい最大のことです。
 
CPRは現実、それなりのリスクがあります。精神的なインパクトは大きく、ほぼすべての人が多かれ少なかれ、心的外傷を受けます。
 
自信がない人は、あえて手出しはせず、119番通報し、人を集めるだけでも、それは立派な救助活動です。
 
そこで、自分の手ですぐにCPRを開始しなかった、ということが返って自責の念として後遺症となる可能性もあります。そういった方は、自信がつくまで訓練してほしいと思います。
 
ですから、プロのための講習(BLSプロバイダーコースハートセイバーCPR AEDコース)では、一人一体のマネキンを準備して練習量を多く取っていますし、その後、無料の復習参加の機会を提供しています。躊躇することがないように、後悔することがないように、いつでも感染防護手袋を持ち歩くことの大切さも強調し、ファーストエイド講習ではニトリル手袋を配布しています。
 
どこまで介入するかは、救助者ひとりひとりの訓練と準備の程度によってまったく違うのです。
 
これをしなくちゃいけない、という決まりは、対応義務のある人(医療者、学校教職員、警備員、スポーツインストラクター等)以外はありません。対応義務があり、準備をしていても、現実100%のことは難しいでしょう。
 
無理なくできる範囲でやればいいし、そもそも自分の心と体、さらには付随して自分の家族を守る上で必要があれば、あえて見て見ぬふりをするのも選択肢のひとつです。(できれば119番だけでもしてくれると嬉しいですが、それですら難しい精神状態も理解できます)
 
そうしたあらゆる選択肢を持った上で、できれば、すべての人に適正な訓練と準備をしてもらい、いつでも積極的に行動ができるようであってほしいと願っています。
 
東日本大震災のときに、世界的にも稀有といわれる日本人の善良さがクローズアップされました。日本人は助けたいという思いを潜在的に持っている。だからこそ、安全認識を正しく持ち、救助者と救助者の家族が不幸な目にあってほしくないのです。
 
少なくとも私たちは闇雲に、受講者の恐怖心を煽るような講習はしていませんし、無関心を増長するような講習展開もしていません。
 
もし救急法指導にあたる立場の方で、疑問に感じる方がいましたら、見学参加ウェルカムです。
 
見てもらった上で、直接ご意見いただけるとうれしいです。
 
 


見ず知らずの人を助けるモチベーション

今募集中の「効果的な心肺蘇生法指導の方略~成人学習理論を活用する」ワークショップとも関わる話ですが、救命講習をはじめ、大人に対して教育を行う場合、動機付けやモチベーションが大切です。

というより、学ぶ動機付けがされていない研修は効果がなく、失敗に終わります。職場内での強制参加の研修でそんなことを感じたことありませんか?
 
救命講習も、それが受講者が求めていることに合致しているかが問題です。
 
「博愛の心で勇気を持って!」というスタンスの教育が、例えば警備員や学教教職員、保育士の救命教育に適しているとは思えません。
 
また、病気がちな家族がいて、そのいざというときに対応したいのか、それとも本当に博愛心から人のためになりたいと思っているのか、それによっても学ぶモチベーションはだいぶ違います。
 
こう考えると、「家族や身近な人を助けたい」「業務上の対応義務」といった動機は明快で、教える上でのスタンスも明確です。

家族を助けるという前提なら、感染防護に割く時間があれば口対口人工呼吸を教えますし、業務上の対応義務があるなら、隣人愛云々ではなく、義務と責任を強調し、それに見合った練習量と感染対策が必要となります。
 
そしていちばん難しいのが博愛精神や隣人愛から、通りすがりの他人を助けることにフォーカスしている人たち。この場合、教える側がどのようなスタンスで教えるのかは非常に悩むところです。
 
というのは、救命や事故対応の現場は、テレビドラマのようなキレイ事だけではないからです。たいへん危険なリスクが伴います。

そんなとき、家族であれば多少のリスクには目をつぶってでも助けるでしょうけど、赤の他人に対してどこまでのリスクを負う覚悟があるのか?

そんな現実と考えると、恐らく受講者さんが頭に思い浮かべているのも現実との乖離を伝え、後悔しないような判断ができるような支援を行うのが、通りすがりのバイスタンダーとしての救命法の指導法ではないかと思うのです。
 
そんな考えから、救護義務でもない、家族相手でもない、第三者に対する義務のない蘇生や救護を行う人にフォーカスをしたCPR&ファーストエイド講習が、「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」です。ここには日頃考えることがない救命とは何なのか? そんな哲学も含んでいます。
 
助けにいくのか、行かないのか? その選択から始まるのです。
 
助けるべき、というのは、対応義務のある人、もしくは家族や親しい人を助けるときだけの論理であって、それ以外では助けにいかないという選択肢もあるのです。薄情に思えるかもしれませんが、それが現実です。
 
気になった方は是非、「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」、参加してみて下さい。
 
 


傷病者対応コース at サイクルショップ

今日は、東京の国立駅ちかくのサイクルショップからの依頼で「傷病者対応コース」を開催してきました。
 
こちらのお店は自転車販売だけではなく、ロードバイクやマウンテンバイクの初心者向け講習会やツアーを開催していて、お客さんがもしもの時のために、ということで、BLS横浜オリジナル講習「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」をご指名いただき、お邪魔したという次第です。
 

傷病者対応コースforバイスタンダーズ

 
 
傷病者対応コースは、私たちが勝手に「Neo普通救命講習」とも位置づけている新しいコンセプトの救命講習です。
 
お作法ではない「使える技術」を実践的に身につけてもらうにはどうしたらいいか? をテーマに、いわゆる心肺蘇生法講習をブラッシュアップして、より現実的な対応を追加したもの。
 
具体的には、心臓が止まっていなかった場合の対処の仕方、つまりファーストエイドのエッセンスを盛り込みつつ、3時間半程度に抑えた点が、これまでにない新しさです。
 
さらに、簡単な傷病者アセスメントから、命に関わる優先順位を考えて処置していくこと、医学的処置だけではなく看護の大切さ、緊急通報の実際、安全確保の実際などをシミュレーションベースで考え、身に付ける3時間半のプログラムです。
 
もちろん内容はすべてにおいてガイドライン2010の意思をくみ、implementation、つまり実際にできる現時的なことだけに絞り込んでいます。理想論だけの講習からの脱却を目指して。
 

傷病者対応コース、最初は基本のCPR練習   傷病者対応コース:うつ伏せだったらどうしますか?

 
みなさん、自転車と野外活動の専門家。トラブルに遭遇した経験も多々あり、ファーストエイドの必要性を身にしみて知っています。シミュレーションでも自転車事故を想定することで、臨場感を持って救急対応を考えていただけたようです。
 
自転車全般に言えることかもしれませんが、特に山道を走るようなマウンテン・トレイルでの自転車事故といえば、やはり気になるのは背骨(脊椎)。
 
ということで、質問や実体験も多く、脊椎損傷の可能性に関する部分で盛り上がりました。普段はあまりやっていないのですが、うつぶせ状態から、脊柱をひねらないように仰向けにするログロールも体験してもらいました。
 

傷病者対応コース:119番通報練習も大切!        傷病者対応コース:頚椎保護とログロール

 
日頃は公募講習で、Bystander(バイスタンダー=その場に居合わせた人)という共通項で進めていくことが多いのですが、このような場面・目的がはっきりした集団からの依頼講習だと、目的を絞って、よりリアルに実践的な学びの場を作ることができます。
 
一般的な心肺蘇生法や救急法の公募講習に参加しても、そこから実りの多い実践的な学びを得ることは難しかったでしょう。
 
このように目的に合わせて講習をアレンジすることは、インストラクターにとっても貴重な体験となり、今日も新たな発見がたくさんありました。
 
 
 
スポーツインストラクターやアウトドア・ガイドのような職種は、本来は心肺蘇生法や応急手当に関してきちんと研修を受けて、技術を維持していく必要があります。米国ではきちんと法制化されていて、2年ごとに救命講習を受けてライセンスを更新しなければ、就業できないことになっています。
 
日本ではそのような基準がないため、業界ではとかくインストラクター個人として自己研鑽するに任せられているのが現状のようです。
 
その点、今回のサイクルショップさんのように、お店として、きちんとスタッフに講習を受けさせて、危機管理体制をとっているというのは、極めて意識が高く、すばらしいと感じました。
 
私たちも、引き続き、そんな安全・安心な社会作りのお手伝いとして、この傷病者対応コースを広めていきたいと思っています。