救命法普及と実行の方略一覧

日本で混在する2つの蘇生ガイドライン(JRC/AHA)の謎

先日、2月18日に実施された第108回看護師国家試験のBLSに関する出題を巡って話題になっているようですね。

正解は開示されていないので予想の域を超えませんが、AHAガイドラインとJRCガイドラインの違いをついた絶妙な出題だったとの見方もあるようです。

この件で、2つの蘇生ガイドラインの混在、という日本国内に潜んでいた問題が浮き彫りになったのは間違いないようです。

そこで今日は蘇生ガイドラインの成り立ちについて解説します。

「国際ガイドライン」というものは存在しない

蘇生ガイドラインは国際的なものと思われている節がありますが、実はそうではありません。蘇生ガイドラインは国ごとに違います。

日本の蘇生ガイドラインはJRCガイドラインと呼ばれています。JAPAN Resuscitation Council(日本蘇生協議会)のホームページ から PDF で無料閲覧できるほか、書籍としても出版されています。

一方、BLS横浜でも開催しているAHA講習は、American Heart Association が作ったアメリカ合衆国の蘇生ガイドラインに準拠した講習プログラムです。

現実問題、日本国内で開催されている医療従事者向けの救急対応訓練のほとんどはAHAのBLSとACLSであり、日本の医療者の多くがJRCガイドラインではなく、AHAガイドラインで学んでいるというのが現状です。

つまり、日本国内では2つのガイドラインが共存しているという不思議な現象がおきています。

国際コンセンサスと各国ガイドラインの成り立ち

国際ガイドラインなるものは存在しないと書きましたが、国際コンセンサス CoSTR と呼ばれるものはあります。

これは、国際蘇生連絡協議会という、各国の蘇生委員会が集まる国際会議で決められる合意事項、ガイドラインの骨子となるエビデンスに基づいた勧告です。

この国際会議で5年毎に国際コンセンサスが改定され、それに基づいて各国が自国用の蘇生ガイドラインを作るのです。

日本のJRCの場合、国際コンセンサスとガイドラインがほとんど同じ部分もあったりするのですが、基本的には国際コンセンサスとガイドラインは別ものです。

コンセンサスはエビデンスに基づいた国際合意ですので、基本的にはエビデンスがないことに関しては記載がありません。

しかし、エビデンスがないといっても対応ルールは作らないと臨床では動けない。

そこでエビデンスがない、もしくは弱い、などでコンセンサスにない部分は各国が自国の事情に合わせて穴埋めする必要があります。

そうしてできたのが国ごとの事情が加味された各国ガイドラインです。

ですから、エビデンスが強い部分については、国が違っても大きく変わることがない場合が多いのですが、エビデンスが低い部分ほど差異ができやすいともいえます。

日本においては、JRC蘇生ガイドラインとAHAガイドラインが共存しており、内容は大筋では変わらないのですが、例えば呼吸確認の方法のようなエビデンスデータがないことに関しては、ちょっとした違いが出ています。

こうした違いがあると、どっちが正しいの? という議論になりがちですが、医学的な視点で言えばどっちでもいいというのが答えでしょうし、国の基準という点で考えれば、日本国内ではJRCガイドラインを優先すべきなのは言うまでもありません。

医療従事者国家試験においてはJRCガイドライン

医学的にはどっちでもいいところなので、治療方針に関して裁量権を持った立場である医師は自由に判断します。

その他の医療スタッフに関しては、ガイドラインの更に先にある病院内の対応マニュアルや方針に従った行動を取るべきでしょう。病院としてAHAガイドラインを採用しているであればAHAでいけばいいし、JRC準拠ならJRCといった具合です。

 

さて、今回の話の発端は看護師国家試験でした。

日本国の国家試験ですが、この場合、JRCガイドライン準拠で考えるべきでしょう。いくら巷でAHAガイドラインが優勢であったとしても日本がアメリカのガイドラインに従ういわれはこれぽっちもないわけですから、頭をJRCに切り替えないといけません。

今回の国家試験問題で医療関係者がざわついているのは、AHAガイドラインで考える故に迷路にはまり込んでいたり、そもそもガイドラインが複数あって自分が知っているものと国試で求めているものが違っていたという衝撃のようです。

ここは後で論じますが、日本の蘇生教育を考える上では、大きな落とし穴であり、学校教員や救命法のインストラクターの指導姿勢にも課題があることが露呈したのではないでしょうか?

臨床的には、つまり医学的にはどちらでもいいわけですが、医療系学生の国家試験対策としては、JRCとAHAの違いを認識して、学校の授業などはJRC準拠でいかないといけない、というなのでしょう。

なぜ日本では2つの蘇生ガイドラインが混在しているのか?

さて、今回の看護師国家試験で露呈した日本における蘇生ガイドライン混在の問題ですが、なぜこんなことになってしまったのでしょうか?

歴史的な推移を見ると仕方ない部分はあるのかもしれませんが、現状として、日本の蘇生ガイドライン準拠の講習が展開されていない、というのが問題の根源です。

日本には日本独自のガイドラインがあるのに、それに基づいた医療者向け講習会となると極めて限定的なのが現状です。

日本救急医学界のICLSが、JRCガイドライン準拠の医療従事者向け救命処置研修ですが、公開講座としてはあまり開講されず、ディレクター資格を持ったドクターが院内研修としてやっていることが多く、つてのない一般医療者が救命処置を学ぼうと思ったら、地域でオープンコースを開催しているAHAトレーニングサイトに頼るしかないのが現状です。

本稿ではこれ以上は言及しませんが、ガイドラインだけがあっても、それを普及するための媒体や手段がセットで用意されていないと、現実的な運用は難しいようです。

一方、市民向けの救命法教育で言えば、消防も日本赤十字社といった組織だった普及団体があるため、ほぼ完全にJRCガイドライン準拠で固まっているわけで、組織立った教育普及の重要性は明らかです。

せっかく立派なガイドラインがあるのに、それが広まらず、国家試験にも影響している現実、大きな課題です。


幼稚園の救命講習 親向けと教職員向けの違い

先日、横浜市内の幼稚園で親御さん向けに「子どもと赤ちゃんの救急蘇生法」講習を開催させていただきましたが、同園では去年8月に教職員向けの「小児BLS&エピペン研修」を開催しました。
 

BLS横浜オリジナルの子どもCPRとファーストエイドのアルゴリズム

 
小児マネキンを使って、こども(1歳〜思春期まで)のCPRを教えるという点では同じですが、先生向けと親御さん向けで同じ展開をしたわけではありません。
 
それは幼稚園の先生と親御さんでは、立場がまったく違うからです。
 
例えば人工呼吸の方法が違います。
 
親御さん向けにはマウスtoマウスの人工呼吸を指導しますが、幼稚園の先生向けにはポケットマスクを使った人工呼吸で練習してもらいました。
 
唾液などへの接触によって病気が感染するリスクは高くはないとは言われていますが、子どもとは言え他人に口をつける動作を抵抗なくできる人はいません。
 
子どもの蘇生法では人工呼吸が特に大事と言われていますから、着実に人工呼吸をしてほしいと考えたら、フェイスシールド系のものではなく、やはりポケットマスクです。(園には2つ配備されています)
 
また幼稚園の教職員は、業務中の救急対応を想定していますから、一人法CPRだけではなく、胸骨圧迫の交代の仕方も含めて、二人法CPRの連携についても強調して練習してもらいました。

それに記録をつけておくことも重要ですね。119番通報を声を出して行ってもらうのはもちろん、シミュレーションの最後は、救急隊員への報告をしてもらうことで、時間経過や実施したことをきちんと記録に残すことの大切さを実感してもらえるような展開にしました。

学校で心停止時案ともなれば、その後、報告書をまとめることになります。なので時間記録はとても重要です。ここがはっきりしていないと訴訟に発展したりするのが一般市民とは違うところです。
 
また練習をする上での動機づけも、教職員は「救護義務がある」という点で親御さんとは決定的に違います。
 
いざとなったら救命処置を行わなければならないという責務を負っているのが学校教職員です。
 
ですから、職業意識やプロフェッショナリズムに根ざした動機づけや指導が必要です。中身も形だけの体験学習のようなものではなく、「しっかりと身につける」ためにはある程度の練習量と、それに見合ったマネキン配置、スタッフ配置、そして時間が必要となります。
 
命に関わることをインスタントに終わらせてはいけない、そう考えています。
 
 
同じ幼稚園で、続けて2つの救命講習を企画させていただきましたが、そんな違いについて再認識した次第です。
 
 


最新のAHA-BLSプロバイダーコース、BLS-IFPとBLS-PHPコースの違い

ながらくAHA-BLSとして知られていたBLSヘルスケアプロバイダーコースが、ガイドライン2015改訂に伴い、BLSプロバイダーコースと名称変更され、内容がガラリと一新されました。
 
教材設計的な違いについては、これまでも何度も取り上げてきましたが、今日はシナリオによって2種類の内容が混在していることについて紹介します。
 
すでに日本語化されているBLSプロバイダーマニュアルを見ても、まったくわかりませんが、この新しいBLSプロバイダーコースは、DVD教材の上では、完全に2種類に分けられています。
 
BLS for Prehospital Provider
 
BLS for in facility Provider
 
プレ・ホスピタルという単語は直訳すると病院前。
 
傷病者が医療機関に運び込まれる前に対応する人向けのBLSということです。具体的には救急隊員やプライベートで救急対応する非番の医療従事者、スクールナース(日本で言うと保育園看護師や看護師免許を持った養護教諭)などです。
 
in facilityというのは、あまり馴染みがない単語かもしれませんが、Facilityは施設という意味です。ここでも主に病院を主とした医療施設内で緊急対応する人のことを指しています。
 
つまりざっくり言うと、BLSコースが、病院内対応と病院外対応でわけられるようになったということです。
 
AHAガイドライン2015は、Life is Whyというスローガンに象徴されるように、現場主義が強く打ち出されてます。お作法的に技術を教えるだけでは不十分で、それを現場で使えるようにするためには、応用力を培わなければいけない、という考え方です。
 
そこで、これまではあえて避けてきた現実の複雑な状況判断と意思決定の場面を、リアルなシナリオ動画の中で描くことで、身につけるべき基礎技術と、それを現場で使うために必要なノン・テクニカルスキルの例を提示するようになりました
 
その最大公約数が、病院内での急変対応と、病院外での救急対応の2種類というわけです。
 

AHAガイドライン2015正式版BLSプロバイダーコースのIFPとPHPシナリオ一覧

 
どちらを選んでも実技試験、筆記試験は同じで、学ぶコアコンテンツも同じです。しかし、提示されるシナリオ動画が、病院勤務の医療者と、病院外で活動する救急隊やスクールナース、警備員などで、現場をイメージしやすいように分ける工夫がされています。
 
今後、日本でもこのDVDが日本語化されて、公式開催されるようになったら、公募段階でBLS-IFPコースと、BLS-PHPコースが区別されて募集されるようになるのではないでしょうか?
 
これまで、BLS横浜では、FPとPHPをいいとこ取りををして混在型でコース開催していましたが、4月以降は公募段階で明示していくつもりでいます。
 
 
 

 

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CPRをシミュレーションと振り返りで身につける

2017年度最初の講習は、ハートセイバーCPR AEDコース でした。
 
世界中のAED講習の元祖となったプログラムだけに、基本に忠実なベーシックな内容。
 
その分、時間も短時間で終わりますので、BLS横浜では、いつも最後に受講者に合わせたシミュレーションや、おまけの補講を付け加えています。
 
今日は、受講者さんから、「ポケットマスクの組み立てるタイミングはどうしたらいいですか?」と質問があったので、それをシミュレーションでやってもらい、デブリーフィング(振り返り)で考えてみました。
 
現実問題、日本でよく見かけるレールダル社のポケットマスクは、畳まれたマスクを広げて(これが冬場はけっこう固い!)、マウスピースを取り付ける必要があるので、意外と手間です。慌てるとマウスピースがコロコロと転がっていくし…
 
そもそも傷病者を発見した時点で、Myポケットマスクを持っている人もそう多くはないので、AEDを持ってきたら、一緒にポケットマスクがついていたという方がまだ現実的。
 
ということで、やってみました。
 

AEDと一緒にポケットマスクが届いたシミュレーション

 
1人で胸骨圧迫のみのCPRをしているところ、第二救助者がAEDとポケットマスクを持って到着。
 
そんなとき、さっそく二人は壁にぶつかります。二人が行うべきプライオリティの高い行動はどれか?
 
1.胸骨圧迫継続
2.ポケットマスクを組み立て→人工呼吸開始
3.AEDの電源スイッチを入れて、指示に従う
 
3人目がいれば、また違ってきますが、やるべきことが3つあって、二人しかいなければ優先順位を決断しなければなりません。
 
傷病者の年齢や発見時の状況などで違ってくるので、ここでは答え的なものは提示しませんが、こういうときこそ、シミュレーションでやってみて、振り返って、みんなで考える、という経験学習が重要になってきます。
 
答えを見出す、のではなく、考え方を醸成するような教育アプローチが必要です。
 
この日の午後に開催した 新しいG2015教材を使ったBLSプロバイダーコース では、まさにこうした経験学習とデブリーフィングによる学習が新たな手法として正式に取り入れられています。
 
今までは、ACLSやPALS、PEARS(シミュレーションを省略しているPEARSコースを除く)でのみ、採用されていた教育メソッドが、BLSにまでおりてくるようになったのです。
 
 
いままでは武道の演舞のような、型を身につけ模倣する心肺蘇生法教育が標準でしたが、G2015のAHA-BLSから、心肺蘇生法教育が変わっていきます。
 
 

 

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G2015正式版BLSプロバイダーコースのインパクト

今日は4回目のG2015英語版DVDを使ったBLS Providerコースでした。
 
ガラリとコースデザインが変わった新BLSプロバイダーコース。それは受講者さんにもはっきりわかるようで、コース終了後に躍動的な感想をたくさんいただきました。
 
「今までのBLSコースと違って、リアルで現場医療者の食いつきが違うと思う」
「こうしなさい、ではなく、自分で考えて判断することが明確に示されて、すごく納得できるようになった」
「マニュアル化社会の米国人にとってはすごく大胆な方針転換な気がする」
 
など。
 
これまでの「わからなくても体が動けばいい!」という体育会系のノリから、原則を理解して判断して行動することを求める方向へのシフトのインパクトは大きいです。(筆記試験もテキスト持ち込み可になりましたし…。つまり問われているのは暗記ではないということです。)
 
 

G2015英語版BLSプロバイダーコースDVDの映像
▲蘇生科学の「なぜ?」がガッツリ盛り込まれた新BLSコースDVD

 
10分間のチーム蘇生とその後のデブリーフィング。
リアルなシナリオ動画と、あまりにシンプルすぎる実技試験。
 
受講して満足して終わるのではなく、間違いなく、その先の実臨床に視野を持っていく教材設計どおりに進行できると、この影響力は半端ありません。
 
Life is whyから始まり、カークパトリックのレベル3(臨床現場での実践)への視座で終わるG2015のBLSプロバイダーコース。
 
つい先日、ようやくBLSプロバイダーマニュアルG2015日本語版が発売されましたが、日本語DVDの発売が未定なので、日本国内でまだ公式にはG2015講習は開けません。
 
このビックインパクトが広がるのはもう少し先になりそうですが、期待大です。
 
 
 
BLS横浜では、受講後2年間は同じコースになんどでも無料で参加できる制度を設けています。
 
今日の受講者さんたちには、日本語版DVDが出たら、必ず復習参加に来てくださいね、と話して終わりました。
そしてカードの有効期限が切れるギリギリ前あたりには必ず来てくださいとも。
 
この新コースの感動をいち早くお伝えし、そしてまた2年間に渡って技術をキープしていただき、より理解を深めていく。
 
そんな連鎖の手応えを感じた1日でした。
 
 

BLSプロバイダーマニュアルG2015日本語版

 
年明け後のG2015正式版BLSプロバイダーコースの開催は、BLS横浜ホームページ をご覧ください。
 
 
 

 

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満足と自信につなげるBLS指導のポイント

G2015における「質の高いCPR」とは、下記のとおりです。
 
・強く押す(成人:少なくとも5cm、小児・乳児:少なくとも胸郭の1/3)
・速く押す(100~120回/分)
・リコイル(もたれない)
・圧迫中断は最小限に(10秒以内)
・胸の上がりが見える人工呼吸を行う(1回1秒)
・過換気を避ける
 
これを技術として身につけさせるのがBLS講習の目標です。そして、コース中のどの場面で、どのポイントを指導するか、という教材設計がしっかりなされているのがAHA BLSコースです。
 
日頃インストラクターコースでお話している内容をすこしご紹介します。
 
 
 
AHA-BLSヘルスケアプロバイダーコース(G2010ならびにG2015暫定版)では、練習場面は下記のように進んでいきます。
 
1.胸骨圧迫(30回の圧迫を5サイクル)
2.気道確保+人工呼吸(ポケットマスクを使った換気2回を5セット)
3.胸骨圧迫+人工呼吸(30:2を5セット)
4.評価(反応確認・呼吸確認・脈拍確認を映像に合わせて練習)
 
それぞれの練習の前には、上記の質の高いCPRのポイントがすべてテロップで映しだされます。
 
しかし、まず最初の胸骨圧迫の練習で強調すべきは、3点だけです。
 
「強く、速く、しっかり戻す」
 
これだけに的を絞って指導を行います。
 
余計なことは言わないで、ポイントにフォーカスさせます、
 
 
 
次いで、人工呼吸の練習。ゴールとしてのポイントは3つありますが、順番が重要です。
 
1.胸が挙がる
2.入れ過ぎない(過換気を避ける)
3.1回1秒で、速すぎず遅すぎず
 
最初から過換気を避けることを強調してしまうと、手技に問題があって胸が上がらないのか、吹き込みの量が足りないのか、わからなくなってしまいます。
 
だから最初は、まずは胸が目で見て挙がることに重きをおいた指導を行います。明らかに吹き込み過ぎであっても、まずは胸が上がったことを認めて、褒めるべきです。そうして安定してできるようになってから、次のステップとして、過換気を避けることや1回1秒ということを追加指導していくとうまくいきます。
 
 
 
胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた30:2の練習の時に強調すべきポイントはなんだと思いますか?
 
もちろん、強く、速く、を引き続き強調してもいいのですが、それはすでに前の練習で習得済みです。この胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせで初めて出てくるのが、「圧迫の中断を最小限に」という項目。
 
ここに着目させてから練習を行うべきです。
 
AHAコースの場合は、ビデオに合わせて練習しますので、ビデオのデモンストレーターが人工呼吸が終わって胸骨圧迫に戻ったら、あなたも途中でも圧迫に戻ってください、という点を伝えます。最初はうまく行かなくても5サイクルもやっていれば、自然と10秒以内で2回の人工呼吸ができるようになります。
 
もちろん、複合練習になっていますから、流れの中できちんと人工呼吸ができるのか、とか、質の高い胸骨圧迫ができているか、というところもポイントですが、そこに拘泥してしまうと、肝心の中断時間を10秒以内に留める練習ができなくなってしまいます。
 
 
 
このように、AHAの講習は、簡単な手技から段階的に習得していって、その組み合わせで自然とできるようになる、ということを狙って作られています。ですから、各ステップの学習目標を理解して、きちんとゴールに到達させてから先に進むことが肝要です。
 
AHAのBLSインストラクターは、その教材の意図を理解して、仕様のとおりに使うことによって最大のパフォーマンスが発揮できるようになっているのです。
 
 
成人学習の動機付けでARCSモデルというのがあります。受講者の注意を引き、関連性や学ぶことの妥当性を提示して、それから満足と自信を得られるように支援するというのがポイントです。
 
いきなりCPRの全体の流れをやらせても、あちこちで引っかかってうまくいくわけはありません。そこを一歩ずつ階段を登るように段階的に指導して、自信を持たせて、最後には、「できた!」という達成感に到達させるような指導方法。
 
それを私たちはAHA教材、特にコースDVDから学ぶことができます。
 
 

 

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心停止認識の評価-意識ではなく反応の確認

昨日、Twitter の上ですこし書いた点ですが、こちらにもシェアしておきます。
 
BLS手順において、「大丈夫ですか?」と尋ねながら確認するのはなにか?
 
それは「反応」の有無です。「意識」ではありません。
 
英語でいうなら、Responsiveであって、consciousnessではありません。
 
英語では、昔から、この単語が明確に使い分けられていますが、日本語になったときには、Responsive(反応)が意識と訳されてしまったり、成書では、反応と書かれているのに、指導員レベルで意識と言い換えられてしまうケースが散見します。
 
 
医療者レベルの理解でいけば、それほど大きな問題はないのかもしれませんが、市民向けのBLS指導ではこの違いをしっかり区別をした方がいいと思います。
 
医療の素養がない一般の人に、意識がないとはどういう状況か、と尋ねてみたら、どんな返事が返ってくるかを考えてみるとわかりやすいかもしれません。
 
例えば、「大丈夫ですか?」と呼びかけた時に、「うーん、、、」とかすかなうめき声をあげただけで、目を開かず、動かなかった、という場合、どうでしょうか? 意識なし、と判断する人が多いのではないでしょうか?
しかし、この状況はBLS手順で言った場合、「反応あり」であって、CPRは適応ではありません。
 
これが、反応でとらえた場合と、意識でとらえた場合の違いです。
 
医療者的に言ったら、JCS300以外はCPR適応外と判断できるかもしれませんが、そういうレベルの話ではなく、救命講習で教わった一般の方たちがどのように理解して、何をどうみて判断して、どう行動するか? という実質的な中身で考えるべきです。
 
ということで、絶対的な間違いとはいいませんが、CPR手順の中で「意識の確認」という言葉を使うのは不適切と考えます。
 
そこで、どのように指導すればよいのかという話になると、私たち指導員が「反応確認」という言葉を正しく使うことと、最初に、「反応」という言葉の概念を定義することが重要です。
 
先日、4月26日にリリースされた最新版の Heartsaver CPR AED Student Workbook の中では、その冒頭の3ページで下記のように定義されています。
 
You should know that during an emergency, it’s possible that someone might become unresponsive. Here is how to decide if someone is responsive or unresponsive.
 
Responsive : Someone who is responsive will move, speak, blink, or otherwise react to you when you tap him and ask if he’s OK.
 
Unresponsive : Someone who does not move, speak, blink, or otherwise react is unresponsive.
 
傷病者を軽く叩きつつ、大丈夫ですか? と声をかけたことに対する「反応」に着目します。その刺激に呼応して、動きや、発語、瞬きなどの目元の動き、その他の反応が見られた場合、「反応あり」つまり、心停止の兆候ではない、と考えます。
 
これを簡略化して「動きの有無」としてしまうと、正しくはありません。あくまでもこちらからの刺激に対する反応として動きがあるかどうか、です。
 
反応とは関係のない痙攣や死戦期呼吸のような「目的のない動き」を除外するためです。
 
疑わしければ胸を押せ、という原則からすれば、先ほど上げたようなケースで胸を押すということは間違いではありませんが、指導指針の中で、きちんと意識と反応を区別して、弁別の閾値が設定されているわけですから、少なくとも指導員レベルでは、この点はきちんと認識したいところですね。
 
 

 

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BLSコースにおける真正性の課題

ガイドライン2015版のBLSプロバイダーコースDVDを見て思うことですが、現場での判断力を養うためには、講習の中でも真正性を追求していくことが重要と思います。
 
例えば、BLSマネキンや模擬患者相手に練習をしているときに、「大丈夫ですか?」と受講者が反応確認をした際に、インストラクターは「意識はありません」と言ってしまう場合があります。
この場面で教育すべきは、反応があるかないかを弁別して、それぞれのときにどう行動するかを決定する能力を養うことです。
 
「意識がありません」とインストラクターが言ってしまうと、受講者から、自分で反応の有無を判断するのだという思考回路を閉じてしまうことになります。
 
BLSマネキンは、単純な人形ですから、反応がないに決まっています。だから、単純なマネキン相手に反応確認を練習させるのは、基本的に無理です。1千万円近くするような、反応を示すというパターンを再現できる高規格のマネキンを使う必要が出てきます。
 
こう考えると、BLS講習のハードルは上がりますが、そこまでしなくてもイマジネーションに働きかけるような講習展開である程度はカバーできるかもしれません。それが今回のG2015版BLSプロバイダーコースDVDに出てくる数々のリアルなシチュエーションのデモ映像なのでしょう。
 
さらに言えば、そういった映像に頼らなくても、受講者が自身の経験の中から想起できるようなストーリーを語り、イメージをもってもらってから練習を行うというやり方もあります。
 
または、もっとシンプルにはインストラクターが模擬患者として演技をすればいいのです。顔色や心拍のコントロールはできませんが、反応の有無や呼吸の有無に関して言えば、パーシャルタスクにはなってしまいますが、マネキンよりはマシなトレーニングができるのではないでしょうか?
 
BLSマネキンには限界がありますが、それをどう認識して、別の方法でカバーしていくか?
 
それがG2015時代のインストラクターに求められる工夫ではないかと思います。
 
 

 
 

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普通救命講習III 子どもの救命講習を依頼するときのポイント

ガイドライン2010で、日本の蘇生ガイドラインでは、”ユニバーサル化”されて、子どもの特性を踏まえた蘇生法は、大人の蘇生法に吸収されてしまいました。

これにより、旧来あった子どもの蘇生法は一般市民には教えないことになったのが現実です。

しかし、子どもの救命法を必要としている人達、例えば保育士、小学校教諭、児童施設の職員、思春期未満の子どもを持つ親御さんたちはどうしたらいいのか? ということで、日本版JRC蘇生ガイドライン2010では次のように勧告しています。

「市民のうち小児にかかわることが多い人、すなわち保護者、保育士、幼稚園・小学校・中学校教職員、ライフセーバー、スポーツ指導者などは、小児BLS(Pediatric Basic LifeSupport:PBLS)ガイドラインを学ぶことを奨励する。医療従事者が小児を救助する場合はPBLSに従う」

わかりにくい表現ですが、簡単にいえば、子どもの救命法を必要としている人は、医療従事者と同じ「子どもに特化した蘇生法」を学ぶことが勧められている、ということです。

そのPBLSを学ぶ機会として提供されたのが、総務省消防庁のプログラム「普通救命講習III」です。(ちなみに消防の講習で、一般に開催されているのが普通救命講習Iです)

全国的に、小学校や保育園が地元の消防本部にお願いして、職員向け救命講習を開催しているところは多いと思いますが、その場合、必ず「普通救命講習IIIをお願いします」と伝えることが大切です。

ここをはっきりさせておかないと、普通救命講習Iを開催されてしまいます。

蘇生ガイドラインに書かれている通り、学校教職員・保育士向けとしては適切ではありません。本当はこのあたりは依頼を受ける側(消防側)が、きちんと判断してコンサルとしてほしいところですが、現実、そういう動きはあまりないようなので、発注する側がきちんと確認をしましょう。

普通救命講習IIIは、消防職員(応急手当指導員)も教え慣れていないことが多いため、内容をきちんと把握していないこともあるようです。

そこで、依頼段階で下記の点を確認しておくことといいかもしれません。

・成人マネキンではなく、小児マネキンで練習がしたい
・乳児マネキンを使って乳児の蘇生法も学びたい(保育園の場合)
・大人の蘇生法との違い(人工呼吸の大切さ)を強調してほしい

依頼する際には、学校、園側としても、JRC蘇生ガイドラインの勧告を一読して、内容をある程度把握しておくことをおすすめします。

JRC(日本版) ガイドライン2010(確定版)のダウンロード
http://www.qqzaidan.jp/jrc2010_kakutei.html

上記ページからPDFでダウンロードできる「小児の蘇生(PBLS、PALS)」の6ページです。

場合によってはこの部分をプリントアウトして、打ち合わせの時に提示してもいいかもしれません。

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救命法普及のためのPR戦略 その2 ネット編

前回に引き続き、今日は、救命技術の普及啓蒙の手段としての、インターネットの活用に関する話です。
 
昔は、なにかイベントを開こうと思ったら、その告知はタイヘンでした。チラシを作って、公共施設に置いてもらったり、各家庭に配ったり、はたまた新聞や雑誌に載せるには莫大な費用がかかったり、、、
 
その点、今はインターネットを使えば、ほとんど費用をかけずに告知・宣伝活動ができるので本当に便利な時代になりました。特に、今はソーシャルネットワークサービス(SNS)と呼ばれるシステムが充実していますので、その気になれば、一流企業に負けないくらいの”宣伝”ができます。
 
これを利用しない手はありません。
 
SNSもたくさんありますが、BLS横浜が活用しているのは、FacebookとTwitterが中心です。
 
その他、ホームページとブログ・サイトがあり、このふたつが母艦となり、FacebookとTwitterは拡散ツールというか、補助的な使い方です。
 
BLS横浜は、ファーストエイドやCPRの講習を開催しています。この”イベント”の企画と告知、募集はホームページで行なっています。その告知ツールとして、FacebookとTwitterが大きな役割を果たしています。
 
ある日、ホームページを更新して新しいイベントを発表しても、そんなに毎日ホームページをチェックする人はいませんから、あまり目立ちません。しかし、FacebookやTwitterは毎日チェックする方が多いので、そこでホームページへのリンクを含めた告知を流すことで、最新情報が一気に広まります。
 
この役割に置いて、FacebookとTwitterは優劣は特にありませんが、特徴がすこし違うのは把握しておいたほうがいいかもしれません。
 
「Twitterの情報はすぐに埋もれていく」
 
Twiiterは140字という字数制限がある分、気軽に書けます。故に全体的に投稿数が多いです。人によっては数千人の人をフォローしている人もいますので、たまたま見ているときに投稿がないと、わざわざ半日も前の文章を追いかけて読んでくれる人はいません。
 
ですから、Twitterを使う場合は、ひと目につく時間帯を意識して情報発信することが大切です。
 
Facebookに関しては、見ている人のタイムラインに情報が流れるタイミングは一定ではないようです。またトラフィック数もTwiiter程ではないので、比較的時間は気にせず、投稿して大丈夫な印象です。
 
 
このように、本家のホームページで一次告知媒体として、そこへの入り口としてSNSを活用する。
 
これがインターネットを使ったPR方法の基本です。
 
 
次に考えたいのは、フォロワーの数。
 
告知を幅広く見てもらい、周知の範囲を広げるのは、Twitterであれば、「フォロー」してくれるフォロワーの数、そしてFacebookでは「いいね!」を押してくれて、投稿を定期購読してくれる人の人数が重要です。
 
購読者数を上げるために必要なことは、ずばり「良質な情報の提供」、それを継続的に続けることです。
 
救命講習の開催情報の告知、それ自体、ある意味、社会活動なのですが、営利企業に置き換えると、それは宣伝戦略です。売り込みばかりしている企業は嫌われます。
 
つまり、講習情報以外でも、そのアカウントからの情報発信を受け取ることで、メリットがあるかどうかが大切なポイントとなります。
 
その点、BLS横浜は、なにも救命講習の参加者を増やすことが目的ではありません。救命に関する知識・技術の普及が目的。そのひとつとしてFace to faceの講習会があるというだけです。
 
質を大切にしていますので、大規模講習はあまり開催しません。1回の参加者はせいぜい10名以下。
 
となると、私たちが直接、技術を伝えられる人は非常に限られます。
 
だからこそ、知識や情報の拡散という点では、講習会に人を呼びこむことより、インターネットでの情報発信を最重要ツールとして活用しているのです。
 
もしBLS横浜が、講習会に人を誘導するためだけにインターネットを活用しているとしたら、ここまで積極的な情報発信はしません。正直、こまめな更新には労力も時間もかかるからです。
 
情報発信自体が、講習会を開催するのと同様、重要な価値がある行為と考えているからこそ、ブログ、Facebook、Twitterと、それぞれの特性に合わせた情報発信に力を入れています。
 
もしかすると、こうしたスタンスが、しばしば類似他団体と違うと皆様に感じてもらっている部分なのかもしれません。
 
 
最後にまとめです。
 
1.インターネットやSNSを活用しない手はない
2.情報は惜しみなく出す
3.売り込もうとしない
4.すぐに結果はでない。継続が大切
 
 
 

 
 
 

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