小児救急(P-BLS/FA)一覧

コロナ感染リスクと救命 日本の市民救命法指針が変更されました

2020年5月21日付で、新型コロナウイルス感染症を前提とした市民救命法指針の変更が発表されました。

厚生労働省のホームページで公示されています。

中身は、以前にお伝えした アメリカ心臓協会AHAの市民向けCPR指針 とまったく同じ内容です。

詳細は上記リンクから厚生労働省のウェブに飛び、PDFファイルをご覧ください。

 

人工呼吸省略は、成人心停止のみ。子どもにはやはり必要

要点をまとめると、下記のとおりです。

新型コロナウイルス感染症を踏まえた市民救命法のポイント

  1. 胸骨圧迫によりエアロゾル(ウイルスなどを含む微粒子が浮遊した空気)を発生させる可能性がある
  2. 新型コロナウイルス感染症が流行している状況においては、すべての心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応する
  3. 胸骨圧迫を開始する前に、傷病者の口と鼻に、ハンカチかタオルをかぶせる
  4. 成人の心停止は、その意志があったとしても、呼気吹き込み人工呼吸は行わない(胸骨圧迫とAEDのみ)
  5. 小児の心停止は、人工呼吸を行う意思がある場合には、胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせる。
  6. 救急隊引き継ぎ後は速やかに手と顔を洗い、傷病者の顔のハンカチやタオルには手を触れない。

これは、厚生労働省が示している現時点での日本の公式な方針です。

感染対策という点では、人工呼吸はしない、ということで統一されると理解している方もいたかもしれませんが、子どもの心停止の場合は、原則的に人工呼吸は行う、とされている点にご注意ください。

指針の中では、その理由が下記のように説明されています。

 

子どもの心停止は、窒息や溺水など呼吸障害を原因とすることが多く、人工呼吸の必要性が比較的高い。

 

指針の中では、「感染の危険などを考えて人工呼吸を行うことにためらいがある場合には、胸骨圧迫だけを続ける。」との記載もあります。

感染防護具の持ち合わせがない「通りすがり」の立場であれば、この通りですが、小学校教職員、保育士、児童施設職員などは、常に子どもの安全対策を意識し、安全管理している立場ですから、感染防護手袋や一方向弁付きの人工呼吸補助具を準備し、決してためらうことがないように備えておくことがプロフェッショナリズムと言えるでしょう。

ポケットマスクのような一方向弁付きの感染防護具であってもためらいを感じるようなら、用手的に人工呼吸を行える バッグバルブマスクの準備・練習も検討すべき時代 になっていると考えます。


withコロナ時代の救命講習(市民小児編)-人工呼吸をどうするか?

afterコロナ、postコロナではなく、with コロナ(新型コロナウイルスとの共生)。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)出現以前の世の中にはもう戻らないとも言われています。

今後は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がいることを前提とした新しい生活をしていかないとするなら、業務上必要な救命講習の在り方も根本から考え直さなければいけません。

withコロナ時代の救命講習の在り方を、子どもの蘇生と大人の蘇生に分けて考えました。

今回は、その小児編をお届けします。

COVID-19リスクが拭えないこの先、心肺蘇生法のやり方も再考する必要があります。

1.心肺蘇生法(トレーニングを含む)の感染リスク

少なくとも1mの距離をあける、飛沫を浴びないように真正面で話さない、など、人との接触や距離感が問題となるコロナ時代。

これまでの救命講習の実際を思い浮かべてもらえば、救命講習は人同士の濃厚接触や、飛沫・接触感染リスクが極めて高い危険な状況であることは想像に難くありません。

特に問題となるのは人工呼吸練習でしょう。

日本で一般的な救命講習ではフェイスシールドと呼ばれるビニールと不織布でできたシートを介してマネキンに呼気を吹き込み、そのマネキンを受講者5-6人で交代しながら、練習を繰り返します。

不織布は水蒸気や唾液を透過させますので、ウイルスや細菌に対するバリア機能は期待できません。汚染されたマネキン・フェイスを介した感染拡大が想定されます。

受講者が交代するたびにマネキンのフェイスをアルコール清拭するなどの対策はできるかもしれませんが、フェイスシートを持つ手に唾液・飛沫が付着し、その手でマネキンの頭部や胸部にふれることでの接触感染の拡大も想像できます。

現在の形の心肺蘇生法が確立してから60年弱。これまで人工呼吸を通して疾病に感染したという報告は数えるくらいしかなく、リスクは低いとガイドラインに記載されていましたが、それが新型コロナウイルス時代には根底から覆された形になっています。

2.withコロナ時代の子ども救命法

子どもの心停止の原因で、まっさきに考えなくてはいけないのが、呼吸のトラブルから心停止に至るというケースです。

医学的に言えば、低酸素血症による心停止(無脈性電気活動→心静止)です。

大人の主要な心停止原因とは異なり、子どもの救命のためには一般に人工呼吸が欠かせません。胸骨圧迫とAEDだけではダメというのが蘇生ガイドラインのスタンスです。

これはwithコロナの時代でも揺らいでいないというのが悩ましいところです。

世界の蘇生シーンをリードするアメリカ心臓協会AHAは、いち早くCOVID-19が懸念される傷病者への蘇生法の変更点を市民向けと医療従事者向けに分けて公開しましたが、大人の場合とちがって子どもの救命処置では「人工呼吸はしなくてよい」と言い切ることはしていません。

この部分の詳細はブログ別記事をご参照ください。
→ 子どもの心肺蘇生法 – 新型コロナウイルス感染疑いの場合

アメリカ心臓協会が発表した COVID-19(新型コロナウイルス感染症)感染対策を盛り込んだ心肺蘇生法のうち、今日は市民向けの小児CPRについて解説します。 こちらは、AHA...

リスクがあれば人工呼吸はしなくてもよい。でも児童施設職員は?

救命にあたっては救助者の安全が優先されますので、リスクがあれば人工呼吸はしない、という選択肢も出てきますが、問題は救護義務がある施設職員や教職員などです。

児童施設職員にとっては、子どもの心肺蘇生は予期せぬインシデントではなく、注意義務・安全管理上、最悪の事態として普通に想定されているものですから、リスクに備えていなければいけない立場になります。

つまり、新型コロナ禍に関係なく、従前から感染リスクは想定内で準備ができていることが期待されるわけですから、準備がないから人工呼吸をできなかった、という言い訳は通用しづらいのが現実です。(実際にそういう趣旨の訴訟は起きています。)

となると、感染リスクを前提とした人工呼吸トレーニングが必要という話になります。

withコロナ時代の感染防護具の選択・再考

BLS横浜としては、救護義務がある医療者以外のチャイルドケア・プロフェッショナルには、フェイスシールド(一般雑貨扱い)ではなく、医療機器承認を受けたポケットマスクを前提としてトレーニングを展開してきました。

実務としては、with コロナ時代でもポケットマスクで構わないと考えていますが、集団でのトレーニングの状況を考えると、受講者同士の交差感染リスクでは厳しいものを感じます。

日頃の保育園集合研修などでは、ポケットマスクの消毒済みマウスピース部分を受講者ひとり1つ貸し出して、マスクとマネキンは4人程度で共有というスタイルを取っています。

他者の吐息(つまり飛沫)がかかった器具(マスクやマネキンのフェイス)に触れるリスクを考えると、ポケットマスクとはいえ、呼気吹き込み法練習は感染リスクとしては万全とは言えないのが苦しいところです。

 

  • 受講者の交差感染リスクを考えたら、呼気吹き込み式の人工呼吸練習はしたくない
  • 救命の原理を考えれば、子どもの蘇生には人工呼吸は着実に実施したい

 

となると、このふたつを両立させるためには、医療従事者が使うようなバッグバルブマスクを使うしかないのかな、という発想になります。

バッグマスク換気はフェイスシールド人工呼吸より簡単

BLS横浜では、日頃、一般市民から医療従事者まで幅広いレンジで救命法を指導しています。

人工呼吸法は立場に合わせて、ダイレクトな口対口から、フェイスシールド法、ポケットマスク法、バッグマスク、気管挿管まで指導していますが、実際のところ、イメージとは裏腹に バッグマスク人工呼吸はかなり簡単 です。

たぶん、気管挿管を除けば、いちばんむずかしいのが、フェイスシールド人工呼吸じゃないでしょうか?

技術的な難易度:
口対口 < ポケットマスク < バッグマスク < フェイスシールド

バッグマスクは医療者向けというイメージが強いかとは思いますが、技術としてはフェイスシールドより簡単ですし、感染面での安全性と実用性でいえば絶大です。

こんな話をすると、バッグマスクは医療器具だから医療者免許がないとダメだという意見も出てきます。

しかし、冷静に考えてもらえば、空気を人体に送り込むという行為で言えば、口対口でもバッグマスクでもなんら変わりません。人工呼吸によって有害事象が起きるとしたら、胃膨満 → 嘔吐とか、静脈還流低下の可能性ですが、そのリスクは口対口でもバッグマスクでも同じです。

日本国内状況:医療者以外もバッグマスクを使っている

日本社会の慣例から言えば、今は医療資格を持たないボランティアのライフセイバーでも、バッグマスクを使って救命を行っている現状があります。

平成31年から、日本ライフセービング協会は、ライフセーバーに対して、バッグマスク使用を推奨する方向に転じました。

一般財団法人とはいえ、社会的立場のある巨大組織の公式通達を考えれば、バッグマスクは「非医療者だからダメ」という単純否定されるものではない点はご理解いただけるのではないでしょうか。

参考:バッグバルブマスクの使用について(PDF 90kb)
(一般財団法人日本ライフセービング協会 会員通達)

救助者 → 傷病者への感染リスク

救助者の安全だけで考えたら、感染防護具を着用した上で、一方向弁になっているポケットマスクを使えば自分を守る対策はできていると言えますが、仮に救助者が不顕性の感染者だった場合、自分の持っているウイルスを傷病者に移してしまうというリスクも否定できません。

そう考えると、救助者と傷病者 双方 の安全を守った人工呼吸法としては、バッグマスク人工呼吸しかありえない、というのが論理的な答えになります。(だから平時であっても病院内の救命処置では呼気吹き込みではなくBVMしかありえないわけです)

3.小学校・保育園・幼稚園 withコロナ時代の救護体制

withコロナの時代では、これまでは軽んじられ気味だった「感染リスク」ほプライオリティが上位にあがりますので、2019年までに見られたような「学校教職員が人工呼吸をしなかった」ことを過失とするような裁判は減るかもしれません。

しかし、医学的に考えたら、救うためには人工呼吸をするべき、というサイエンスは変わりませんので、現場の保育士や学校教職員はどうしたらいいか? と言ったら、安全に人工呼吸をするためにバッグマスク人工呼吸を標準にしましょう、というシステム改革が見えてきます。

保育園やバッグマスクを学校に配備して、職員(全員でなくてもいいかもしれません)にバッグマスク人工呼吸をトレーニングして、安全にフルサイズの救命処置ができるように備えるのです。

そこまでしなくても、救急隊が来てから人工呼吸を始めるのでもいいのでは? という意見もあるかと思います。

しかし、救急車が着くまでの全国平均が8分程度。あなたは8分間呼吸を停められますか? と言ったら、これは絶望的というのは感覚的にもわかるでしょう。

助けたいと思ったら、人工呼吸は欠かせない。となれば、今までは医療者以外がバッグマスクを使うなんて、という先入観をはずして、その妥当性をきちんと議論すべきだと思います。

研修再開までの対策と準備、情勢の見極め

バッグマスクのトレーニングであれば、飛沫を介した交差感染リスクは低いので、手袋を装着する、前後の手指衛生などの配慮をすれば、保育園スタッフ全員に練習してもらうことも現実的にできます。

そのためには保育園にバッグマスクを常備しておくという形になりますが、今はディスポーザブルのバッグマスクがポケットマスクと変わらないような値段で手に入りますので、あながち非現実的な話ではありません。

過密を避けるために、マネキンと受講者比率、一回あたりの受講者人数、会場の広さ、練習交代間のマネキンの消毒作業など、研修を開催すること自体への課題は残りますが、ここは現実的にやり方は見えています。

講習1回あたりの「効率」を落とす。参加人数を減らす、中間消毒などで時間が伸びるなどの、効率さえ妥協すれば、研修の実施自体はそう遠い話ではありません。

その時までに、施設内の救急対応体制を抜本から見直しておくべきでしょう。もとに戻るとは考えずに、新しいやり方を考えていくことが必要な時期になっています。


子どもの心肺蘇生法 ー新型コロナウイルス感染疑いの場合

アメリカ心臓協会が発表した COVID-19(新型コロナウイルス感染症)感染対策を盛り込んだ心肺蘇生法のうち、今日は市民向けの小児CPRについて解説します。

こちらは、AHAが公開している “COVID-19 and Child and Infant CPR” というフライヤーを独自に日本語化したものです。(AHAの公式日本語版がでるまでの暫定公開です)

新型コロナウイルス感染症が疑われる子どもへの救命処置

 
もともと米国の市民向け小児蘇生を知っている人からしたら、どこにコロナウイルス対策が入っているんだ? と不思議に感じるかもしれません。これまであったら小児CPRとなんら変わるところがないからです。

成人の Hands only CPR のフライヤーでは、胸骨圧迫をする前に傷病者の口と鼻をマスクや布で覆うという「変更点」がありましたが、こちらにはなにも目新しいところがないのです。

子どもの救命にはやっぱり人工呼吸は外せない

結論からすると、COVID-19への危惧があったとしても、呼吸原性心停止を前提に考える子どもの救命の上では人工呼吸は欠かせない、成人CPRとは違って「人工呼吸は省略する」ことをデフォルトとはできない、との意思を見ることができます。

このフライヤーの中で、唯一、新型コロナウイルス感染への対策が感じられるのが、「あなたにその意志があり、可能であれば」という部分です。

原語では、if you’re willing and able となっています。

 

コロナウイルスに感染しているかもしれない子どもに対して、胸骨圧迫と人工呼吸をやろうとする意思があり、可能であれば、やってください。

(その意思がない、もしくは技術的に物理的に装備的に出来ないのであれば、やらなくてもいいですよ)

 

このかっこの中が本当のメッセージなのですが、それをあえて積極的には明言したくなかった、という姿勢が見て取れると思うのです。

CPRを開始しない場合の対応はどうなるのかというと、フライヤーの STEP 2 の前半部分まで、つまり心停止の可能性を探り、心停止が疑われれば 119番通報 するだけでもやってくださいね、ということになります。

フライヤーのタイトル下にある言葉を見てください。

 

それでも、あなたにできることがあります。
you can still help.

 

結局のメッセージはここなんだろうと思います。

こんなご時世、コロナウイルス感染が怖いから倒れている人には近づきたくない。そんな心理が広がりつつあります。

しかし、一目散に逃げるのではなく、意識状態と呼吸状態を分かる範囲で確認して、懸念があれば119番通報だけでもしてほしい。

それだけでも大きな助けとなるのだ、ということ。

立場によって違う if you’re willing and able

このフライヤーの真意を探る上で、同じく AHA が公開している Community FAQ: COVID-19 and Pediatric CPR (PDF) という資料が参考になります。

これを見ると、子どもの心停止対応の救助者は誰かと言ったら、まずは親や家族が想定されていることがわかります。

我が子であれば、感染リスクを考えるより、救いたいという意思が先に立つのは当然でしょう。

であれば、一律、人工呼吸はしなくてよい、とは書くべきではないのは理解できます。

まったく無関係な第三者であれば、119番通報だけでも、胸骨圧迫だけでも、何かのアクションを起こしてくれば、それは尊いこと。

しかし、これが注意義務を持って対応する職業人だった場合は、もう少し踏み込んだ対応が必要です。

 

if you’re willing and able

 

人工呼吸を含めたCPRをする willing (意思)はあるでしょう。しかし、それが able(可能)かどうか。それはひとえに「準備」にかかっています。

つまり、ポケットマスクやバッグマスクなどの感染防護機能が実証された人工呼吸器具を備えているか、そしてそれを使えるように訓練されているかどうか、ということです。

新興感染症罹患が懸念される今だからこそ、立場によっては【備える】ことが重要です。


現実を考えたら、人工呼吸はやっぱりポケットマスク

子どもの心肺蘇生や、水辺の救命を考えたら、人工呼吸は必須で欠かすことのできないものです。

そのため保育園での救命講習では人工呼吸練習に重点を置いた講習展開をするのですが、そこで使うのは、ポケットマスクです。

(ポケットマスクはレールダル社の商品名で、正確には「一方向弁付きフェイスマスク」というのかも知れませんが、ここでは類似商品を含めて広義でポケットマスクと表記します。)

一般市民向けの講習では、人工呼吸はしなくても良いと教えることもあるようですが、業務対応としてはそれはNGです。

また、フェイスシールドを使った mouth to mouth 人工呼吸であっても、救助者の心的ハードルの高さや、傷病者の口周りがあまり綺麗ではない状況を考えると、業務対応としては厳しいものがあります。

一方向弁がついたタイプのフェイスシールドであっても、医療機器承認を受けたものではありませんし、下の写真のように穴が空いてしまうのは練習中であってもよく経験することです。

練習で穴が空いてしまったフェイスシールド

業務対応の救護はあらかじめ備えておくものですから、「愛と勇気」に依存するところは極力低くして、リスクを減らして無理なくできる体制と準備をすることが重要です。

そこで、結論としては人工呼吸は、ポケットマスク+ニトリル手袋、しかないと考えます。

ポケットマスクに初めて触れた保育士さんは

最近では厚生労働省が推進する保育士等キャリアップ研修でも救命処置の指導をさせてもらっていますが、ポケットマスクを初めて使った保育士さんは、口々に「これならできる!」とおっしゃいます。

それまでは、フェイスシールドしか知らなかったから嫌でもやらなくちゃいけないと思っていたところが気持ちが軽くなったという感想を聞くこともあります。

実はフェイスシールド人工呼吸がいちばん難易度が高い

講習指導としては、例えば ハートセイバーCPR AEDコース では、一人一体のマネキンを用意していますので、ダイレクトな口対口人工呼吸から始めて、フェイスシールド人工呼吸、ポケットマスク人工呼吸まで練習してもらっています。

3つのやり方を比べて、皆さんが苦戦するのは、ダントツでフェイスシールド人工呼吸です。

シートのせいで口との密着が甘くなってしまうからで、市民向けのもっとも標準的なやり方が、実はいちばん難しかったということが露呈する場面です。

人工呼吸を着実に実施してもらうには簡単・安心のポケットマスク

ポケットマスクのいいところは、mouth to mouth に比べて簡単なだけではなく、感染防護具としてしっかりしているという点が大きいです。実際に人工呼吸をした人の体験談として、吹き込んだ後に傷病者の吐息を吸い込んでしまい、自分が気持ち悪くなってしまったという話をよく聞きます。

そうです。吹き込んだら、当然、相手の肺の中の空気が吐く息として戻ってくるわけで、これがマネキン相手の練習とは違う部分です。

蘇生練習のマネキンは感染対策として、吐息は口に戻らず、マネキン内部に排出されるような仕組みになっています(レールダルのリトルアンの場合)。

ですから、mouth to mouth の人工呼吸では、吹き込んだら、一度口を離さないと匂いの混じった吐息を吸い込んで、むせこむことになります。

この点、ポケットマスクは吹き込み口の部分が一方向弁になっていて、傷病者の吐息が自分の口元にはこないしくみになっています。

ポケットマスク人工呼吸:一方向弁のしくみ

これは感染防護として重要な部分です。

蘇生中に傷病者が嘔吐するケースは珍しくありません。この場合も一方向弁が有効と言えるでしょう。さらに、より確実に感染防護を考えると、ポケットマスクに標準でついているニトリル手袋も必ず併用することが重要です。

その他、傷病者の顔と自分の顔の間に距離をおけるというのも心理的な安心度が大きいと言えます。

なぜ日本の救命講習ではポケットマスク人工呼吸を教えないのか?

このような現実問題を考えた時に、業務対応の救護では、フェイスシールドのような雑貨ではなく、きちんとした感染防護具を備えておくのが望ましいわけですが、日本国内でポケットマスク人工呼吸を学べる場所・機会はほとんどありません。

ここが大きな問題です。

なぜポケットマスクを教える救命講習がほとんどないのか?

そもそも人工呼吸の重要性があまり認識されていないということもあるかもしれませんし、単純にポケットマスクという感染防具の存在を知らない人が多いということもあるでしょう。

しかし、救命法の指導員ともなれば、ポケットマスクの存在を知らないことはないでしょう。そしてその有用性も知っているに違いありません。

そうであっても指導に盛り込めないとすると、それはおそらくコストの問題があるのでしょう。

ポケットマスクは1つあたり4,000円程。

それを受講者人数分そろえると、例えば30人なら12万円。

練習用なら洗浄・消毒をして再利用は可能ですが、初期投資としてはバカにならない金額です。

しかし業務スキルを教える講習であれば市民向け講習とは違うわけで決してケチってはいけない部分です。

この問題は業務プロバイダー向け研修が法的にも規定されている米国でも切実。そこでアメリカでは交換用のポケットマスクをのバルブが安く手に入るようになっています。

例えばこんな感じです。

米国で買えるポケットマスク用一方向弁交換パーツ

これはポケットマスクの交換用の一方向弁100個。

定価は1つあたり1.25ドル。

フェイスシールドと同じくらいの価格です。

これを人数分だけ用意しておけば、マスクの数はマネキンと同数だけで済むというのが現実的な運用法です。

残念ながら、ポケットマスク人工呼吸法がまったくもって浸透していないので、日本国内ではなかなか流通していません。

そこで、BLS横浜では米国から輸入しています。

輸入なので送料等でかなり割高になるため、実際の運用のうえでは洗浄・消毒の上で繰り返し使用していますが、そのおかげで医療系大学でのBLS演習や保育士キャリアアップ研修など、参加者数が100名を超える研修でも現実的なトレーニングが実施できています。

BLS横浜では、善意の救護のためのトレーニングと、業務対応としての救護トレーニングを明確に区別していますが、その違いの一つがポケットマスク人工呼吸を教えるかどうかです。

家族を救護するのに、感染防護という意味ではポケットマスクは不要でしょう。しかし、業務救護では少しでも不安要素を軽減させた実践トレーニングが必要なのです。

一言で心肺蘇生法講習といっても、それがプロユースに対応しているかどうかの違い。それを指導者側も吟味すべき部分です。


保育に従事する看護職に求められる役割講座 -4/20(土)

BLS横浜の直接の企画ではありませんが、保育園で働く看護師さん向けセミナーのご紹介です。

保育に従事する看護職に求められる役割講座

BLS横浜でもエピペン講習を巡っては、厚生労働省の「保育士等キャリアアップ研修」の講師を努めたり、公募での「エピペン&小児BLS」講習、また保育園からの依頼講習も度々受けており、保育園で働くナースの方と接する機会は多いです。

特にファーストエイド系の講習では、保育園ならではの悩みというか、相談を受けることもよくあります。

保育職(福祉職)の中で、唯一の医療職での重圧だったり、衛生観念などの業界間のギャップ、応急処置に関して責任者となることへの不安、処置方針を巡って親御さんとの意見の相違やトラブル。

 
BLS横浜が関わるのは、主にファーストエイドと救急対応が中心ですが、実際の保育園看護師の業務としては、日々の成長や健康管理であったり、園によっては保育士と同じ保育業務が多いところもあるでしょう。

保育園看護師の多くは、どこも一人職であり、業務内容も園によって様々で、なかなか誰かに相談したり、情報を共有するのが難しく、悩みのうちに仕事をしていて、なかなか長続きしないという現状もあるようです。

 
そこで、「保育に従事する看護職に求められる役割講座」。

もと保育園で園長をしていて、今は保育の危機管理が専門の講師による話と、参加者同士の意見交換、ワークショップで構成される2時間です。

 
 
看護師の中にはいつか保育園で働いてみたいという方も少なからずいらっしゃるかと思いますが、保育園ナースにフォーカスした珍しいワークショップです。

ぜひ、参加をご検討ください。

 

保育に従事する看護職に求められる役割講座
4月20日(土)18:30-20:30 横浜みなとみらい 桜木町駅徒歩5分
主催:EMR財団 【詳細・申込み

 

詳細、申込みは、一般財団法人エマージェンシー・メディカル・レスポンダー財団 のホームページからお願いします。

 

当日は、BLS横浜もスタッフとして参加する予定です。


千葉県保育士等キャリアアップ研修「エピペン講習」H30年度後期

今日は、去年から担当させていただいている千葉県の保育士等キャリアップ研修の「食育・アレルギー対応」でした。

3回シリーズのうち、アレルギーの病態の部分とアナフィラキシー・ショックへの対応、つまりエピペン講習部分をBLS横浜で担当させていただいています。

教育工学に基づいた講習の組み立てをしているというだけなのですが、3時間の中でも学習の積み上げを意識した展開のおかげか、最後の集大成としてのシミュレーションは、これまでの学習経験の中でも印象的だったという感想をいくつもいただけました。

たった3時間で、エピペン注射を含めた救急対応ができるようになるわけではありません。特に保育園では職員の連携がなければ絶対にうまくいくわけがありません。

なので、この研修のゴールは、今回受講頂いた皆さんが「できるようになる」のではなく、受講者が園に帰ったときにファシリテーターとなって、保育園の救急体制を見直して、職員連携による実践訓練を行うリーダーになれること、にあります。

ここが一般的なエピペン講習とは違うところなのだと考えています。

そんな自分たちで学ぶための補助ツールと言うべきものが、下記のシナリオシートです。(以前に エピペン研修のシミュレーションネタとデブリーフィングツールを公開 で紹介したのと同じものですが、今回は印刷して使えるPDFも公開しています。)

エピペン講習傷病者指示書

受講者5人1チームになり、一人がアレルギー症状を起こした子どもの役、もうひとりは119番通報の指令員ならびに現場到着した救急隊員の役をしてもらいます。

エピペン講習救急指令員指示書表面

エピペン講習救急指令員指示書裏面

終わった後の振り返りの場が、学びのメインステージ。

そんな体験をしてもらい、それをご自身の保育園でもやってみてくださいね、というのがこの研修の趣旨になります。

これらのシナリオシートはPDFでも公開します。

どうぞご自由にお使いください。

 

エピペン・シミュレーションシナリオシート(PDF:200kb)

 

その他、エピペン研修に関する情報は下記ページもご参照ください。

 

BLS横浜ブログ エピペン関連記事23編

 

BLS横浜のエピペン&子供心肺蘇生法講習


小児の人工呼吸比率、15:2 を深掘りする

今から書く話は、主に医療従事者向けのBLSプロトコルです。市民向け救命法とは別の話なので、ご注意下さい。

さて、ヘルスケアプロバイダー(医療従事者や救命のプロ)向けの心肺蘇生法の中では、小児に関しては、30:2 ではなく、15:2 という胸骨圧迫と人工呼吸の比率がでてきます。

これはAHAガイドラインでは、思春期未満の子どもに対する二人法CPRの場合の圧迫対換気比です。

今日は、この 15:2 に着目して、掘り下げていってみようと思います。

小児の心停止の原因と、代謝による酸素消費量

まず、そもそも 30:2 に較べて、15:2 という胸骨圧迫と人工呼吸比率のメリットはなんでしょうか?

肺に送り込まれる空気の量が多い。

ということですよね。

そして、この比率が適応されるのは小児・乳児の場合だけです。

なぜ、子どもの場合は、人工呼吸の送気が多いのか?

理由は、皆さん、わかりますよね?

BLSコースのDVDでも言っているように、子どもの心停止の原因として呼吸のトラブルが多いからです。

BLSプロバイダーマニュアルG2015では、52ページに、「乳児や小児が心停止を起こした場合は、呼吸不全またはショックが認められ、心停止に至る前から血中の酸素濃度が低下していることが多い」と書かれているとおりです。

その他の理由としては、PALSプロバイダーマニュアルにヒントがあります。

その114ページには次のように書かれています。

 

「小児は代謝率が高いため、体重1kgあたりの酸素需要量が多い。乳児の酸素消費量は6~8ml/kg/分であり、成人の3~4ml/kg/分よりも多い。」

 

子どもは大人に較べて、酸素の消費量が多いから、人工呼吸の比率が成人より高い、ということです。

このような理由から、子どもは酸素の供給量を上げてあげようということで、15:2 という比率が採用されています。

15:2 のメリット、デメリット

ここまでは納得いただけるかと思いますが、よく考えると、さらなる疑問が湧いてきます。

子どもの場合であっても、救助者が一人のときは大人と同じ 30:2 とされている。酸素の消費量が多いのが理由であれば、救助者人数で違ってくるのはおかしいのでは?

この点は、皆さんはどう考えるでしょうか?

 

ここは単純な小児の生理学だけの問題ではなさそうですね。

そこで、30:2 と 15:2 で何が違うのかを改めて考えてみると、、、

15:2 の方が胸骨圧迫の中断時間が長い、という見方もできませんか?

そうなんです。15:2 のデメリットは、胸骨圧迫の中断時間が多いため、累積で考えると、圧迫によって生まれる血流量が少ないとも言えます。

換気回数は多いため、肺胞に到達する空気(酸素)の量は多いですが、その後の組織への酸素運搬を司る血流量が少なければ、結局、心筋細胞や脳細胞へ到達する酸素量で考えたらマイナスになってしまう。これが 15:2 のデメリットです。

ましてや、一人法ですから、胸骨圧迫を終えたら、感染防護具を手にして、頭部後屈顎先挙上をし直してからの送気です。これには 10 秒弱がかかってしまいます。

一人法では胸骨圧迫の中断が長くなる

しかし、二人法の場合を考えてみて下さい。

胸骨圧迫の間、バッグマスクを顔に密着させて気道確保して構えているわけですから、15回の圧迫が終わったらすかさず送気。そうすれば中断時間 3-4 秒程度ですぐに血流を再開することができます。

つまり、一人法で 15:2 で実施した場合は、血液の酸素化までは良くても、その後の血流が低下するために組織への酸素化を考えたら効率が悪い。救助者二人で、圧迫と換気を分担した場合に限り、血液の酸素化と組織への酸素化が有効に行える、というわけです。

この点は、BLSプロバイダーコースのDVDにも、テキストにも書かれてはいませんが、組織の酸素化の理屈を考えてみると、導き出されるひとつの理解です。

漫然と 15:2 と覚えるのではなく、理由を考えてみると、記憶に残りやすいのではないでしょうか?


「エピペン&小児BLS」講習は応用力を鍛えるプログラム

今日は、湘南のインターナショナル・スクールで「エピペン&小児BLS」講習でした。

 

これは単に「エピペン講習」と「小児心肺蘇生法講習」をくっつけただけではなく、その間をシームレスにつなげたBLS横浜オリジナル講習です。

この2つの間をつなぐのが、「生命危機の評価と観察の視点」です。

アナフィラキシーを起こした子どもがどのように命を落としていくか、またそこに「介入」することで、どのようにして生に向かって転じていくかを知れば、エピペン注射や気道確保、人工呼吸と胸骨圧迫の意味と必要性が理解できます。

その過程で体に起こる変化を見て、好転しているのか、悪化しているのかを予測して、介入し、観察・記録して救急隊員に引き継ぐこと。

こんな、エピペン講習だけ/BLS講習だけではない、新たな価値観で両者をつなげたのがBLS横浜の工夫です。

結局、「エピペン&小児BLS」講習の中身はファーストエイド講習の本質部分にかなり食い込んでいると言えます。アナフィラキシー・ショックとCPRを例題にして、末端技術にとらわれないファーストエイド的思考の理解を促したと言えるかもしれません。

その証拠に、この研修の後、受講いただいたインターナショナル・スクールの先生たち(特別な医療の知識がある方たちではありません)にこんな質問をすると、教えたわけではないのに自分たちで考えて答えを導き出せました。

 

「子どもが突然けいれん発作を起しました。痙攣が停まった後、意識がなさそうです。なにを観察して、どう行動したらいいですか?」

 

人が生きるしくみと死ぬしくみを理解すれば、痙攣のファーストエイドを勉強していなくても、問題の本質を考え、対応できるようになるのです。

実際のところ、けいれん発作の原因は、てんかんかもしれませんし、低血糖かもしれませんし、熱中症かもしれませんし、突然の心停止かもしれません。

病名を探ろうとすると、思考停止に陥ります。医師ではない人間がわかるわけありません。しかし原因は何であろうと、今は目の前に意識がない子どもが倒れているのです。そんな本質に気づけば、簡単です。

  • 呼吸確認をする → 10秒でよくわからなければCPR開始と119番
  • 呼吸をしていれば、気道確保(体位と口腔内確認)と119番、呼吸が停まらないか観察を続ける。余裕があれば転倒時の外傷チェック等
  • 呼吸が停まれば、CPR開始

基本的な考え方を「理解」すれば、ファーストエイドはそれほど難しいものではありません。

幅広い知識より、この本質部分を伝えていきたいと思います。

 

※「エピペン&小児BLS」講習は、次回、公募で6月12日(火)に開催します。若干名残席あります。 → BLS横浜ホームページ


エピペン研修のシミュレーションネタとデブリーフィングツールを公開

今日は、千葉県の子育て支援事業として開催された保育所職員向けアレルギー・エピペン研修の講師で登壇させていただきました。

参加人数が120名と多かったので、ふだん横浜でやっているようなインストラクターによる傷病者の演技はできず、演技指示を紙に書いて、受講者に傷病者を演じてもらうことで対応しました。

今回は、県内の各保育園から集まってきた人たち。同じ職場の人はいないという学習環境です。

この場合の研修の目的は、参加して満足してもらうのではなく、トレーニング手法を各職場に持ち帰ってもらい、そこで身のある伝達研修をしてもらうことにあります。

120名を5人に分かれてもらい、アナフィラキシーを起こした園児役、119番指令員ならびに救急隊員役、その他3人の先生たちでエピペン注射と介助と記録と通報とを行ってもらいました。

全24組をインストラクター1名で管理するのはたいへん。

そこで、今回は紙の指示書を活用が、思いのほか、うまくいきました。

かなり盛り上がった(?)シミュレーションで、その後ブースごとの振り返りも非常に活発でした。

そのカラクリとなったシミュレーションの指示書を公開します。

参加者の皆さんは、自主的に携帯で写真を撮ってる方が多いのが印象的でした。(その後、コピーを全員に配りました)

シミュレーションの進め方は詳説はしませんが、見てもらえばなんとなくわかるんじゃないかと思います。
エピペン研修を手がけている関係者の方の参考になると幸いです。

エピペン講習傷病者指示書

エピペン講習救急指令員指示書表面

エピペン講習救急指令員指示書裏面


保育士さんがポケットマスクと初遭遇するとき

今日は、山梨県にある子育て支援センターからの依頼で、親御さん向けの1時間半のファーストエイド講習と、保育士・保健師向けの健康管理ワークショップで登壇させていただきました。

今回いただいた小児専門家向けワークショップのテーマは「子どもの日常的な健康チェック」だったのですが、なにをもって「この子は元気」と判断するのか? という点で、「生命危機の兆候が見られない」ことを日々観察するという流れでお話させていただきました。

子どもですから様子がおかしいことは、ちょくちょくあると思います。それが生命危機につながるものなのかどうかがある程度判断できれば、いざというときは迅速に対応できますし、そうでない場合は安心できます。

観察するというと異常を探すという視点になりがちですが、危険な兆候が見られない、だから大丈夫という判断も意味ある重要な考え方です。

生命危機状態の成れの果て、最悪の事態とも言えるのが心肺停止です。

ご参加頂いた皆様は基本的な心肺蘇生法は習得済みでしたが、子どもが命を落とす原因と絡めての話は新鮮な気持ちで聞いていただいたようです。

大人とは違う子どもに特化した蘇生法では、人工呼吸は必須です。決して積極的に省略して良いものではありません。

今日は、おまけの話として、小児BLSでは人工呼吸が大切という話をしたのですが、皆さんが「初耳!」ということで注目されたのが、ポケットマスクでした。

ポケットマスクは小児蘇生では欠かせません

口対口人工呼吸は、フェイスシールドを使って練習したことがあっても、日頃、フェイスシールドなんて持っていないし、あったとしても(気持ち的に)できる自信がないというのが正直なところだったようです。

それが、今回初めてポケットマスクの存在を知り、「これならできる!」と感じていただけたようです。今回は心肺蘇生法講習ではなかったので、デモ用のマネキン1体しか持ってきていませんでしたが、念のためということで参加者人数分の一方向弁(マウスピース)を持ってきていて良かったです。

参加者のほとんど人が講習後も残ってポケットマスク人工呼吸を体験して行かれました。

「これならできる気がします。施設で買ってもらえるようにします」

そんな声が聞かれました。

蘇生ガイドライン2010で、心肺蘇生法の手順が人工呼吸優先のA-B-Cから、胸骨圧迫優先のC-A-Bに変更されたのは、人工呼吸の心的抵抗を考慮した教育心理的な方策でした。

「息をして酸素を取り込んで、血液循環に乗せて体の各細胞に酸素を届ける」という人が生きる根源的なしくみを考えたら、A(気道)-B(呼吸)-C(循環)という流れは絶対的な真理なのですが、あえてそれを崩したのは、蘇生法を絵に描いた餅にしないため、心理的な障壁を下げるためでした。

しかし、子どもの心停止や溺水では必須とされる人工呼吸についてはビニールシート1枚で勇気を奮ってやるように、という教育がいまだ続いていて、呼吸原性心停止が多いとされる子どもの緊急事態に一定の対応義務が課されるチャイルドケア・プロフェッショナルに対しても自己犠牲的な勇気が求められるのは、あまりに非現実的なことです。

気がすすまないこと、でもイヤとは言えないし、どうしよう。

そんなもやもや感が、ポケットマスクという道具ひとつで解消されるのですから、なんでそれを知らなかったのだろう、という感想もいただきました。

古来からの救命教育は、「人間愛と根性」に支えられていたような気がします。

しかし、仕事の上で救命しなければならないのであれば、それは業務です。

もっとビジネスライクに、道具やシステムの改善でどうにかなる部分は、どんどんそっちに任せて、個人の負担は減らすべきなのです。

たかだか2−3千円のポケットマスク。

それで保育者も傷病者も助かるのなら、、、と思います。