心肺蘇生の仕組み一覧

小児の人工呼吸比率、15:2を深掘りする

今から書く話は、主に医療従事者向けのBLSプロトコルです。市民向け救命法とは別の話なので、ご注意下さい。

さて、ヘルスケアプロバイダー(医療従事者や救命のプロ)向けの心肺蘇生法の中では、小児に関しては、30:2ではなく、15:2という胸骨圧迫と人工呼吸の比率がでてきます。

これはAHAガイドラインでは、思春期未満の子どもに対する二人法CPRの場合の圧迫対換気比です。

今日は、この15:2に着目して、掘り下げていってみようと思います。

まず、そもそも30:2に較べて、15:2という胸骨圧迫と人工呼吸比率のメリットはなんでしょうか?

肺に送り込まれる空気の量が多い。

ということですよね。

そして、この比率が適応されるのは小児・乳児の場合だけです。

なぜ、子どもの場合は、人工呼吸の送気が多いのか?

理由は、皆さん、わかりますよね?

BLSコースのDVDでも言っているように、子どもの心停止の原因として呼吸のトラブルが多いからです。

BLSプロバイダーマニュアルG2015では、52ページに、「乳児や小児が心停止を起こした場合は、呼吸不全またはショックが認められ、心停止に至る前から血中の酸素濃度が低下していることが多い」と書かれているとおりです。

その他の理由としては、PALSプロバイダーマニュアルにヒントがあります。

その114ページには次のように書かれています。

「小児は代謝率が高いため、体重1kgあたりの酸素需要量が多い。乳児の酸素消費量は6~8ml/kg/分であり、成人の3~4ml/kg/分よりも多い。」

子どもは大人に較べて、酸素の消費量が多いから、人工呼吸の比率が成人より高い、ということです。

このような理由から、子どもは酸素の供給量を上げてあげようということで、15:2という比率が採用されています。

ここまでは納得いただけるかと思いますが、よく考えると、さらなる疑問が湧いてきます。

子どもの場合であっても、救助者が一人のときは大人と同じ30:2とされている。酸素の消費量が多いのが理由であれば、救助者人数で違ってくるのはおかしいのでは?

この点は、皆さんはどう考えるでしょうか?

ここは単純な小児の生理学だけの問題ではなさそうですね。

そこで、30:2と15:2で何が違うのかを改めて考えてみると、、、

15:2の方が胸骨圧迫の中断時間が長い、という見方もできませんか?

そうなんです。15:2のデメリットは、胸骨圧迫の中断時間が多いため、累積で考えると、圧迫によって生まれる血流量が少ないとも言えます。

換気回数は多いため、肺胞に到達する空気(酸素)の量は多いですが、その後の組織への酸素運搬を司る血流量が少なければ、結局、心筋細胞や脳細胞へ到達する酸素量で考えたらマイナスになってしまう。これが30:2のデメリットです。

ましてや、一人法ですから、胸骨圧迫を終えたら、感染防護具を手にして、頭部後屈顎先挙上をし直してからの送気です。これには10秒弱がかかってしまいます。

しかし、二人法の場合を考えてみて下さい。

胸骨圧迫の間、バッグマスクを顔に密着させて気道確保して構えているわけですから、15回の圧迫が終わったらすかさず送気。そうすれば中断時間3-4秒程度ですぐに血流を再開することができます。

つまり、一人法で15:2で実施した場合は、血液の酸素化までは良くても、その後の血流が低下するために組織への酸素化を考えたら効率が悪い。救助者二人で、圧迫と換気を分担した場合に限り、血液の酸素化と組織への酸素化が有効に行える、というわけです。

この点は、BLSプロバイダーコースのDVDにも、テキストにも書かれてはいませんが、組織の酸素化の理屈を考えてみると、導き出されるひとつの理解です。

漫然と15:2と覚えるのではなく、理由を考えてみると、記憶に残りやすいのではないでしょうか?


気道異物の窒息解除法-意識を失った後の方が取れやすい?

今日はBLSの範囲内から、喉にモノが詰まったときの解除法についての話題です。

まずはおさらいです。

誰かが喉にモノを詰まらせて、苦しがっているのを見つけたら、どうするんでしたっけ?

反応がある窒息者に対する気道異物除去法

  • ハイムリック法(腹部突き上げ法)
  • 背部叩打法
  • 胸部突き上げ法

 

米国ではシンプル化のためにハイムリック法しか教えていませんが、蘇生ガイドライン的には、背部叩打法と胸部突き上げ法も列記されていて、エビデンス的には優劣はないということになっています。

そして、複数の方法を試す必要があるかも知れないという記載もありました。

乳児の場合は、肝臓損傷のリスクから、腹部突き上げ法は推奨されず、一般的には背部叩打法5回と、胸部突き上げ法5回を交互に実施するように教えられているかと思います。

さて、ここまでは、皆さん、よくご存知のところなのですが、この先、異物が取れず、意識を失って反応がなくなった場合の対応については、曖昧なところではないでしょうか?

反応がなくなった場合の窒息解除法

ハイムリック法や背部叩打法をしているうちに、ぐったりと意識を失ってしまったら、そのまま継続は困難ですから、まずは床に寝かせます。

周りに人がいれば119番をお願いしますが、もし誰もいなければ、通報より優先して次の解除ステップに移ります。

それはなにかというと、傷病者を寝かせた状態で行なう胸部突き上げ法です。

窒息解除の胸骨圧迫は心臓マッサージとは違う

こういう言い方をすると、怪訝に感じるかも知れませんが、傷病者を寝かせて行なう胸部突き上げ法とは、すなわち胸骨圧迫のことです。

テキスト的には、「胸骨圧迫からCPRを始める」と書かれていますが、窒息で意識を失った直後は、まだ心臓は動いていますから、胸骨圧迫することは血流を生み出すのが目的ではありません。

胸腔内圧を上げて、喉に詰まった異物を外に押し出そうとしているのです。

通常のCPRとの手順の違い

胸を押す目的は、窒息解除です。ですから30回押した後は、人工呼吸の前に口の中を覗いて異物が目に見えるところまで上がってきていないかを確認しろ、という手順が追加されているのが、通常のCPRとは違う部分です。

異物が見えるところまで上がってきていなくても、30回も胸を押せば、それなりの空気圧がかかっていますから、異物がずれて気管内に隙間ができている可能性もあります。

ですから、その可能性にかけて、とりあえず人工呼吸の吹き込みをトライします。

少しでも隙間ができていて空気が入ればラッキーです。弱りかけて徐脈になっていた心臓に多少なりとも酸素を送り込めれば、心停止までの時間稼ぎができます。

空気が入らなければ入らないで、異物の位置がずれることを期待しつつ、また30回の胸部突き上げ(胸骨圧迫)を行っていきます。

通報と解除の試み、どちらが優先か?

2分間CPRと口腔内確認を続けてみても、奏功しない場合は、いちど手順をやめて119番通報を行い、あとは指令員の指示に従って救急隊到着まで、窒息解除の試みを続けることになると思います。

ここはAHAの小児BLSで教えている呼吸原性を疑った「目撃のない心停止」と同じで、通報よりも一刻も早い介入が優先されるところです。

119番をしたことがある人ならわかると思いますが、まずは住所を聞かれて、それから、何があったのかという状況を聞かれます。下手すると5分以上かかります。少なく見積もっても数分間。その間、息ができない状態が続いたらどうでしょうか? すでに意識を失うレベルまで酸素が減っている中で、さらに数分間放置したら、脳細胞のダメージがより深刻になります。

そこで、AHAガイドラインでは、呼吸原性が強く疑われる心停止や窒息の場合は、通報よりも解除手順着手の方を優先しています。

この点で、日本のJRCガイドラインでは、いかなる場合でも通報が先と規定している点は、指導者レベルの人は知っておいて下さい。

反応がなくなってから、異物が除去できる可能性

さて、窒息解除法は、反応がある場合とない場合で2つのステップがあるのですが、もし目の前で窒息が発生した場合、どちらのステップの方が解除できる可能性が高いのでしょうか?

イメージ的には、意識を失う段階までいってしまったら、窒息解除も厳しいんじゃないかと感じるかも知れませんが、G2015版のBLSプロバイダーマニュアルには、興味深い記述が追加されています。

 

窒息状態にある傷病者が意識を失ったとき、咽頭の筋肉は恐らく弛緩状態である。これにより完全な/重度の気道閉塞が部分閉塞に変わる可能性がある。

BLSプロバイダーマニュアルG2015版、p.74

 

イメージできるでしょうか? 喉にモノが詰まって苦しがっているうちは全身がこわばっています。これにより喉のあたりもギュッと収縮する力がかかっているので、取れにくい状態です。

しかし、意識を失ってしまえば、ダランと脱力して筋肉が緩むため、異物が取れやすい状態になるのでは? ということなんです。

そのため、次のような文章が続いていきます。

 

さらに、胸骨圧迫により、少なくとも腹部突き上げと同程度の力が生み出され、異物の排出に役立つ可能性がある。

 

もしかしたら、意識を失った後のほうが、異物が取れやすいのかもしれない。

そう考えると、反応がなくなった後のCPRという窒息解除法もきちんと理解しておきたいですよね。

ということで、表題のようなタイトルにしてみました。

 

さらにワンポイントアドバイスをすると、窒息解除としてCPRを行なう場合は、胸骨圧迫から開始して下さい。

くれぐれも脈拍触知は行わないこと。

CPR開始というのを、心停止の認識から始めてしまうと、まだ脈がある可能性が大なので、肝心の胸骨圧迫ではなく、補助呼吸の手順に入ってしまう恐れがあるからです。

そのため、BLSプロバイダーマニュアルでも73ページの手順の中で、「胸骨圧迫からCPRをを開始する。脈拍は触知しない」とはっきり書いてあります。

 

以上、BLSプロバイダーコース の中で受講者のみなさんと確認している窒息解除のメカニズムの話でした。

プロフェッショナル向けのBLS講習では、「なぜ?」という理解が重要ですね。


4月14日(土)浜松で「BLS原理&心電図」公開講座を開きます!

静岡県浜松市内で精力的に活動している 命のバトン浜松 さんとの共催で、静岡での公開講座開催が決まりました。

心肺蘇生の原理とモニター心電図の基礎理解 公開講座by BLS横浜 at 静岡県浜松市

2時間半の講義スタイルのセミナーで、質の高いBLSに関する蘇生科学の理解と、AEDの動作に関連したモニター心電図の基礎をお話させてもらいます。

心電図というと、医療従事者のみと思われがちですが、今回は心肺蘇生法を深く知りたいと思う方であればどなたでもご参加いただけます。

少し難しい部分もあるかもしれませんが、救命法の指導員さんなどであれば、興味深く聞いていただけるのではないかと思います。

AEDでショックが必要な場合と、ショックが不要な場合の違いや、初期対応としてAEDを優先すべき場合と、人工呼吸を含めたCPRが優先される場合など、心肺蘇生法にまつわる「なぜ?」が、スッキリ解決するはず。

 
詳細と申し込みは、BLS横浜ホームページの専用ページをご参照ください。

 

「心肺蘇生の原理とモニター心電図の基礎理解」 公開講座
 静岡県浜松市浜北地域活動・研修センター
 9:30~12:00 参加費 500円(当日支払い)
 ※事前登録制

 http://bls.yokohama/seminar/bls-ecg_hamamatsu.html


Kiss of life

口対口人工呼吸のことをイギリス英語で、Kiss of life ということがあります。
give the kiss of life to ○○ といった感じで使うようです。

いまや救命法といったら、人工呼吸を省略する胸骨圧迫のみの蘇生法が主流なイメージですが、これはアメリカ文化に強い影響を受けています。

食生活が影響しているのか、米国では虚血性心疾患や心臓突然死が大きな問題となり、心臓病とともに蘇生法が発展してきた経緯があります。だから、心原性心停止(心室細動)が主要なテーマとなっています。

しかし、ヨーロッパは別で、蘇生練習用マネキンで有名なレールダル社のレサシアン誕生の逸話もあるように、蘇生法は水難事故との関連で発展してきました。つまり、呼吸原性心停止が基本にあります。


ヨーロッパ蘇生協議会のガイドライン2015ダウンロードページ

横にしたビア樽で体をくくりつけて伸ばすとか、馬の乗せて走らせるといったような胸郭運動を補助するような蘇生法が模索されていたCPRの歴史を聞いたことがある人もいるかもしれません。

2008年にアメリカ心臓協会が、国際コンセンサスとは別にHands only CPRを発表したときに、懸念の意を真っ先に示したのもヨーロッパ蘇生協議会でした。

そんなヨーロッパでは、最新のガイドライン2015でも人工呼吸の重要性が色濃く表現されています。
例えば、ヨーロッパでは、子どもへのCPR手順は、

 

気道確保

呼吸確認(正常な呼吸がない)

人工呼吸5回

胸骨圧迫15回

人工呼吸2回+胸骨圧迫15回

緊急通報

 

となっており、胸骨圧迫や通報より、人工呼吸が優先されるアルゴリズムになっています。米国事情を当たり前と思っていると、意外に感じる人もいるのではないでしょうか?

 

ヨーロッパ蘇生協議会ガイドライン2015の小児BLSアルゴリズム

 

Kiss of Lifeで発展してきたヨーロッパの救命法。

文化によって考え方がずいぶん違うものですね。

胸骨圧迫とAEDが全盛の今の時代、蘇生法の仕組みや歴史的背景を勉強してみるとおもしろいですよ。


AEDが「ショックは不要です」というとき

心停止は大きく分けて2種類あります。
 
AEDの電気ショックが必要な心停止と、電気ショックが不要(有効でない)な心停止です。
 
これを判断してくれるのがAEDですから、心停止と認識したら、可能であればすべての症例でAEDは装着するべきです。
 
つまり、市民向けプロトコルでは、「反応なし+10秒以内に正常な呼吸であると確信できない場合」ですし、医療者向けで言ったら、「反応なし+呼吸なしor死戦期呼吸+脈なし」であれば、CPRを開始しつつ、AEDがあれば直ちに装着します。
 
 
AEDの電気ショックのことを専門用語では「除細動」といいます。文字通り、心臓の細かい動き(震え)を取り除くのがAEDです。
 
心臓が細かく震えている心室細動や(無脈性)心室頻拍を検出した場合に限り、「ショックが必要です。充電します」と言って、電気ショックが実行されるようになっています。
 
もう一方のタイプの心停止、つまり心停止の中でも心静止(心電図がピーッと一直線の場合)や、なんらかの原因で血圧が低すぎて有効な血流がない状態などの無脈性電気活動(PEA)と呼ばれるタイプの場合は、心停止の原因が心臓の震えではありませんから、当然、AEDは「ショック不要」と判断します。しかしこれも心停止なのです。
 
ショック不要=心停止じゃない(生きている)というわけではない点、注意して下さい。
 
AEDは心電図の解析しかできませんから、生きているか心停止かの判断は人間が行わなければならない「仕様」になっています。
 
そのためAEDを装着する条件が規定されているわけです。
 
 
※市民向け: 「反応なし+呼吸なし」
※医療者向け: 「反応なし+呼吸なし+脈なし」
 
 
この点は、AEDの取扱説明書(添付文書)で規定されていますし、救命講習でもきちんと教える必要がある部分です。
 

 
 
 
「反応なし+呼吸なし」ということで、心停止と判断して、AEDを装着して解析させた結果、「ショックは不要です」と言われたのであれば、それは電気ショックが有効ではないタイプの心停止だということです。
 
この場合、除細動(AED)では救えないということですから、できることと言えば、救急車が到着するまでの間、できるだけ「質の高い」心肺蘇生法を継続することです。
 
目の前で卒倒した突然の心停止(心原性心停止疑い)の場合以外は、体の中の酸素が枯渇している状態ですから、もし人工呼吸をまだ開始していないのであれば、なんとか感染防護具を手に入れる努力をして、人工呼吸を始めるべき、といえるでしょう。
 
 
 

 
 

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溺水の救命のポイントは人工呼吸

「プールで男児溺れる 監視員が救出、搬送 千葉公園」(千葉日報2017年7月21日付)
 
 

プールで男児溺れる 監視員が救出、搬送 千葉公園
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/424745

 
プールの底から引き上げたら、意識なし、呼吸なし。人工呼吸をしたら自発呼吸が戻ったというニュース。
 
AHAの小児の救命の連鎖が示しているように、子どもの救命のための最大の武器はCPR(人工呼吸+胸骨圧迫)です。
 
喉頭痙攣による呼吸停止だったのか、低酸素による徐脈性PEA(無脈性電気活動)だったのかはわかりませんが、手早く人工呼吸に着手できたのが救命のポイントだったのではないでしょうか?
 
BLSの原則からすればAEDがあればただちに装着すべきですが、それと同じかそれ以上に、子どもや水辺の救命では人工呼吸が重要です。
 
心室細動に代表されるような心原性心停止であれば、AEDがなければ救命はほぼ絶望的ですが、呼吸原性心停止の可能性があれば人工呼吸+胸骨圧迫だけでも救える可能性があります。
 
AEDが「ショックは不要です」と判断したら、呼吸原性心停止の可能性が考えられますから、今どきの Hands only CPR の概念から切り替えて、人工呼吸の実施も積極的に考えていきたいものです。
 
 
 

 
 

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喉に物が詰まったときのファーストエイド【反応なしの場合】のメカニズム

ガイドライン2015のAHA-BLS講習で変わったところといえば、蘇生科学の解説が丁寧で詳細になったというところです。
 
旧G2010版ではハートセイバーコースにしか入っていなかった死戦期呼吸や心室細動の動画も盛り込まれましたし、古典的手技とも言える窒息解除についても、初めてそのメカニズムの説明が載りました。
 
ハイムリック法(腹部突き上げ法)で気道異物が解除できずに意識を失った場合は、「胸骨圧迫からCPRを行う」のが正解ですが、その理由が明かされています。
 

airway-obstraction.jpg

 
意識を失うと気道も含めて筋弛緩するため、隙間ができる可能性がある。そこに胸骨圧迫で間欠的に陽圧をかけることで異物が口腔内に押し出させる可能性がある。だから30回の圧迫を先に行い、そのあと口腔内を確認してから人工呼吸を行う。
 
このあたりはインストラクターでも知らない人が多かった印象がありますが、G2015ではプロバイダーレベルでの常識になりますね。
 
 

 
 

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心肺蘇生法のしくみ

心肺蘇生法(CPR)は、自発呼吸が停止し、心臓の拍出機能が停止もしくは著しく停止した人に対して行う救命処置です。
 
人が生きるためには酸素が必要です。大気中の酸素を体の細胞に届ける機能を代行するがCPR、と考えてみてください。
 
酸素の流れで考えます。
 
自発呼吸が止まっているから、強制的に肺に空気(酸素)を送り込むのが人工呼吸です。その名の通りですね。
 
肺に達した酸素は、肺胞から血液中に血液ガスとして溶け込みます。
 
血液に酸素が溶けこんでも、それが循環しなければ、体の各細胞には届きません。
そこで胸骨圧迫です。
 
血液のポンプ機能が停止した心臓に代わって、胸骨の上から強く速くおして、血液の流れを生み出します。
 
こうして、はじめて大気中の酸素が体の各細胞へ届けられるのです。
 
なので、基本的には、
 
 
人工呼吸 → 胸骨圧迫
 
 
という流れが自然です。
 
しかし、最近は、
 
 
胸骨圧迫 → (人工呼吸)
 
 
という図式が定着してきています。
 
逆ですよね? しかも、人工呼吸は( )付き。省略してもよいという論調。
 
なぜでしょうか?
 
ヒントですが、「人工呼吸をしなくても、血液中に酸素が溶け込んでいる状況なら」、と考えれば、納得いきませんか?
 
心肺停止状態が発生する”なりゆき”を考えてみます。
 
もし、突然に心臓の機能と呼吸機能が同時に停まったとしたら、、、、
 
直前まで普通に呼吸をしていたわけですから、血液中には酸素が溶け込んでいますよね?
 
問題は、心臓の血液ポンプ機能が停まったから、血液中の酸素が細胞に届けられない。
 
そんな状況だったら、人工呼吸で手間取るより、すぐに胸を押して、血液循環を生み出すほうが大切。
 
これが最近、よく言われる胸骨圧迫のみのハンズオンリーCPR(Hands only CPR)の基本原理です。
 
 
 
 
しかし、もう一歩踏み込んで考えてみてください。
 
血液中に酸素が溶け込んでいる状態だからこそ、胸骨圧迫だけでいい。
 
しかしもし、血液中の酸素が使い果たされた状況で起きた心停止だったらどうでしょう?
 
たとえば、水に溺れて息ができなくて心肺停止になった状況とか、呼吸困難で意識を失って心肺停止になったとか。
 
この場合、体の中の酸素を使い果たしてしまったから、心臓まで止まってしまったと考えられます。
 
人が生きるしくみは、大気中の酸素を体の中の細胞に送り届けること。
 
胸骨圧迫だけで血液循環を促しても、送り届けたい酸素が血液中になければ、あまり効果的でないのはわかりますよね?
 
つまり、心肺蘇生法のしくみを考えた時に、Hands only CPRよりは、人工呼吸もきちんと行った蘇生法のほうが好ましい状況もあるのです。
 
世の中の一般的な統計では、心臓突然死、つまりが心臓と呼吸機能が同時にとまるケースが最も多いと言われ、社会的に問題になっています。
 
そこに着目すれば、Hands only CPRという誰でもできる簡便な蘇生法の普及が劇的に効果が期待できます。
 
しかし、子どもに多い呼吸のトラブルに起因した呼吸原性心停止や、プールや水辺の事故に対応する可能性が高い職業人にとっては、胸骨圧迫だけの心肺蘇生法では不十分かもしれない、とも言えます。
 
人工呼吸は技術的に難易度がやや高く、体液からの病気が感染するリスクや、心理的抵抗など、ややハードルが高いのは事実です。
 
しかし、呼吸のトラブルが想定される専門職であれば、素人レベルで言う「難しさ」は物ともせず、目の前で起きたことには適切に対応するという気概でしっかりと訓練をしてほしいと思います。
 
 

 

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喉にモノが詰まったときの対応【気道異物による窒息の解除法】

喉にモノが詰まったときの解除法の基本は、咳をするように促すこと。
 
自分で咳ができない完全閉塞なら、下の方を向かせて背中を強く叩いてあげましょう。
 
ダメだったら、詰まった人の後ろに回って、両手で拳を作ってヘソの少し上あたりを強く圧迫する腹部突き上げ法を。ハイムリック法とも言います。
 
背中を叩いても、お腹を圧迫しても詰まったものが取れなくて、意識を失ってしまったら、次にやるのは「胸部突き上げ法」です。床に寝かせて、胸骨圧迫(心臓マッサージ)とまったく同じことをやります。肺を勢いよく圧縮することで、空気を押し出して詰まったものを飛ばそうとする解除法です。
 
反応(意識)がなくなってからの窒息解除法は「CPRをしましょう」と表現されることもありますが、「大丈夫ですか?」から始める必要はありません。いきなり胸骨圧迫をはじめてください。(もちろん他に人がいれば通報の依頼を!)
 
ヘルスケアプロバイダーレベルでBLSを学んでいる人は、反応がない窒息者への解除では、決して脈拍を取らないように!、というのが注意点。
 
BLSのアルゴリズムに従って行動した場合、「反応なし+呼吸なし+脈あり」となりますので、《補助呼吸》に行き着いてしまうからです。窒息解除に必要なのは、CPRの中でも人工呼吸ではなく、胸骨圧迫(胸部突き上げ法)です。
 
 
窒息解除における胸骨圧迫は、血流を生み出すのではなく、詰まった異物を押し出すのが目的だという点を理解しておいてください。
 
 
 

 

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心肺蘇生法における年齢区分の違い

※以下、AHAガイドライン2010での市民向け/医療者向け心肺蘇生法、またはJRCガイドライン2010の医療者向け勧告の内容なのでご注意ください。
 
 
●大人と子どもの蘇生法は違いますが、その区分は思春期
 
●AEDの小児用パッド(システム)の適応は8歳未満 (JRCガイドラインでは就学年齢未満)

 
 
心肺蘇生法を勉強すると、このふたつの年齢区分が出てきます。
 
そこでたまに質問されるのは、
 
「すごく小さな子どもみたいな体型の大人がいた場合、どうしたらいいですか?」
「大人みたいな大柄な6歳の子、どうしたらいいですか?」
 
インストラクターの皆さん、こんな質問を受けたらどう答えますか?
 
年齢区分の意味合いの違いを理解していないと、正しく答えることができないかもしれません。
 
CPR開始が優先か、通報(AED手配)優先か、という蘇生手順の違いは、思春期を迎えたかどうかで区別しますが、これは体の発達、特に呼吸器系の完成の有無を意味しています。つまり、子ども特有の呼吸原性心停止リスクが残っているかどうか、という点が問題となります。
 
ですから、いくら体格が小さくても、年齢が思春期を越えていれば、一般に大人向け蘇生法が適応されます。
 
一方、AEDの小児用パッドの適応は、体重で計算されます。小児用パッドはショックのエネルギーが1/3の50Jに減衰されるようになっています(フィリップス社のFR2の場合)。G2005の時代には、体重25キロ未満は小児用パッドという言い方をすることもありました。小児の場合、手動式除細動器を使う場合は体重1キロあたり2Jで計算されます。ですから、医学的に判断すれば、大型な子どもの場合は成人用パッドを使った方がいい場合も考えられます。
 
ただ、AEDの場合は医学的な判断のほかに、法的な根拠も加味しなければなりません。薬事承認を得た医療器具ですから、その添付文書に従った操作が求められます。そこで基準として就学年齢未満とされているのであれば、医師以外はそれに従うべきです。
 
日本版JRCガイドラインと米国版AHAガイドラインで、小児用パッドの適応基準が異なっていますが、薬事承認も含めた政治的理由によるもので、医学的に言えば、8歳であっても就学年齢であっても、絶対的な意味はありません。そういう「お約束」という理解が妥当でしょう。
 
具体的に、どう答えるかは質問してきた相手の立場にもよりますので、一概には言えませんが、このような根拠を知っていると、応用が聞くのではないでしょうか?
 
 
追記:消防や日本赤十字など、日本版JRCガイドライン2010で学ばれる方は、基本的に子どもを区別する概念が廃止されていますので、ご注意下さい。”ユニバーサル化”ということで、日本標準の市民向けの教え方では、すべて大人向けのやり方に統合されています。
 
 

 
 
 

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