「エピペン&小児BLS」講習は応用力を鍛えるプログラム

今日は、湘南のインターナショナル・スクールで「エピペン&小児BLS」講習でした。

 

これは単に「エピペン講習」と「小児心肺蘇生法講習」をくっつけただけではなく、その間をシームレスにつなげたBLS横浜オリジナル講習です。

この2つの間をつなぐのが、「生命危機の評価と観察の視点」です。

アナフィラキシーを起こした子どもがどのように命を落としていくか、またそこに「介入」することで、どのようにして生に向かって転じていくかを知れば、エピペン注射や気道確保、人工呼吸と胸骨圧迫の意味と必要性が理解できます。

その過程で体に起こる変化を見て、好転しているのか、悪化しているのかを予測して、介入し、観察・記録して救急隊員に引き継ぐこと。

こんな、エピペン講習だけ/BLS講習だけではない、新たな価値観で両者をつなげたのがBLS横浜の工夫です。

結局、「エピペン&小児BLS」講習の中身はファーストエイド講習の本質部分にかなり食い込んでいると言えます。アナフィラキシー・ショックとCPRを例題にして、末端技術にとらわれないファーストエイド的思考の理解を促したと言えるかもしれません。

その証拠に、この研修の後、受講いただいたインターナショナル・スクールの先生たち(特別な医療の知識がある方たちではありません)にこんな質問をすると、教えたわけではないのに自分たちで考えて答えを導き出せました。

 

「子どもが突然けいれん発作を起しました。痙攣が停まった後、意識がなさそうです。なにを観察して、どう行動したらいいですか?」

 

人が生きるしくみと死ぬしくみを理解すれば、痙攣のファーストエイドを勉強していなくても、問題の本質を考え、対応できるようになるのです。

実際のところ、けいれん発作の原因は、てんかんかもしれませんし、低血糖かもしれませんし、熱中症かもしれませんし、突然の心停止かもしれません。

病名を探ろうとすると、思考停止に陥ります。医師ではない人間がわかるわけありません。しかし原因は何であろうと、今は目の前に意識がない子どもが倒れているのです。そんな本質に気づけば、簡単です。

  • 呼吸確認をする → 10秒でよくわからなければCPR開始と119番
  • 呼吸をしていれば、気道確保(体位と口腔内確認)と119番、呼吸が停まらないか観察を続ける。余裕があれば転倒時の外傷チェック等
  • 呼吸が停まれば、CPR開始

基本的な考え方を「理解」すれば、ファーストエイドはそれほど難しいものではありません。

幅広い知識より、この本質部分を伝えていきたいと思います。

 

※「エピペン&小児BLS」講習は、次回、公募で6月12日(火)に開催します。若干名残席あります。 → BLS横浜ホームページ


止血帯(ターニケット)使用トレーニング考

ガイドライン2015準拠日本語DVDが発売開始になって、ようやく本格稼働が始まった AHAハートセイバー・ファーストエイドコース。米国のファーストエイド講習では、G2010に引き続いて止血帯の使用が解説されています。

ということで、今日は、止血帯(ターニケット)の話題を少々。

圧迫止血でコントロールできない四肢からの大出血の場合には、上腕部や大腿部をきつく締め上げることで、動脈を遮断して出血を停める止血帯法が米国では推奨されています。

日本でも以前は折り畳んだ三角巾と棒きれを使った止血練習が救急法講習で取り入れられていましたが、2005年の「救急蘇生法の指針」の改定で止血帯は非推奨となり、そのままJRCガイドライン2015までは救急法教育からは封印されてきました。

しかし、ここ最近の日本国内事情を見てみると、東京オリンピックのテロ対策として、東京消防庁が救急隊に軍用ターニケットを配備するなど、日本においても止血帯への注目が高まってきています。

聞くところによると、日本国内の応急手当普及団体の中でも講習プログラムの中に再び止血帯使用を盛り込んでいくことも検討されているとか、、、、

BLS横浜では、ハートセイバー・ファーストエイドコースの中で、軍用ターニケットの使用を皆さんに体験してもらっていますが、基本的なスタンスとしては、市民救護にターニケットは不要であり、むしろ危険である、という立場を取っています。

この点を解説していきます。

1.止血帯が非推奨から推奨に転じた背景

米国においても、2005年版のAHA/ARCファーストエイドガイドラインで推奨されなくなった止血帯ですが、5年後の2010年には、再び推奨に転じました。

急展開に見えましたが、その背後にあったのはアフガニスタンなど戦線激化による米軍兵士による使用実績増加でした。

米軍兵士への軍用ターニケットの標準装備が進み、軍事衝突の機会が増えたので使用実績があがり、その有用性が確立されたというわけです。

つまり、ガイドライン改訂に至った止血帯が有効であるという根拠は、「戦時下において訓練を受けた兵士が既製品を使った場合」という条件付きのものであったという点を理解しておく必要があります。

・既製品としての止血帯
・軍人としての訓練を受けている
・救護が受けにくい戦闘状況での使用

こうした条件は、極めて特殊なものと言わざるを得ません。

このことを持って、市民の応急救護においても有用であると言えるのか? という点は熟考する必要があります。

2.止血帯使用のリスクと教育

応急救護、ファーストエイドの基本ですが、何かの介入をする、すなわち処置や手当を行う以上、それには必ず潜在的なリスクが伴います。

BLS/CPRは例外で、この場合は心停止という究極の条件下になりますから、それ以上、悪化することは論理的にあり得ません。メリットとデメリットのうち、デメリットは無視できるのです。だから、何もしないよりは、多少間違ってもいい、なんでもいいからやりましょう、と言われているわけです。

しかし、出血対応も含めてファーストエイド介入は生きている人間に対して行うことですから、それによって状態が悪化させてしまう、別の傷害を与えてしまうというデメリットを考慮しなければなりません。

つまり、止血法の場合は、止血帯使用の弊害やそれによって引き起こされる有害事象について知らない、判断できない人が使うべきではないということです。

ここでは詳説はしませんが、止血帯の使用に際しては下記のような有害事象が考えられます。

・締め付けによる疼痛
・神経損傷
・中途半端な加圧による出血量増加(静脈閉塞、動脈開存)
・末梢虚血による組織壊死(切断のリスク)
・圧迫解除によるクラッシュ症候群(高カリウム血症による心停止)

これらのデメリットを理解した上で、止血帯を使用するメリットの方が勝るという判断があって、はじめて止血帯が適応となります。

大出血を見たら止血帯! というものではないということです。

この判断のためには出血という事象に対する理解も不可欠です。

そもそもどれくらいの出血だったら止血帯が適応となるのか?
それをどうやって判断するのか?

そのためには、人体にある血液がどれくらいあるのか? そして命に関わる出血があった場合の身体症状といった基礎的な理解も欠かせません。

これらが止血帯を使う上での必要な基礎教育に含まれているべきでしょう。

これがターニケット使用訓練を受けている、ということの意味です。

単に器具としての止血帯の操作方法がわかるというだけでは不十分ですし、それだけしか知らない人が使うとしたら、それははかえって危険であると言わざるを得ません。

3.軍隊におけるターニケット使用教育

今、日本国内の救護情勢として止血帯といったら、既成の軍用ターニケットのことを指します。軍用品で、戦地での実績から来たものなので、その使用方法は軍での教育が参考にされているものと思われます。

そこで軍隊におけるターニケット教育はどのようなものなのかということで、某陸軍の新兵向け教育を知る機会がありましたが、そこではっきり感じたのは、日本の市街地で医療従事者以外が使うことを前提としたファーストエイド訓練には使えない、という点でした。

最大の問題と感じたのは、軍隊教育では、止血帯が適応となる出血とそうでない出血の評価という視点がなかったことです。

戦地においては四肢を打たれたら、打たれた人は条件反射的に自分自身にターニケットを巻ように教育されています。

傷の大きさとか出血量とか、そんな判断はせずに、とにかく打たれて血が出たらターニケットを1秒でも早く巻く。

弾丸が飛び交っている戦場を想定したターニケット使用教育は、いかにすばやく確実に巻くかであって、理屈抜きの条件反射、単なるテクニカルスキルのトレーニングなのです。

4.日本の市民向けファーストエイドで止血帯が必要か?

このような背景を考えると、軍需から生じた止血帯のニーズを、日本の市民向けファーストエイド教育にそのまま入れ込むことは不適切と考えます。

戦場において、安全確保ができない状況下でのセルフレスキューとしてターニケットが発展してきました。

日本国内において、他者を救護する立場としては、直接圧迫止血法を試みるのが第一義なのは変わりません。他者が直接圧迫を続けることができれば、完全止血までは行かないとしてもある程度コントロールできます。

出血をしながらも自力で、離脱しなければいけない状況ではないからです。

救急車が来れないような野外環境下などにおいては、ターニケットが適応となる場面もあるかもしれません。

しかし、そのための教育としては、軍隊式のターニケットありきの教育をしたのでは、不必要なのにターニケットを使用したことで重大な傷害を残す事故が多発するでしょう。

軍隊式の教育とは別の市民向けターニケット使用研修が必要です。

5.まとめ

日本では、米軍にならってかなり前から自衛隊員にもターニケットが配備されています。

そして去年になって、オリンピックのテロ対策という名目で東京消防庁の救急隊員にも軍用ターニケットが配備されるようになりました。

昨今ではコンバット・メディスン(戦闘救護)の官向け、民間向け研修も広がりを見せており、医療資格を持たない人に向けた止血帯使用トレーニングの機会も増えていくことが予想されます。

この点で、これまで当ブログで取り上げてきた ウィルダネス・ファーストエイドにおける医行為の問題 や、打ち方だけの練習で形骸化したエピペン講習と同じような、命と医療と救護の狭間のグレーゾーンな懸念材料が増えていくことを危惧しています。

使わなければ死んじゃうんでしょ?

そんな安直な考えに立脚した誤った正義感が、出血コントロールの問題にも広がっていかないように願っています。


エピペン研修のシミュレーションネタとデブリーフィングツールを公開

今日は、千葉県の子育て支援事業として開催された保育所職員向けアレルギー・エピペン研修の講師で登壇させていただきました。

参加人数が120名と多かったので、ふだん横浜でやっているようなインストラクターによる傷病者の演技はできず、演技指示を紙に書いて、受講者に傷病者を演じてもらうことで対応しました。

今回は、県内の各保育園から集まってきた人たち。同じ職場の人はいないという学習環境です。

この場合の研修の目的は、参加して満足してもらうのではなく、トレーニング手法を各職場に持ち帰ってもらい、そこで身のある伝達研修をしてもらうことにあります。

120名を5人に分かれてもらい、アナフィラキシーを起こした園児役、119番指令員ならびに救急隊員役、その他3人の先生たちでエピペン注射と介助と記録と通報とを行ってもらいました。

全24組をインストラクター1名で管理するのはたいへん。

そこで、今回は紙の指示書を活用が、思いのほか、うまくいきました。

かなり盛り上がった(?)シミュレーションで、その後ブースごとの振り返りも非常に活発でした。

そのカラクリとなった指示書を公開します。

参加者の皆さんは、自主的に携帯で写真を撮ってる方が多いのが印象的でした。(その後、コピーを全員に配りました)

シミュレーションの進め方は詳説はしませんが、見てもらえばなんとなくわかるんじゃないかと思います。
エピペン研修を手がけている関係者の方の参考になると幸いです。


保育士さんがポケットマスクと初遭遇するとき

今日は、山梨県にある子育て支援センターからの依頼で、親御さん向けの1時間半のファーストエイド講習と、保育士・保健師向けの健康管理ワークショップで登壇させていただきました。

今回いただいた小児専門家向けワークショップのテーマは「子どもの日常的な健康チェック」だったのですが、なにをもって「この子は元気」と判断するのか? という点で、「生命危機の兆候が見られない」ことを日々観察するという流れでお話させていただきました。

子どもですから様子がおかしいことは、ちょくちょくあると思います。それが生命危機につながるものなのかどうかがある程度判断できれば、いざというときは迅速に対応できますし、そうでない場合は安心できます。

観察するというと異常を探すという視点になりがちですが、危険な兆候が見られない、だから大丈夫という判断も意味ある重要な考え方です。

生命危機状態の成れの果て、最悪の事態とも言えるのが心肺停止です。

ご参加頂いた皆様は基本的な心肺蘇生法は習得済みでしたが、子どもが命を落とす原因と絡めての話は新鮮な気持ちで聞いていただいたようです。

大人とは違う子どもに特化した蘇生法では、人工呼吸は必須です。決して積極的に省略して良いものではありません。

今日は、おまけの話として、小児BLSでは人工呼吸が大切という話をしたのですが、皆さんが「初耳!」ということで注目されたのが、ポケットマスクでした。

口対口人工呼吸は、フェイスシールドを使って練習したことがあっても、日頃、フェイスシールドなんて持っていないし、あったとしても(気持ち的に)できる自信がないというのが正直なところだったようです。

それが、今回初めてポケットマスクの存在を知り、「これならできる!」と感じていただけたようです。今回は心肺蘇生法講習ではなかったので、デモ用のマネキン1体しか持ってきていませんでしたが、念のためということで参加者人数分の一方向弁(マウスピース)を持ってきていて良かったです。

参加者のほとんど人が講習後も残ってポケットマスク人工呼吸を体験して行かれました。

「これならできる気がします。施設で買ってもらえるようにします」

そんな声が聞かれました。

蘇生ガイドライン2010で、心肺蘇生法の手順が人工呼吸優先のA-B-Cから、胸骨圧迫優先のC-A-Bに変更されたのは、人工呼吸の心的抵抗を考慮した教育心理的な方策でした。

「息をして酸素を取り込んで、血液循環に乗せて体の各細胞に酸素を届ける」という人が生きる根源的なしくみを考えたら、A(気道)-B(呼吸)-C(循環)という流れは絶対的な真理なのですが、あえてそれを崩したのは、蘇生法を絵に描いた餅にしないため、心理的な障壁を下げるためでした。

しかし、子どもの心停止や溺水では必須とされる人工呼吸についてはビニールシート1枚で勇気を奮ってやるように、という教育がいまだ続いていて、呼吸原性心停止が多いとされる子どもの緊急事態に一定の対応義務が課されるチャイルドケア・プロフェッショナルに対しても自己犠牲的な勇気が求められるのは、あまりに非現実的なことです。

気持ち的には嫌なこと、でも嫌とは言えないし、どうしよう。

そんなもやもや感が、ポケットマスクという道具ひとつで解消されるのですから、なんでそれを知らなかったのだろう、という感想もいただきました。

古来からの救命教育は、「人間愛と根性」に支えられていたような気がします。

しかし、仕事の上で救命しなければならないのであれば、それは業務です。

もっとビジネスライクに、道具やシステムの改善でどうにかなる部分はどんどんそっちに任せて、個人の負担は減らすべきなのです。

たかだか2−3千円のポケットマスク。

それで保育者も傷病者も助かるのなら、、、と思います。


PEARS®を知ると看護業務の仕方が変わる

BLS横浜でも提供しているアメリカ心臓協会のPEARS®プロバイダーコース。

PEARS®を受講した看護師さんからは、「日々の仕事の仕方が変わった」という感想をいただくことが多いです。

PEARS®は、BLSやACLSと同じ急変対応研修のひとつと思われがちですが、そこで身につけるスキルは急変時だけに使うものではありません。ここがPEARS®とBLS/ACLSの大きな違いです。

PEARS®コースで学ぶのは、「酸素化と灌流」という人間(動物)が生きる基本的なしくみとそれが破綻するメカニズムを理解すること。そして、その変化を先読みして、予兆を探す訓練、さらに他者を巻き込み、救命の連鎖をつなげることで患者の安定化を図る(心停止を予防する)ということです。

通常の医療現場における観察は、現状維持を確認することがメインで、ある意味、「変わらない」ということを前提に見ていることが多いのではないでしょうか。

しかし、この視点を「変わるかも、、、こういう症状が出てくるかもしれない」に変えると、あたりまえですが、「気づく」レベルが上がります。

なにかあったら報告してください、とはよくいいますが、その「なにか」がわからないから、見落としてしまうのです。

その点、PEARS®を勉強すると、生命維持が破綻しかけてくると、人体にどんな変化が現れるかがわかるようになります。

そうなると、それらの「症状が出ていない」ことを確認するのが日々の観察の視点となるのです。

変化なしというのは、予想される症状が出現していないということです。この考え方は看護師教育ではあまり教えられることがない部分かもしれません。そんな思考をPEARSのシミュレーションから身につけることができるようになるのです。

 

これが、おそらく日々の業務の仕方が変わった、という感想につながってくる部分なのではないかと思っています。

看護師の記録では、「著変なし」といった現状維持を示す記載をよく見かけますが、病態から懸念される悪化傾向がはっきり頭の中にあれば、「○○は見られない」といった具体的な記載に変わるかもしれませんし、記録として残すアセスメントも、もっと焦点化された内容になるかもしれません。

先読みができるということ。

大抵の場合は、懸念していたことが起きずに終わることが多いと思います。

しかし、そこで「こんなことがあるかも」と考え、その生理学的身体的変化をイメージして、予測的に関わっていくようになると、日々の仕事の取り組みがまるで違ったものになる可能性があります。

 

例えはうまくないかもしれませんが、オフィスビルの入り口に立っている警備員を想像してみてください。今日もなにもないんだろうなと思いながら立っているのと、「もしかしたらあの人はテロリストかもしれない」と常に考えて立っているのでは、仕事の密度は違いますし、仕事が終わった後の達成感も違うかもしれません。

今日も暇だったなと思って終わるのか、今日も何事もなく仕事を負えられたと思えるのか。

 

PEARS®は、医療現場にいる臨床家としての基本姿勢や考え方にも大きなインパクトを与える可能性を秘めています。

 

PEARS®プロバイダーコース


2017年 BLS横浜講習開催実績

今日は、12月31日。

2017年の講習開催実績を取りまとめてみました。

 

今年は、ACLSプロバイダーコースや、BLSインストラクターコースが新たに刷新されたこともあり、力をいれて開催していました。

また今年は保育園からの小児BLSやエピペンの依頼講習が多い年でもありました。

東京都内や神奈川、千葉などへの出張講習だけで6回ほど保育園にお邪魔させてもらいました。

また、BLSやPEARSトレーニングサイト設立支援で、地方への出張講習も多く、1-2ヶ月に1度は飛行機に乗っていたような気がします。

幸い、横浜という地は、AHA講習を手がける団体が10近くあり、BLS講習を受けようと思ったら選択肢が沢山あります。

しかし、関東圏外に目を向けると、医療者としては基礎技術であるBLSにしても、気軽には学べる環境ではないことが珍しくはありません。

地方からの要請で現地に赴き、お話を聴く中で強く感じた点です。

そこで来年度は、時間の許す限り、関東圏以外の出張講習を増やしていきたいと思っています。

経費的には、BLSやACLS、PEARSであれば、受講者おおむね4名から6名が集まれば、出張講習が可能です。せっかく行くなら、それと併せて地域で求められるミニセミナー(心電図や急変対応の観察のポイント、エピペン、CPR指導員向け勉強会など)も展開できれば、、、ということで、お気軽にお声がけ下さい。

横浜での新展開としては、なかなか手がつけられず進んでいなかったAHA Heartsaver Pediatrci First Aid CPR AEDコースのレギュラー開催や、G2015版のPEARSプロバイダーコースへの着手、またPALSプロバイダーコース開催、ACLSインストラクターコースなども2018年度は手がけていきたいと思っています。

無料の復習参加も歓迎していますので、今年度、講習に参加くださった皆様も引き続き2018年度もよろしくお願いいたします。


医療者向けBLS講習と、市民向け心肺蘇生法講習は違います

BLS横浜は、心肺蘇生法教育に関しては下記の3つのジャンルの講習を展開しています。

・一般市民向け
・業務上の対応責務がある市民向け
・医療従事者向け

一言に心肺蘇生法とかCPRと言っても、こうした3つの区分があり、それぞれ内容や教え方は違っています。

しかし、日本国内の一般的な救命法普及団体の動向を見ると、医療者向けと市民向けで団体そのもののカラーというか、対応領域がはっきり別れていて、市民向け講習もやりつつ、医療従事者向けの講習もしているというところは多くないように思います。

例えば、日本赤十字社や消防庁、MFAやEFRのプログラムは、一般市民もしくは対応責務のある市民向けのみで、医療従事者レベルの講習は展開していません。

逆に日本救急医学会のICLSやBLSは、医療従事者を前提としたものであり、市民向け教育は一切行っていません。

またアメリカ心臓協会(AHA)の活動拠点でも、市民救助者向けのハートセイバーコースや、一般市民向けのファミリー&フレンズ講習をレギュラー開催しているところは多くはありません。

 

もともと日本国内の市民向け救命講習のみを手がけている団体やインストラクターはいいのですが、日頃、医療従事者相手の講習をメインで指導している人が、たまに市民向け講習を依頼された場合に、いろいろ問題が起こりがちです。

医療従事者向け講習と、市民向け講習は違う、という認識と理解の問題なのですが、ややこしいところなので、整理しておきたいと思います。

1.市民向け講習では、脈拍触知は教えない

市民向けのCPR開始の判断は、「反応なし+呼吸なし or 死戦期呼吸」です。息をしていなければ循環も停まっていると考えます。ゆえに「補助呼吸 Rescue Breathing」という概念はありません。例えば溺水などで呼吸は停まったけど、まだ心臓は動いているという場合であっても、市民には胸骨圧迫をするように教えています。

この点、医療従事者は違和感を感じるかもしれませんが、考えてみれば、無脈性電気活動(PEA)は、血圧が低すぎるだけで心臓が動いているという状況でも、現に胸骨圧迫はしているわけですから、大きな問題ではありません。

2.圧迫の深さは6cmを越えない、ということは教えない

これは医療従事者向け講習であっても同じなのですが、ガイドラインに書いてあるからと言って、「6センチを越えるな」という指導はむやみには行いません。JRCガイドライン準拠では「約5cm」、AHAガイドライン準拠では「少なくとも5cm」とだけ指導します。

5cm以上かつ6cm未満と言われて、この幅1センチを正確に押せる人がいるか、という話です。そして6センチを越えるなと言われたら、人間心理としてどうしても浅くなります。強すぎる害より、弱すぎる害の方が問題ということで、指導書レベルでは、フィードバック装置を使わない限りは6センチを越えないという指導は行わないことになっています。

3.AEDの充電中に胸骨圧迫するのはNG

病院内で使う手動式除細動器の場合、心電図の解析後に患者から手を離した後、充電中のわずかな時間でも胸骨圧迫を再開するように強く推奨されていて、これは病院の現場でもだいぶ浸透してきています。

しかし AEDは別 です。この点は、ACLSプロバイダーマニュアルG2015の96ページにもはっきり書かれていますが、AEDは製品仕様に従うことが前提の道具ですから、AEDから胸骨圧迫再開の指示があるまでは触れてはいけません。

今現在、日本で認可されているAEDで、充電中に胸骨圧迫をするように促す仕様の機械はありませんし、胸骨圧迫を自発的な体動と誤検出して充電がキャンセルされるリスクがありますので、少なくとも市民向け講習や、医療者向けであっても不特定多数向けの一般講習でこのように教えるのは不適切です。

4.AEDでショック後は、ただちに圧迫再開ではなく、音声を聴くように指導する

これは前述のこととも関係しますが、AEDはその設計仕様に従って、つまり音声メッセージに従うことで正しく使用できる、というコンセプトの道具です。機種ごとに挙動が違いますから、講習で教えるべきことは、「メッセージを一生懸命聞いて、それに従う」という態度に関するスキルと言えます。

先回りして行動することを教えるのは、正しい態度とはいえません。

医学的な判断からすると、ショック後にただちに胸骨圧迫を開始するのは意味があることですが、本来は医師以外が使えない危険な道具を市民が使っていいという前提は「音声指示に従う」からこそ安全性が担保されているわけです、この点を尊重すべきです。

非常に稀ではありますが、日本では今でもG2000仕様の3回連続ショックするタイプのAEDが残っている可能性があります。ゆえに未知のAEDを使う可能性がある人向けの講習では、この点が特に重要です。

5.人工呼吸を省略してはいけない場合がある

市民向け救命講習と言えば、最近では、人工呼吸はまったく教えなかったり、指導したとしても「やらなくてもいいからね」と言った伝え方が多くなっているようです。しかし、このような指導スタンスは、見ず知らずの人を善意で助けるのが前提のバイスタンダーCPR講習にはいいのですが、例えば、幼稚園や保育園、小学校の教職員向け研修としては適切とは言えませんし、プールの監視員向けの救命講習では、間違いと言わざるを得ません。

子どもや溺水者など、低酸素による心停止が疑われるケースでは、胸骨圧迫のみを行っても、組織と細胞の酸素化は期待できません。血液に酸素を溶け込ませるための人工呼吸があるからこそ、胸骨圧迫の意味がでてくるからです。

人工呼吸の省略は、基本的にはCPR着手の心的障壁を減らすのが目的で、目の前で卒倒した成人傷病者にのみ適応されるということでスタートした概念です。これはバイスタンダーCPRの向上を目的としています。

ですから、保育士や学校教職員、プールの監視員などのような管理責任がある立場、つまり「バイスタンダーではない」人は、人工呼吸が心的障壁にならないように、きちんとしたバリアデバイスの準備と訓練をしておく必要があるということです。

このあたりの区別は講習会の導入の動機づけの部分でも、一般市民向け講習とは違ってくるはずです。

まとめ

以上、ざっと医療者向けBLS講習と市民向け救命講習の違いを中心に、指導員が注意すべき点をざっと取り上げてみました。

一般市民の受講者は、医師や看護師が教えてくれたことは、おそらく無条件で受け入れます。「お医者さんが言っていたんだから絶対に正しい」と信じ込みます。だからこそ、市民向け講習ほど慎重に取り組む必要がありますし、そこで市民にとっては不適切なことを教えてしまったり、誤解させてしまったら致命的です。

日頃医療従事者相手に教えているから、市民向けは簡単などと思っていたら大間違い。

指導員の力量としては、市民向け講習のほうが格段に難しく、高度な理解と指導力、対応力が求められるのです。

この他、今回は取り上げませんでしたが、日本版ガイドラインと米国版ガイドラインの違いも重要です。特に日頃、AHAインストラクターをしている人が、一般市民向けに教えるときに間違いやすい落とし穴もたくさんあります。

そういった意味で、国内で市民向け講習を手がける医療従事者インストラクターは、救急蘇生法の指針2015【市民用・解説編】 は必携、熟読の必要があるでしょう。日本国内の市民向け救命講習は、基本的にこの本を準拠として作られているという原本的な資料です。

BLS講習でもよく聞かれるようなQ&Aコーナーも充実しており、例えば「AEDの電気ショックって何ボルトくらい?」みたいな質問へのヒントも載っていて、読み物としても普通に勉強になります。


看護学生さんから見たPEARSプロバイダーコース

BLS横浜主催の PEARSプロバイダーコース with シミュレーション を受講してくださった看護学生さんから、感想を頂きました。

看護学生の実習前のトレーニングにも最適なPEARSプロバイダーコース

このときは、現役の看護師さん4名と、救急救命士さん1名、そして看護大学4年生の学生さん1人という6人編成。

そんななかで、学生さんが感じたこととは、、、

 

受講前は、他の受講者の方は臨床経験を積んだ上での受講で、学生の自分が参加するのは早すぎるのではないかと不安に思っておりました。

ですが、実際受講してみてPEARSで学ぶ体系的アプローチの方法は、小児だけでなく成人にも通ずる部分が多数あり、(第一印象による評価、ABCDEによる一次評価の方法など)これらの概念を実習へ行く前に知っておきたかったと感じました。

私は実習中、報告を行うことが苦手でした。

観察から得た情報を適切に他者に伝えていくことが重要であることは理解していましたが、いざ報告となるとあれもこれも…と情報を盛り込んでしまい、上手く報告することができていませんでした。

PEARSプロバイダーコースの中で、SBAR を用いた報告のシュミレーションを行いましたが、A-B-C-D-E評価を用いることで、どこに問題が生じているのかつかみやすく、おのずと報告の方向性を見出すことに繋がりました。

学生のうちに受講することは決して性急なことではないと感じています。

実習に行く前の基礎看護学や成人看護学などを学んだ段階など、もっと早い時期にPEARSを受講しておくと、基礎と実際の看護の結びつきがより理解でき、思考過程のみならず、実践に繋がる看護をより深めることに繋がったのではないかと感じました。

いずれにせよ、就職前にPEARSを学んだことは私にとって大きな収穫となりました。

 

本格的な病院実習の前に習得しておけば良かった、という感想でした。

BLSより難しい高度な内容、というイメージが強いかもしれませんが、PEARSは緊急事態の対応を学ぶというよりは、日々の観察の仕方を学び、そこで気づいたことをどう医療実践に活かしていくのかという、看護師としての業務を学ぶ講習と言えるかもしれません。

 

こんな学生さんの声もあり、医学科、看護学科、救急救命士学科などの医療系学生のみなさんが参加しやすいような学生限定PEARSプロバイダーコースを企画しています。

一般の医療従事者に混じって学ぶことでの学びもあると思いますが、緊張せずに等身大で学びたいという学生さんは、ぜひどうぞ。

 

【学生限定】 PEARS®プロバイダーコース
医療系学生(医学、看護、救急救命)向け特別版

2018年1月6日(土) 横浜


吸気性喘鳴→上気道閉塞が分かったらどうする?

PEARSプロバイダーコースは、生命危機に陥った原因が呼吸のトラブルか、循環の問題かを考え、それぞれ「タイプ」を判定することで、適切な安定化の介入を行い、目の前で命を落すのを防ぐ方法を学ぶプログラムです。

診断(判定)することが目的ではありません。ゴールはその先にあります。

PEARSで、生命危機の判定ができて、目の前にいる人が上気道閉塞だとわかったとしても、判定しか学んでいないと、「案の定、窒息で目の前で命を落としました」ということになってしまいます。何のために判定をするのか? 介入をするためです。

PEARSで学ぶ介入は一般論であっては、学んでいないに等しいと言っても過言ではありません。職種や、職場環境、訓練の程度によって、できることは変わってくるからです。

医師ならアドレナリンの筋注をするかもしれませんが、看護職はまずは医師に報告して指示を取り付けなければなりません。

救急救命士は救急車内にアドレナリンは積んいても、それを注射することは許されていません。また養護教諭も、本人がエピペンを持っていない限りは注射できません。

であれば、どうするか?

 

アナフィラキシーによる上気道閉塞への介入はアドレナリン筋注と知っていても、それぞれの立場に応じてどう行動するかはまったく違うということこそが重要です。

ですから、「アナフィラキシーによる上気道閉塞→アドレナリン筋注」という一般論を闇雲の教えるのではなく、ここに向けてあなたはどう行動しますか? という点を各自に考えてもらう必要があるのです。

この部分が如実に浮き彫りになるのが、シミュレーション・トレーニングの効用です。

座って他人事としてのディスカッションをするのではなく、(仮想訓練ながら)当事者として、自分の問題として考え行動することからの学び。

現場に自分を投入するからこそ気づき、学べる点が、机上の思考訓練とは違います。

それこそが重要です。

 

アナフィラキシーによる上気道閉塞という生命危機状態。そこで注射用のアドレナリンがない、もしくは使えない状況だったらどうするのか? それでも当事者となれば対応しなければならないのです。ここでなにもできないと立ち尽くすのか、少しでも効果がありそうなことをやってみる、は、大きな違いです。

 

まとめとしては、受講者の個々の実行動につながる学習でないと、それは趣味としての勉強に近いものであり、実務上の研修とはいえない、ということです。

「わかる」と「できる」は違います。この隔絶はあまりに高いハードル。

このハードルを低くするのがシミュレーションの目的です。

 

アナフィラキシーによる上気道閉塞。これままさに学校教職員向けのエピペン講習でも言えることですが、さらに1つ付け加えると、自分で助けようと思うのではなく、システムとして助ける方法という視点に立つことも重要です。学校システム、消防や病院という救急対応システムとの協働をどうするか?

自分の手で、決定打となる救命処置ができないとしても、救命の連鎖というシステム概念の中で、自分がどんな役割をはたすのかという視座に立てば、なにもできないということは絶対にありません。


1月にBLSプロバイダー【更新】コースを開催します

来年の1月からBLSプロバイダー【更新】コースを開始します。

これは、BLSインストラクターマニュアルで規定されている Challenge Option が12月から解禁されることに伴っての新企画です。

Challenge Option とは、一言で言えば、BLSの実技試験と筆記試験に合格すれば、それだけでプロバイダーカードの取得(更新)ができるという特例制度。

コースDVDを視聴したり、段階的な練習をすることなく、いきなり実技試験、そして筆記試験という展開になりますので、所要時間としては1時間程度で終わります。そして費用も廉価にできます。

日頃、BLSを実施していて技術的にしっかりとBLSプロバイダースキルを持っている人が、資格認証を更新したいという場合に使われる制度です。

日本では、資格としてBLSプロバイダー・ステイタスを維持し続ける必要がある職業はあまりありませんので、米国ほど需要はないかと思いますが、今回、試験的に2018年1月に2回、設定してみました。

強いて言うなら、ACLSプロバイダーコースやPALSプロバイダーコースを受講したいけど、そのときにはBLS資格が切れてしまう、という人には需要があるかなと思っています。(もっともAHAルールとしては、ACLS受講にBLS資格が必要とは規定されていませんので、BLS横浜でACLSを受講する際には、BLS資格は不要です)

Challenge Option の条件はかなり厳しめです。

 

1.インストラクターによる指導や練習は行わない
2.試験を受けるチャンスは1回だけ
3.再試験はない
4.実技試験か筆記試験のいずれかが不合格だった時点で終了となる

 

受講から2年近くたって、それだけのスキルと知識を保持している方は、そうそういないかもしれません。

だからこそ、その名の通り、Challenge なんでしょうね。

挑戦してみたい方は、ぜひどうぞ。

 

2018年1月9日(火) 10:00~11:30
かながわ県民センター(横浜駅徒歩5分)

2018年1月18日(木) 18:30~20:00
地球市民かながわプラザ(本郷台駅徒歩5分)

詳細はBLS横浜ホームページより → http://bls.yokohama

 

実技試験前に、自主練習できる時間を30分ほど確保しています。テキストに載っているスキルチェックリストをよく見てイメージトレーニングの上で、この練習時間を活用してもらえば、あながち無理な話でもないかもしれません。